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70/71

70:武器はフライパン?

「料理、出る?!」

「はいよ、じゃぁこの肉も持ってっとくれ!」


 宴会場へ、追加の料理が運ばれていく。

 山のように作ったのに、間に合わないかもしれない。なんて食べるんだ。


「ヨルダ、こんどは何作るんだい?」

「そっちの煮物がもう出来るんだ、盛っとくれ」

「はいよ!」


 次々料理が盛られ、空いたかまどで次が作られてく。


「いつ終わるんでしょうね?」

「知らない!」


 イサさんに訊いてみたけど、つっけんどんに返されただけだった。

 で、その手は何かをかき回してる。


「なんですか、それ」

「例の草入れた卵。早いしおいしいし、間もたせにはなるから」

「だからって、何個割ってるんですか……」


 卵の殻が、傍には山積みだ。


「ヨルダ、フライパン空いてる?」

「大丈夫、空いてるよ!」


 あつあつのフライパンに油がひかれて、卵が一気に流し込まれた。

 それをあっという間に寄せて、弾みをつけて一気にひっくり返す。


「スタニフ、お皿! 平たいの!」

「は、はい!」


 慌てて大きめの平たいお皿を差し出すと、そこへイサさんがフライパンをひっくり返して、火の通った卵を置く。


「ふるふるしてますね」

「おいしいわよー」


 イサさんひどい。

 なんで食べられないものを目の前にしてるのに、おいしさを強調するんですか。

 僕がお腹空いてるの、わかってないんだろうか?


「はーい、これも持ってっていいわよー」

「あいよー」


 威勢のいい声と共に、おいしそうな卵は攫われていった。


「さてっと、次はこれ切ろうかな」


 そう言うと根菜を出して、皮をむいて細切りを始める。


「何作るんだい?」

「これとね、こないだ見せてくれた卵で作ったソースとね、辛い葉っぱ混ぜるとおいしいかなって」

「へーえ、じゃぁ手伝おうかね」


 おばさんにおばさんが加わって、刻むスピードが倍加した。


「イサ、このソースかい?」

「そそ。あと辛い葉っぱと塩」

「ほいよ、これだね」


 出された葉っぱが、あっという間にほぼ同じ長さに切り揃えられて、ソースと一緒に根菜に混ぜられた。


「ん、思った通りー」

「どれどれ? お、こりゃぁ美味しいね」

「故郷にいたころは、よく作ってたのよー。さて、じゃぁこれに例の葉っぱを混ぜてっと」


 イサさん嘘つかないでください。

 こんな野菜故郷じゃなかったって、言ってたくせに。


 でも今は言わない。

 今いちばん大事なのは作戦を成功させることで、おばさんの秘密を暴くことじゃない。

 僕は賢いから、そのくらいの判断はちゃんとつく。


「よし、っと。じゃぁこれもお願い」

「はいよ!」


 またおいしそうな料理が、攫われていった。

 僕の口には、いつになったら来るんだろう?


「ヨルダさーん、お酒追加追加」


 おばさんの中じゃ割と若い人が、走りこんできた。


「もーあいつら、飲むったら。うちの男どもも飲むけど、負けちゃいないんだよ。まぁもう、だいぶ出来上がってるし、寝てるヤツも多いけどね」

「そりゃいいや。酒はそっちの蔵から持ってっとくれ」

「はーい」


 そう言って駆け出す若おばさんに、生贄騎士が声をかけた。


「一緒に持っていきます。重いですし、何より頃合いでしょうし」


 にやりと彼が笑う。

 その笑みがずる賢そうなのに、端正な顔のせいでそれこそ画家が絵に描いたようで、何とも悔しい。

 神様はもっと公平であるべきだ。


「なんかよくわかんないけど、手伝ってくれるんなら助かるよ」


 お酒を取りにきた若おばさんが、生贄騎士と一緒に蔵へ向かう。

 それを見送る僕に、声が降って来た。

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