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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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 時計を見ると、さっきの反応から約一時間が経過していた。


「電波の発信は、約一時間おき。発生時間は三十秒と思っていたら、四十五秒もあったな」

「れいちゃん。次はどっちへ逃げるの?」

「ちょっと待って」


 僕はスマホのナビアプリを操作した。


 トナラーが現在いると考えられるのは、前回発見機が反応した場所付近。

 

 その場所を目的地に設定して、コースを出す。


「なんでそんなところに行くの? それじゃあトナラーに見つかっちゃうよ」

「いや。ナビにはコースを表示させただけ。僕はこのコースを使わない」

「え? じゃあどうするの?」

「いいかい。トナラーが待機している場所は、前回GPSが電波を出した場所付近と考えられる。だとすると、奴はこのコースを逆方向からこっちへ向かってくるはず」

「あ! じゃあ、このコースから外れた方向へ行くのね」

「そういう事。ここから北へ、七キロ行ったところに大きなショッピングセンターがある。そこで次の発信を待って、GPSを見つけるんだ」


 そして僕達はコンビニを離れた。


 もう少ししたら、コンビニの駐車場にあの白いカムリは入ってくるはず。


 見つかる前に逃げないと……


「ねえ、れいちゃん。このトナラーって、女の人じゃないかな?」

「え? まあ、文面からしてそんな感じだな」

「先輩さんに、弄ばれた人じゃないかな?」

「どうだろう? あの人ならあり得るな」

「その先輩さんって、どんな人?」

「高校の部活の先輩」

「尊敬する人?」

「いいや。いろんな物を借りパクした最低の人。後輩みんなから、嫌われていた」

「なんでそんな人がいる職場に就職したの?」

「就職するまで知らなかったんだよ。佐伯先輩がいるなんて。今は部署が違うからいいけど、昼休みの度に僕にたかりに来るんだ」

「ヒドいね。なんでそんな人から車を買ったの?」

「僕が車を買おうと考えているという話を聞きつけた先輩が、強引に売り込みに来たんだよ」

「そんな話、聞かなきゃ良かったのに」

「最初は聞く気はなかったけど、あまりしつこいから試乗だけしてみたんだ。そしたら意外と乗り心地が良くてさ。提示金額も驚くほど安かったし」

「安いって事は、何か裏があるんだよ」

「僕もそう思った。だから、同僚に霊が見える人がいるので、試乗に付き合ってもらったんだ。その人が、その車に轢き殺された動物霊でも見つけてくれたら、それを理由に断るつもりだった。だけど……」

「なんにも霊はいなかったんだ」

「ああ。それで買うことになった。それでも佐伯先輩に買わされたにしては、良い買い物だと思っていたよ。トナラーが現れるまではね」


 そんな事を話しているうちに、ショッピングセンターに着いた。


「じゃあ準備を始めるよ」


 僕はさっき買ったガムテープを、十センチほどの長さに切って輪っかを作った。


 これで即席の両面テープになる。


 それを二つ作りクッキー箱の底に貼り付けた。


「なおちゃん。発見機が反応したら、すぐにこの箱に貼り付けてくれ」

「どうするの?」

「この箱は電波を遮る。それに発見機を貼ってグルグル回すのさ。すると発見機は、電波の来る方向を向いた時だけ反応するはずだ」

「それでGPSのある方向が分かるのね」

「そういう事」


 そして待つこと数十分。


 ついに発見機が反応した。


 電子音が鳴り響く発見機を箱に貼り付け回してみた。


 発見機が前を向いた時、電子音は鳴りやんだ。


 後方に向けると、電子音は鳴り出す。


「後だ! GPSはトランク内だ!」


 まだ電波が途絶えるまで二十秒。


 車を降りようとしてドアを開いた。


 しかし、すぐに閉じる。


 隣の枠に、突然一台の車が入ってきてぶつかりそうになったのだ。


 まさか!? もう奴が来たのか?

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