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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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 あの時、駐車場で白いカムリの傷を調べた時に話しかけてきた男。


 あいつが吉部だったのか!


 じゃあ、GPSはあの時に入れられたのか?


 確かにあの日、駐車場に入れる前に僕は給油している。


 その時に給油口の蓋を閉めた記憶がない。


 スマホの画面を凝視して考え込んでいると、いつの間にか五十嵐刑事は僕の顔を覗き込んでいた。


「高城さん。吉部の顔に、見覚えがあるのですか?」

「あります。何日か前に、駐車場で僕に声をかけてきた男です」


 僕はそのときの経緯を話した。


「吉部と会うのは、それが初めてですか?」

「初めてです」

「それ以降は?」

「会った事もありません」 

「この時点では、この男が誰なのかは分からなかったのですね?」

「ええ。駐車場会社の人間ということしか」

「確かに吉部は、駐車場会社に勤めていましたが、なぜ駐車場会社の人と分かりましたか?」


 ん? 今刑事は『勤めていましたが』と言ったが、なんで過去形なんだ?


 吉部はクビになったのか?


 まあ、あんな異常性格ならありうるが……


「なんでって、駐車場会社の制服を着ていたし、駐車マナーについて注意してきたし……」


 しかし、なんでこんな事を聞かれるのだろう? 被害届を出すのに、必要なことなのかな?


「では高城さんは、この男が吉部であることは、今初めて知ったのですね?」

「そうですけど……」


 そこで五十嵐刑事は、黙って考え込んだ。


 垣見刑事が部屋に戻ってきたのはその時……


「五十嵐刑事。裏が取れました」


 裏が取れた? なんの事だ?


「そうか。で、どうだった?」

「高城さんは間違いなく、午前八時から今までこのビルを出ていません」


 垣見刑事は、そんな事を確認しに行っていたのか? なんのために?


「そうか」


 五十嵐刑事の顔はそこで、大きく落胆したような表情を浮かべる。


 続いて僕の方を見て、にっこりと微笑んだ。


「いやあ、高城さん。大切なお時間を取らせて申し訳ありませんでした。必要な事は聞き終わりましたので、私達はこの辺で失礼させていただきます」

「え? いや、ちょっと待って下さい! 被害届は?」


 二人の刑事はお互いに見つめ合い、困ったような顔をする。


 垣見刑事が口を開いた。


「やっぱり、被害届出しますか?」

「当たり前です」


 垣見刑事は五十嵐刑事の方を見ると、五十嵐刑事は無言で頷いた。


「実はですね。もう、高城さんも従姉妹さんも、吉部から被害を受ける心配は無くなったのですよ。だから、被害届はもう出さなくてもいいかなっと思ったのですが」

「心配が無くなった? どういうことです?」

「吉部は、もう死んでいるのですよ」

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