66:忠誠心の向かう先
「た、助かるのかい?」
「ええ」
ハッタリかと思ったけど、そうじゃないらしい。
生贄騎士、自信ありげだ。
彼が立ち上がって――ホントにこういうとこサマになって悔しい――話し始めた。
「明日、何かあるのは確実です。いえ、もしかしたら何もないかも知れませんが、それならそれで良いことです。だから、何か起こる前提で話を進めましょう」
おばさんたちが頷いた。
彼が続ける。
「この1回を凌げれば、麓から援軍が来ます。ですから、今回だけ踏ん張れればなんとかなります。そして幸い、ここにいるスタニフ殿のおかげで、来る敵は弱っているはずです」
そこの容姿端麗、よく言った。
僕の偉大さに言及するなんて、なかなかわかってる。
そう、敵が来たとしても、まともに戦える状態じゃない。
陣を敷くために来るはずの先遣隊は、あの祠が作る結界を超えてくる。
ただそのまま超えたら絶対にバレるから、まずこの国の中から魔導士が祠へ行って、陣を書き換えたんだろう。
でも僕はそこに、罠を仕掛けた。
だから入ってくる先遣隊は僕の罠に引っかかって、かなりふらふらで来るはずだ。
これで、やっと僕の偉大さが……。
「なるほど、そいつらが弱ってんなら、何とかなりそうじゃないか」
村のヌシのおかみさんが、ふんふんと頷いた。
「ってことなら、すぐに村が焼かれるってこともなさそうだね」
他のおばさんたちも同意する。
――あの、僕の功績は。
そう言おうと思ったけど、おばさんたちはもう、聞いてくれそうになかった。
容姿端麗が、また口を開く。
「そういうことですから、この1回をまず防ぎましょう」
「よし、そういうことならやってやろうじゃないか」
やっぱり容姿端麗抹殺すべし。
どうしてこいつだと、みんな話を聞くんだ。
そりゃ、確かに村を守る案を今提案してるのは、彼ではあるけど……でもそれが出来るのも、僕が毎日山を歩いて、祠の陣を書き換えたからで……。
僕の想いに関係なく、話は続いてた。
「まず、子供たちですが……」
彼が言うのはこうだ。
まず念のために、子供たちと若い女性をどこかへまとめて逃がす。
それと同時に、自分たち旅の魔導師一行もいったん村を出る。
じゃないと疑われて、男たちから敵へ話が行って、村へ入ってこないかもしれない。
ただ僕たちは頃合いを見て、すぐにこっそり村に戻る。
一方で男たちは動かないだろうし、言ってもこの状況だと信じないだろうから、そのまま寄り合いをさせる。
敵の先遣隊は来るだろうけど、幸いいろんな細工がしてあるから、かなり弱った状態でしか来ない。
運が良ければ村まで来られないかもしれない。
そして逞しき女性陣が取れる方法は、ふたつ。
ひとつはある程度のところで、子供たちのところへと逃げる。もうひとつは――。
「村の男たちに聞いたと言って敵を村まで誘導して、食料と強い酒を出すんです。ただこれは危険なので、効果はありますがお勧めできません」
「ちょっと待っとくれよ」
割って入ったのはおかみさんだった。
「お勧めできないって、ずいぶんじゃないか。この村のことだよ、あたしらがやらなきゃ、子供らの帰る家がなくなっちまう」
「ヨルダの言う通りだよ! 家がなくなるなんざゴメンだ」
「若い娘をオオカミの前にやれないのは道理だけど、あたしらそんなモン恐くないしね」
「その程度が恐かったら、亭主相手にのし棒で戦えるもんか」
えぇと……すみませんごめんなさい、僕二度と女の人に逆らいません。
特におばさんには、忠誠を誓うことにします。
おかみさんが騎士に向きなおった。
「というわけだ。あたしらやるよ」
「わかりました。そうしたらまず、寄り合いの準備にかかってください」
「あ、待って待って」
イサさんがいきなり割り込む。




