『可愛い』の耐性
その頃
「あーもう!このステージどうやりゃいいんだよ…。」
俊太は、周りが騒然としている中、スマホゲームをしていた。
「てか、佐久間まだ見つかんねぇのか?マネージャー。」
マネージャーと呼ばれた男は、不安そうに目をきょろきょろさせていた。
「はい…。今日の演奏は中止にするしかありませんね。」
そういうと、誰かに電話で指示をしていた。そして、「ご迷惑をおかけいたしましてすみませんでした。」というと、どこかに去っていった。
「…中止か。まあ、もうあと15分しかないもんな。」
時計は、2時45分を指していた。
(俺ももうやること無いし、集合場所に行くとするか。)
俊太は、第一ホールから去っていった。
☆★
「…もう大丈夫か?邦海。」
誠介は、邦海に自分のハンカチを渡した。
「大丈夫…ありがとう。」
そういうと、ハンカチを受け取り、涙をぬぐった。誠介はおもむろに手を伸ばし、邦海のミドルチョーカーのスイッチを切った。
「?」
「いや、相馬さんが『ミドルチョーカーって使い続けると疲れるんだよねー』て言ってたのを思い出してさ。」
「そーなん。別に疲れては無かったけど。」
「あ、マジか。まあいいや。」
そういうと、誠介は邦海の顔をまじまじと見た。
「な、何や?照れるんやけど…。」
「いや…。」
軽く笑うと急に真顔になり、誠介は言い放った。
「やっぱメイク落ちても邦海は可愛いな。」
その言葉に顔を赤らめた邦海は、誠介にビンタをかました。
「うるさいな!やめろって!」
「…可愛いに耐性が無いのか。俊太にばれると終わるな、お前。」
その言葉にはっとなった邦海は、慌てて言った。
「ぜ、絶対に言わんといてや!?」
その必死さに、誠介は腹を抱えて笑った。
「言わねーよ。ま、あいつの事だし、すぐに気づきそうだけどな。」
「へっくしょん!!」
「どうした森。風邪か?」
西板が心配そうに言った。
「いや…一条辺りが噂でもしてるのかね。」
「あいつら、本当にどこに行ったんだ…。」
「知らないっす。楽器室とかかな…。」
西板はため息をつくと、「なんであっちに行っちゃったかな~。」と呟いた。
「へ?」
「いや、独り言。今楽器室使用禁止になったって連絡が入ったから。」
時刻は3時をちょうど超えたところだった。




