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悪役令嬢は、おそうじが得意。 〜婚約破棄されましたが、塵一つ残さず 『焼却処分』いたしますわ〜  作者: くまたろう


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第27話 地下室への道

翌朝、シリルが新しい情報を持ってきた。


「大聖堂の地下室ですが、月に一度の外部との会合の次回日程が、明後日です」


「早いですわね。どこから?」


「聖務局の方で、昨夜もお酒に付き合いましたので」


「あなた、この国に友人を作るのが早すぎますわ」


「仕事ですから」


シリルが笑顔のまま続けた。


「会合には、外部から三名が参加します。聖務局の案内で地下室に入り、二時間ほどで出てくる。その後、別の場所で食事をしてから帰るという流れのようです」


「外部の三名が誰かは?」


「そこまでは把握できていません。ただ、毎回同じ顔だという話です」


「明後日の夜、地下室に入れれば証拠が取れますわね」


「ただ、警備が厳しい。正面からは無理です」


「正面から入るつもりはありませんわ」


-----


その日の午後、私は再びマルセル神父を訪ねた。


神父は今日も部屋にいた。体の具合は相変わらずよくないようだが、私の顔を見ると少し表情が和らいだ。


「また来てくれましたか」


「少し、お聞きしたいことがありまして」


「なんでしょう」


「大聖堂の地下室について、ご存知ですか」


神父が窓の外を見た。しばらく黙ってから、口を開いた。


「三十年前、私はまだ若い聖職者でした。大聖堂で修行をしていた頃、地下室の掃除を担当したことがあります」


「中に入ったことが?」


「当時は誰でも入れました。地下には古い記録庫があって、過去の聖典や文書が保管されていた。ただ、二十年ほど前から、段々と立ち入りが制限されるようになって」


「ヴァルタス猊下が就任してから、ですか」


神父が小さく頷いた。


「地下に入るための別の経路があります。記録庫として使われていた頃、物資の搬入用に作られた通路が、施設の地下と繋がっていました。今は使われていないと思いますが、塞いだという話は聞いたことがない」


「施設の地下と、大聖堂の地下が繋がっている?」


「三十年前はそうでした。今もそうかどうかは、わかりません」


私はしばらく考えてから、聞いた。


「その入口はどこですか」


神父が立ち上がった。体が不自由そうなのに、しっかりした足取りで部屋の隅に向かった。古い絨毯を横にずらすと、木の床に扉があった。


「ここからです」


-----


その夜、私とリタで地下通路を確認した。


シリルは外で待機している。万が一の時に対応できるよう、二手に分かれた。


神父が言っていた扉から入ると、狭い石段が続いていた。ランタンを持って降りると、天井が低い石造りの通路に出た。埃と湿気で、空気が重い。まさに、換気されていない場所の匂いだ。


通路を進むと、途中で二手に分かれていた。一方は行き止まり。もう一方は、少し傾斜がついていて奥に続いている。


リタが先を確認した。五分ほどで戻ってきて、小さく頷いた。


繋がっている。


さらに進むと、厚い木の扉があった。鍵がかかっているが、リタが鋼糸を使って静かに開けた。


中は、広い石造りの部屋だった。


棚に書類が並んでいる。中央に大きなテーブルと椅子。テーブルの上には、最近使われた形跡がある。ランタンの煤が残っている。


「ここで会合が行われているのですわね」


リタが棚の書類を一冊抜き取り、私に渡した。表紙を見ると、この国の言語と、フォル・ネビュラの書類と同じ暗号記号が混在している。


持ち出せる量には限りがある。私はシリルが言っていた「直近の会合の記録」を探した。日付を確認しながら棚を見ていくと、ひと月前の日付のファイルを見つけた。


「これだけ持っていきましょう」


リタが頷き、ファイルを布に包んだ。


来た道を戻り、施設の地下から外に出た。夜の空気が冷たくて、地下の湿気を押し流してくれた。


マルセル神父が部屋で待っていた。


「入れましたか」


「ええ。ありがとうございました」


「それだけで十分です。あとは、あなたたちに任せます」


宿に戻ると、シリルが暖かい茶を準備して待っていた。


「成果はありましたか」


「十分ですわ」


ファイルをテーブルに置いた。シリルが表紙を見て、目を細めた。


「これで、ヴァルタス猊下と外部組織の繋がりが証明できます」


「あとは、誰にこれを渡すかですわ」


暖かい茶を一口飲んだ。今夜は生姜が入っていて、体の奥から温まる感じがした。


地下室の湿気がようやく、体から抜けていく気がした。

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