個人情報流出中
次の日。
「いや、有間じゃないんだし…。」
教室の中にいた石橋は、自分の机に着くなり机に突っ伏して寝始めた誠介を眺めていた。
「俺がどうしたんや?」
タイミングよく教室に入ってきた邦海が尋ねた。
「いや、一条が来るなり寝たからさ。」
「なるほどな。」
邦海は笑いながら自分の席に荷物を置いた。
「…なんかお前部活を抜け出した人みたいだな。」
今、邦海は剣道着を着ている。
「いや、その通りというか。海月と清水探しに来たんだよ。」
どうやら朝練をしようと思ったのだが、一年しかいなかったそうだ。なので、誘いに来た、ということらしい。
「あいつら3組だろ。冬山は知らねーけど、清水なら実験、実験って歌いながら理科準備室に走って行ってたぞ。」
剣道部兼研究部である清水はたまに理科室に入り浸っている。
邦海は苦笑いしつつ、「ありがとな!」と言って外に出ていった。
「いっちゃった、話し相手いなくなったな…。」
石橋は大げさに肩をすくめた。そして、誠介をいじり始めた。
暫くいじっていると、誠介が軽く唸りながら起きた。
「森…?俺寝てんだからやめろって…。」
しかし寝ぼけているようで石橋のことを俊太だと思っている。
「いやちげー…まあいいや。」
いじるのに飽きたのか、石橋はカバンの中に入っていた本を読み始めた。
結局誠介が起きたのは、授業開始1分前だった。
○
3時間目。
ぼんやりと外を見ていた邦海は、何かを考え込んでいた。
それは、先生の声も聞こえないくらいに…。
「…。…君。有間邦海君!」
「にゃい!?」
驚いて奇声が出た邦海は慌てて黒板のほうを見た。
「ここの数式を展開して。」
数学の担当をしている二ノ宮は半ば呆れながら言った。
「あ、はい!」
邦海はノートに解き始めた。それを見た二ノ宮はため息をつきながら「珍しく起きてると思ったら…。」と呟いた。
「えっと、3√10です。」
「正解。」
授業を聞いていないにかかわらず正答率は高い邦海を一目見て、そのまま二ノ宮は授業を再開した。
「流石有間君だよね。」
「本当。きっと授業も聞いてないふりして聞いているんだよ。」
「…え?」
女子たちのこそこそ話に敏感に反応した邦海だった。
○
昼休み。
誠介の机に集まった邦海、俊太は休みの日に起きたことを話していた。
「でさ、相馬さんが真紀さんのスマホにめっちゃ画像送ってきててさ。それ見せてもらったんだけど何か趣味がバレバレな画像ばっかりだったわ。」
「何だそりゃ。」
無言でストローを伸ばしていた邦海は、ふと思いだしたように誠介に聞いた。
「そういやあの脅迫状っていつ渡せばいいん?」
「家突き止めたから今日取りに行くって言ってたぞ。」
「怖っ。」
俊太がわざとらしく肩を震わせると、邦海は半ば呆れながら呟いた。
「まあ、俺の父さん警視庁の警視総監やからな。警察関係の人やったらすぐわかると思うで。」
「「個人情報どうした…。」」
「もう慣れた。」
「「なれる事じゃねーだろ…。」」
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