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なおちゃんは、この前アパートから回収したショルダーバッグの他に大きめのリュックを背負って玄関から出てきた。
僕はコペンのトランクを開き、リュックを入れる。
「荷物はこれだけでいいの?」
「これ以上は、れいちゃんの可愛い車に入らないでしょ」
「確かに」
なんでこんな夜逃げみたいな事をしているかと言うと、さっき吉部の父親が包丁を持ってなおちゃんのところへ向かったと、吉部の母親から連絡があったというのだ。
吉部の父親は、なおちゃんが息子を殺したと思い込んでいるらしく、刑事がいくら否定しても聞く耳持たなかったらしい。
このまま夫を殺人犯にするわけにいかず、夫の頭が冷めるまで逃げ回ってくれというのだ。
それなら警察に知らせるべきなのだが、夫が逮捕されるから警察には知らせてないらしいし、こっちにも警察に知らせるなと吉部の母親は懇願したという。
もちろん、なおちゃんの親としては、そんなの知ったこっちゃない。
娘の命が一番大事。速攻で警察に連絡した。
しかし、警察もあまり当てにならないので、僕の車で逃げることになったのだ。
なおちゃんを助手席に乗せた時、なおちゃんのお母さんが玄関から出てきて運転席の僕に封筒を差し出した。
「れいちゃん、急に悪いわね。これで美味しい物でも食べてきて」
「え? いや、悪いですよ」
「そう言わずに受け取って。ガソリンだって高いし、宿泊費もいるでしょ」
「そ……それでは遠慮無く」
「それと、これを車の中で食べてね」
「ありがとうございます」
おばさんが差し出したのは、クッキーの入った箱だった。
「ところで、今日はどこに泊まるの?」
「はあ。行きつけのネットカフェかスーパー銭湯にでもと」
「従姉妹と従兄弟は結婚できるのだから、ラブホでもいいのよ」
「だああ! いきなり何を……」
僕は助手席の方を振り向く。
「なおちゃん。行かないからね。安心して」
「うん。れいちゃんは、そんな事する人じゃないから」
「それじゃあ、おばさん。なおちゃんはお預かりします」
僕はコペンをスタートさせた。
「それにしても……」
しばらく、車を走らせてから、なおちゃんが口を開く。
「誰が吉部を殺したのかしら? 正直、私が疑われても不思議はないし」
まあ、僕もちょっと疑ったけど……それよりも、バタバタしていて忘れていたが……
信号待ちのタイミングで、僕はさっきワイパーに挟まっていた紙をなおちゃんに見せた。
「どういう事? また白いカムリが現れたの?」
「そうなんだ。でも、そのメッセージがそいつのだとするなら、トナラーは吉部じゃなかった事になる」
「え?」
「それどころか、吉部を殺したのはそいつかもしれない」
「でも、GPSを外したのに、なんでこの車の位置が分かったのかな?」
「なんでだろう?」
「あ! GPSと言ったら、これを返すのを忘れていたわ」
なおちゃんは、ショルダーバッグに手を突っ込んだ。
バッグから出てきたのはGPS発見機。
え?
「え?」
なおちゃんが手に持っている発見機は、何かの電波に反応していた。




