15
「なんだって? GPSが、仕掛けられていたのか?」
例によって、カフェで僕の皿から強奪したサンドイッチを頬張りながら佐伯先輩がそう言ったのは、月曜日の昼。
結局日曜日は家から一歩も出ることもなかったので、トナラーに悩まされる事は無かった。
まあ、トナラーの正体はなおちゃんの元旦那と分かった事だし、奴もあれから電話はかけてこなかったし一安心かな。
「しっかしなあ、トナラーの正体が従姉妹の元旦那だったとは。俺はてっきり……」
ん?
「先輩。『てっきり』なんだと思ったのですか?」
「いやいや……」
先輩は周囲を見回してから続ける。
「てっきり、令斗をストーカーしている女かと思ってな」
「はあ? 僕なんかをストーカーしてどうすんですか? 馬鹿馬鹿しい」
「しかしなあ、俺にはまったく理解できないんだよ。ストーカーって奴の考える事が」
「そりゃあ、異常者の考えなんて分からないでしょ」
「いやいや、そうじゃなくて……なんで一人の女に執着するのかって事。女なんていくらでもいるじゃないか」
「何人もの女に手を出している先輩は、少しはストーカーを見習ってください」
「ははは。いや、無理無理。俺は一人の女では満足できない」
今のを録音して奥さんに聞かせてやりたい。
「ところで今日は車どこに停めた? GPSを外しても、前に停めていた駐車場じゃ見つかってしまうぞ」
「大丈夫ですよ。そのくらいは予想しています。一つ手前の駅の駐車場に停めてきました」
「それならいいか」
「良くないですよ。定期券の範囲外だから、電車賃が一駅分余計にかかるし」
「まあ、いいじゃないか。異常者を避けられるなら……ん? おい。何か着信入っているぞ」
え?
スマホを見ると、なおちゃんからのメールが届いていた。
二時間前に。
いけね。マナーモードにしたままだった。
「従姉妹からでした。警察にGPSと昨日僕が送った録音データを持って行ったという報告です」
「そうか。じゃあ、元旦那は逮捕だな」
「いや、それはまだ分かりませんが、ただ面倒な事が……」
「なんだ?」
「GPSが仕掛けられたのは僕の車なので、僕が警察署に行って被害届を出さなきゃならないそうです」
はあ、面倒だな……
スマホの着信音が鳴ったのはその時。
知らない番号!
まさか、元旦那?
と、思ったら警察だった。
「警察だって? どうしたんだ?」
「それが、今からこっちへ来ると」
「え? おまえ逮捕されるの? 何をやらかしたんだ?」
「事情を聞かれるだけですよ。だいたい逮捕をするなら、電話なんかしないでいきなり来るものでしょ」
しかし、仕事が終わったら被害届を出しに行くつもりだったのに、なんで警察の方からわざわざ職場まで来るのだろう?




