58:見破られた秘密
昨日に引き続き、今日も僕らは山を歩いてた。
ただメンバーが一人減って、僕、騎士、お嬢さんの三人だ。
イサさんはお留守番。
っていうのもイサさん、案の定山歩きでバテた。
だから村に残って、情報収集してもらうことになってる。
――集まるんだろうか?
僕らが欲しい情報より、お菓子や料理の作り方が集まりそうな気がするんだけど……。
ただイサさんを今日歩かせるのは無理だし、ひょんなことから何かわかるかもしれないから、村で好きにしてもらうことにした。
ひんやりした山道を、お嬢さんを先頭に歩く。
そのうち、木々の間にまた、石造りの小さな建物が見えてきた。
「昨日の三つ以外だと、ここが一番近いです。開けますね」
そう言いながら閂に手をかけたお嬢さんを、生贄騎士が止めた。
「私がやりましょう」
「え? あ、すみません……」
お嬢さんが手を引っ込める。
まぁ当然だ。
荒事専門で来てもらってるのに、一緒に歩くだけじゃ意味がない。
このくらいはやってもらわないと、帰るまで彼だけ仕事ゼロだ。
――その意味じゃ、イサさんもだけど。
けどおばさんというものに、正当性を言うだけ無駄だ。
あの人たち、絶対に行き当たりばったりで生きてる……と思う。
なのにどうしていろいろ片付いて行くのかは、すごく謎だけど。
そんなこと考えてる間に、扉が開けられた。
中から流れてくる、ひんやりとした空気。
「あれ、ここ、誰も入ってないかな?」
言いながら僕は、奥へと足を進めた。残りの二人も付いてくる。
「スタニフ殿、どうです?」
「やっぱりここ、何もされてませんね。陣が師匠のヤツのままですから」
実際にはダミーで意味がないんだけど、それでも師匠、手を抜くことなく陣は描いてる。
けどそれに、手が加えられた形跡はなかった。
「ということは、ここには誰も来ていない?」
「たぶん。仮に来たとしても、何もしないで帰ってます」
だったらここに、これ以上の用は無い。
「イヴェラさん、次を案内してもらえますか?」
「あ、はい」
天井を眺めてた彼女に声を掛けると、我に返ったような返事がきた。
「何か、ありました?」
「いえ、あの上の隅に……」
「え?」
指さす方を見上げる。
「あぁ、なんだ」
一瞬何かまずい仕掛けかと思ったけど、見てみたらなんでもない、師匠の置き土産だ。
「どこかに〝誰かが入ったら分かる仕掛け〟を付けてみたって師匠言ってたけど、ここだったんだ」
どうも師匠が言うには、最初はそうやって反応があったら見に行く、ということを考えてたっぽい。
ただ結局はそれも面倒だってことで、自己修復機能を持つように改良したんだとか。
ホントその研究心、ちょっとでいいから人付き合いに振り向けてほしい。
そうすれば僕は、あんなにこき使われて理不尽な思いをしなくていいのに。
「それにしても、よくわかりましたね」
「なんか、床と違う方向から魔力を感じたので……」
やっぱりもったいない、と思った。
生まれ持つ魔力は人それぞれだけど、これが分かる人間はホントに少ない。
魔法学院の生徒だって、説明なしで分かるのはせいぜい一割だ。
それをあっさり見破るんだから、彼女の魔力はかなり高い。
なんでこんな田舎にいるのか、さっぱりだ。
初等教育終わるとき、もしかしたら終わる前に、強制的に魔法学院に入れられる類なのに。
それを言うと、彼女がうつむいた。
1話の前書きに表紙を足してみました
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