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警察が来たのは、電話があってから一時間ほど後の事。
上司に事情を話したところ、空いている会議室を使わせてもらう事になったのだが……
「なんで、俺まで行かなきゃならないんだよ?」
佐伯先輩まで、事情聴取される事になったのだ。
「なんでも、コペンの元所有者からも、話を聞きたいとか……」
「お……俺は関係ないからな……トナラーと俺は何も関係ないぞ」
なんか、異様に動揺しているな?
「先輩。何かやましい事でも?」
「ない! やましい事なんて何もない!」
「でも浮気している事は、奥さんに隠していますよね」
「いや、浮気は警察がどうこう言う事じゃないだろう。あれだ……なんていったっけ? 民事不介入って奴だ」
そんな事をやっているうちに、僕達は会議室に入った。
中で待っていたのは二人組の刑事。
五十代ぐらいの頭頂部ハゲのおっさんと、三十代始めぐらいの女性刑事。
あまり怖いイメージはない。
高圧的な刑事が来るのかと思っていたけど……
「いやあ、お忙しいところを済みませんね。私は五十嵐と申します」
そう言ったのはおっさん刑事。
「垣見です」
女性刑事が続いて挨拶する。
「いえ……後で警察署へ行くつもりだったので、そちらから来ていただいて助かりました」
と、僕が言った直後、先輩が話し出す。
「あの、刑事さん。なぜ私まで呼ばれるのですか? 今回の件、私は関係ないと思うのですが」
「いえいえ。何でも今回、GPSを仕掛けられたお車は中古車だと聞きましたので、以前の持ち主の方からもお話を聞きたいと思いまして。本来なら、業者を通して以前の持ち主を探すところですが今回は幸いにも同じ職場にいらっしゃるという事なので」
「いったい、私に何を聞きたいのです?」
「いえね。後輩さんのコペンがトナラーにつけ回されていると聞きましたのですが。そのコペン、あなたが所有していた時にも、同様のトラブルがあったのではないかと……」
「ありません!」
先輩は間髪を容れずに否定した。
「そうでしたか。ですが、もしかすると、トラブルがあったけど忘れているだけかもしれませんので」
そう言って五十嵐刑事は名刺を差し出す。
「何かを思い出したら、こちらにお電話ください」
先輩は名刺を受け取ると部屋から出て行った。
二人の刑事は目配せすると、五十嵐刑事が僕の方に向き直り口を開く。
「さて、高城さん。従姉妹さんから聞きましたが、トナラーに悩まされていたそうですね?」
「ええ。でも、それって警察にはどうにもできないのでしょ?」
「ええ、残念ながら。しかし、GPSを仕掛けられたとなれば、話は別です。迷惑防止条例違反になりますね」
「そうですか。では吉部は逮捕されるのですか?」
「逮捕はないですね」
そう言ったのは垣見刑事。
五十嵐刑事は垣見刑事を睨みつける。
「垣見君! その事はまだ」
「あ! 済みません」
何を隠しているのだ?
「それでですね。高城さんにいくつか質問をしたいのですが」
五十嵐刑事の質問は、僕の今日一日の行動だった。
「それでは、高城さんは午前七時には新宿に来てマクドナルドで朝食を摂り、午前八時に職場に着いた。その時間から、このビルを出ていない事に間違いないですね?」
「間違いありませんが……」
「垣見君。ちょっと確認をして来てくれ」
「はい」
垣見刑事が部屋から出て行く。
「あの刑事さん。僕はアリバイを確認されているのですか?」
「まあ、そうなりますね」
「なぜ僕が? 僕は被害者ですよ」
「まあまあ。ところで、あなたは吉部と会った事ありますか?」
「え?」
「ようく思い出してください」
「会った覚えはないのですが……なんか昨日電話があった時、聞き覚えのある声だなと……」
「聞き覚えはある? でも、どこで聞いたかが思い出せないのですね?」
「ええ。なおちゃんの結婚式には行かなかったけど、母の葬式になおちゃんが来てくれたから、その時に一緒に来たのかもしれませんが……」
「いえ。葬式会場には来ていません」
「え?」
「吉部は奥さんを……つまり従姉妹さんを葬式会場前で降ろした後は、帰ったそうです」
「じゃあ帰りは?」
「従姉妹さんは、タクシーで帰りました。だから、あなたは葬式で吉部と会っていないのです」
「それは……なおちゃんに聞いたのですか?」
「ええ。先に従姉妹さんから事情を聞いていますので……」
「じゃあ聞き覚えがあるのは、僕の記憶違いかな?」
五十嵐刑事は、すっと自分のスマホを差し出した。
「これが吉部です」
スマホに表示されているのは若い男の写真。
この顔、最近どこかで……!
こいつ! 駐車場会社の男!




