表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
櫻坂学園物語  作者: ヒトミ
第一章[琉生×和人]

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/20

思い出

沢山の大人に囲まれカメラを向けられる。


近くには滑り台やブランコ、ジャングルジム。


他にも多くの遊具があるのに、この格好だと遊べない。


和人は自分の服装を見下ろしてため息をついた。


しばらくすると休憩時間になって、大人たちが和人の傍から離れた。


それでも和人は、ジャングルジムに向かって走り出しはしない。


つば広の帽子が飛んで行ってしまうかもしれないし、ヒラヒラした服が破れてしまうかもしれないから。


近くのベンチに座って、地面につかない足を揺らす。


その時、強めの風が吹いた。


咄嗟に頭を押さえたのに、帽子は和人の手をすり抜け空に舞い上がってしまう。


慌ててベンチから飛び降りて、帽子の行方(ゆくえ)を追うと、和人の身長程の塀の上から飛び出している枝に引っかかった。


手を伸ばしても届かない。


ちょっと飛び跳ねても駄目だった。


飛び跳ねる時にワンピースの裾が広がって、やっぱり動きにくいと口を尖らせた。


それでも帽子を放っておく考えは浮かばない。


目の前の塀を見つめる。


よじ登れば取れるかも。


だけど、そんなことをしたら服が汚れてしまう。


何とか塀を登れないかと周囲を見回した。


塀の近くに運動場を囲うフェンスがあるのを見つけて、和人はそこまで移動してフェンスから塀の上に移動した。


塀の上は結構広かった。


和人は危なげなく移動して木の枝まで辿り着く。


そして、帽子を手に取った途端。


「女の子が塀の上に!」

「危ないっ」


悲鳴のような騒めきが周りから聞こえ、いつの間にか遠巻きに見られていたことに気づいた。


その騒ぎを聞きつけたのか、両親を含めた大人たちが慌てた様子で走ってくるのが見えた。


帽子を被り直して、塀の上に座る。


塀に両手を突いて、勢い良く飛び降りた瞬間。


視界の端に、目を丸くして和人を見上げている男の子の姿が見えた。


地面に着地し、ふわりと浮き上がった服の裾を丁寧に払う。


顔を上げると、茶色い目を輝かせてこちらを見ている男の子がいた。


茶色い髪と茶色い目の男の子。


その子の口が動いて「……かっこいい」そう言われた。


和人は何だか気分が高揚して、褒めてくれたその子と仲良くなりたい衝動が湧き上がった。


幼稚園で見覚えがある子で、その子の名前が海縁(かいえん)琉生(るい)だと言うことも、知っていた。


両親や大人たちに叱られながら、和人は幼稚園で琉生に話しかけようと心に決めた。


◆◆◆


──夢か。


ぼんやりと意識が浮上し、和人は目覚めた。


あれは琉生は知らないだろう、出会いの記憶だ。


和人だけが大切に覚えている最初の思い出。


──琉生のピアノを世間に広めたいのは、俺の欲。だけど、本当に、究極、琉生が嫌なら、諦めてもいい。諦めたくはないけど。


琉生は、和人が彼を見ていないと泣いた。


──こんなに俺はお前を見ているのに。なんでだろうな。


無意識に自身の唇をなぞる。


親友はこんなことしない。だったら、琉生が和人に向けてきている感情は……?


一瞬、脳裏を過ぎりかけた単語に赤面する。


──いや、まだ直接聞いた訳じゃない。それに、本当にそんな感情を向けられていたら、俺はどうしたらいいんだ……。


和人は片手で顔を覆い沈黙した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ