表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日もパンケーキでよろしく  作者: 夏山 白
2/3

棚の中のガラクタ

 私は”ガラクタ”を、店の棚に飾ることにした。日中は、店長から店を任せられているので、こんな権限も持っているのだ。エッヘン!!話は変わって、なぜ飾ろうと思ったかと言えばこんな出来事があったからだ。

 カランッ

 『いらっしゃいませ。』

 『こんにちは、ホットコーヒー1つお願いできますか?』

 『はい!かしこまりました。』

 そのお客は、モノクルをつけていて、仕立ての良さそうなスーツを着た中世の貴族を思わせる男だった。 なぜだろうか、その客はやけに積極的に話しかけてきていた。そして、妙に話しやすく、天気や、店の向かいにあるお洒落な花屋などの話をしてるうちに、店の話題になった。

 それから、この店の歴史とか、わたしが店を任されていること、話ははずみ、あの老紳士の話にもなった。

 『へぇ、その御老人は君に様々なものをくれんだね。どんなものをくれるんだい。』

 『それがぁ、ん〜、こんなこと言うのは良くないんでしょうけど、あまり良さげなものでもないですよ、へへへ』

 と、そっと言い苦笑いする私をよそに、その男はこう切り出した。

 『へぇ、見てみたいなぁ。』

 『あ、そうですか?じゃあ持ってきますね。』

 私が、“ゴミ”の入った箱を持っていくと、その男の眼差しは途端に鋭くなったように思えた。彼にはどんななものに見えたのだろうか。

 『ほぉ、これはすごいなぁ。あぁ、こんなモノもいただいたのかい。』

 『どうです?なにか、貴重なものがあったりしますか?』

 『いや、それはないんだが。ただ.....一ついただいても構わないかな?』

 『え、欲しいんですか?コレ?』

 『私は、なぜだかコレに惹かれるんだ。そう、ただ.....それだけだから、君が御老人の好意を無碍(むげ)にしたくないというなら、もちろん無理にとは言わないが。』

 『いえいえ、私はこんなものたくさん持ってても(らち)があかないので、ぜひ持っていってください。』

 『ありがとう。では、一ついただいて行くことにするよ。』

 『はい。』

 外は雨が降っていた。夕立だろう。外も薄暗くなり、商店街の街灯にも明かりが灯り始めた。あの会話以降、特に話すこともなくなり、私が食器などの手入れをする音と、店でかけているラジオだけが、静かに流れていた。

 薄暗くなってきた店にもパチっと灯りをつける。その時、その男の顔に涙が流れているようにに見えた。やさしいオレンジ色の明かりが、店を包み込む。そして、皮張りの赤茶色のソファ席が艶やかに光っている。くすみブルーの壁とのコントラストも実に素敵に見えた。

 『お会計はこれで』

 男は、机にお金を置いてすっと立ち上がった。見るからに、代金より多い金額だ。

 『お釣りは、いいんですか?』

 『あぁ、今日はおしゃべりも楽しかったしね、それは君へのお礼でもある。いい店だ。また来るよ。』

 『はい!ありがとうございます。』

 その男は軽く会釈をして、鞄から黒いコートを出し全身を包むと、バサッと黒く大きな傘を開いて店を出ていった。

 『なんだか、不思議な雰囲気を感じる人だったな』

 私は、お客のいなくなった喫茶店のカウンターで、抹茶ラテを飲みながらポツリと呟いた。

 その1週間後、あるニュースが新聞紙面の一面を飾っていた。

 『テレビ出演もある骨董商、詐欺の疑いで逮捕』

顔写真も載っている。それはちょうど1週間前に見た男の顔写真であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ