表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/70

69:そして始まる、戦い

 そこは、戦場だった。


「アナ、その鍋かき回しとくれ!」

「塩どこだい、こっちの壷はもうないよ!」

「どいてどいて、粉こねないと間に合わない!」


 すごい勢いで、厨房の中を人が動いてる。


「うわぁ、あたしの出る幕あるかなぁ?」


 にこにこしながらイサさんが言った。


「なーに言ってんだいイサ、ほら、これでそこの肉、叩いとくれ」

「えー、それならラウロの方が力あるから」


 はい、と言いながらイサさんが肉叩きを、生贄騎士に渡した。


「こ、これをどうすれば……」

「テキトーに万遍なく叩いといて」


 よくわからない、そんな顔で生贄騎士が、肉を叩きはじめた。


「あ、彼は肉が叩けたのかい。じゃぁイサ、あっちの鍋かき回すの頼むよ」

「スタニフ、行ってらっしゃい」


 なぜか僕が言いつかる。


「イサさん行かないんですか?」

「あたし、こっちやる」


 見るといつの間にかイサさん、ナイフを手に持って、山菜の皮を剥いてた。


「これ、よくやるのよねー。大好き」

「あれ、上手いじゃないかい」


 どうやらイサさん、自分にとって楽な仕事を取ったらしい。

 こういうずる賢さは、やっぱりおばさんが群を抜いてる。

 そうやってバタバタ走りまわるうち、料理が出来始めた。


「はい、パイの第一弾焼けたよ!」

「塩漬け肉の煮込み、出来たから!」


 おいしそうだ。おいしそう過ぎる。


「ほらスタニフ、なにやってんの。鍋!」

「あ、はい!」


 すごくすごくつまみ食いしたい。

 でも、これだけは出来ない。


 っていうのもこの料理、どれも例の薬草が入れられてる。

 煮込んだり和えたり添えたりいろいろだけど、使ってないものはない。

 だからこんなの食べたら、明日までは天国行きだ。


「ヨルダ、あいつらがもっと出せって騒いでる!」

「よし、次の料理出しとくれ!」


 宴会場に、料理の大皿が運ばれてく。


「そうしたら、私そろそろいいでしょうか……」


 ものすごく自信なさげに、生贄騎士がイサさんに訊いた。


「どしたの? トイレ?」

「違います! 万一に備えて手を空けて、剣が使えるようにしておきたいんです」


 騎士の言葉に、イサさんがなるほどと頷いた。


「今ここで剣使えるの、そういえば貴方だけだもんねぇ」


 イサさん、そんな大事なこと忘れないでください。

 あと僕が魔導師なのも忘れないでください。


 と、厨房にまたひとり、おばさんが入ってきた。

 おかみさんが声をかける。


「ヤーラ、ご一行様はどんな様子だったんだい?」


 ヤーラと呼ばれたこの人は、ここのおばさんの中じゃいちばん色っぽい。

 なんでも昔は、大きい街の酒場で働いてたんだとか。

 だから今回の話を聞いて、案内に名乗りを上げた。


『昔取った杵柄だ、そいつらまとめて、かっちり案内しようじゃぁないか』


 そう言ってふふんと笑ったあの時の酒場おばさんは、イサさんやおかみさんに負けず劣らず怖かった。


『ヤーラなら安心だ、あんた村中の男を手玉に取ったしね』

『昔の話さ』


 そんなこんなで案内に出たこの人、見事に仕事をやり終えたらしい。


「あいつらと来たら、へろっへろだよ。最初はともかく、祠の辺り通ったらヘロヘロになっちまって。腰ぬけたヤツまで出る始末さ」

「なんだいそりゃ、兵士のクセになっさけないねぇ」


 いやそれは違います。

 魔法のせいだから、兵士とかは関係ないです。


 でも僕が小さい声で言ったそれは、誰も聞いてくれなかった。


「まぁそんなだからさ、なんかわからないけど、男衆に言われて村の集会所に酒の席設けてあるから、お休みくださいなってね。あとはもう、一も二もなかったよ」


 そんなに簡単に引っ掛かって、どうするんだ兵士たち。

 でもとりあえず、全員宴会場に転がり込んだらしい。いい具合だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ