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74:戦いの結末は

「女だからって、なめんじゃないよっ!」


 次々と腐れ野菜を投げながら、おばさんが叫ぶ。


「そうだそうだ、男と来たら昼間っから、飲んでるかケンカするか!」


 また馬糞が飛んだ。


「あたしの方が腕いいのに、威張りやがって!」


 弓が放たれて、これは見事に命中する。


「おまえらも胡桃くらいむきやがれっ!」


 なんと言うか、もう村を守るとか通り越して、日ごろの怨みを叩きつけてないだろか?


「クサいってんなら、これだろ!」


 誰かが両手にひとつづつ、ケージを持って走ってきた。

 中にはなんだか、黒っぽくて細長い四足の動物が入ってる。


「いっけぇ!」


 ケージが宙を飛ぶ。


「もったいない、何てことするんだ」

「大丈夫、いちばん年とってるヤツだから!」


 バケツと同じように、放物線を描いたケージが2つ落ちて行って――。

 ガンっ!という音と、ばふばふっという何かが炸裂する音。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

「目が、目がぁっ!」


 文字どおり兵士たちがのたうちまわって、戦いは終わった。


「なに投げたの?」

「イタチだよ。毛皮がきれいな種類で、売るのさ。貴族様の襟巻きの元だよ」

「あー、イタチの最後っ屁……」


 それはクサい。

 クサいなんてもんじゃない。


 あんまりにもクサすぎて、もし至近距離で喰らったら鼻だけじゃなく、しばらく涙で見えなくなる。

 でもこの綺麗な毛皮のヌシが、あのクサイ生き物と同種だったなんて。


「あれ? ラウロ、だいじょぶー?」

「は、鼻が……」


 よく見たら生贄騎士、端っことはいえガス攻撃の範囲に、入ってたらしい。

 鼻を押さえながら咳き込んでる。


「いやぁ、相変わらずクサいねぇ」

「あたしらみたいに世話で慣れてなきゃ、たまったもんじゃないだろうね」

「しかも直撃2発だしねぇ」


 おばさんたちがからからと笑う。


 このとき僕は悟った。

 おばさんたちには、どんなガス攻撃も効かないのだと。

 この人たちに逆らうのは、死を意味するのだと。


 すみませんごめんなさい、これからは神様の前に、おばさん族にお祈りを捧げます。


「大丈夫かーっ!」


 遠くから声が聞こえた。


「無事かーっ!」

「き、きしだ……げほっ、だんちょ……げほっ」


 咳き込みながら、生贄騎士が言う。


「騎士団長? あ、ホントだ。てかお城からもう来たの?! 早いわねー」


 見れば向こうの方から、お城で会った渋騎士が、馬に乗って来るところだった。

 その一行が、村の門の手前で馬を止める。


「これは、どういうことだ? この臭いはなんだ?!」


 それ以上近づかずに、大音声で話しかけてくる。


「あー騎士団長、それ以上来るとクサいですよー、イタチですからー!」

「なんと!」


 イサさんの言葉に、団長以下騎士団一行は離れたままスカーフで鼻と口元を覆って、気の毒そうに倒れてる敵を見やった。

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