表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/59

55:偉大なる師匠

 翌日、日が昇っていくらもたたないうちから、僕らは山道を歩いてた。

 行先はとりあえず、いちばん近い祠。

 あと周れたら、もう一つか二つ周りたいところだ。


「あ、あれです」


 お嬢さんが指さすほうを見ると、木々の間に確かに、小さな建物が見えた。

 ただ生贄騎士は、きょろきょろするだけだ。


「何も見えないが……」

「ふつうは見えませんよ」


 こういう祠は、当たり前だけど隠されてる。

 だから地元の村の人間に極秘で割符を渡してあって、それを持ってないと見えない仕組みだ。


 ただ僕みたいに魔力が高すぎると、隠されてるところが揺らいで見えて、わかってしまうけど。

 でもそれはごく少数派だから、気にするほどのことじゃない。


 そもそもそんなに僕と同じくらいの人がいるなら、魔導師なんてありふれてる。

 ただ見えてもまっすぐには行けなくて、案内してもらいながら回り道して、裏手の方から近づくことになった。


「驚いたな……」


 祠にかなり近寄ったところで、騎士が声を上げた。

 魔力のない彼には、突然祠が湧いて出たように見えたんだろう。


 逆に謎なのはイサさんだ。

 驚かないとこみると、この人もしかして見えてたんだろうか?


「今、扉を開けますね」

「手伝います」


 閂が開けられて、ひやりとした空気が……流れてこなかった。

 長い年月、石の中で閉め切られてた独特の空気じゃなく、ふつうの山の中の感じだ。


「まぁ、ここに来たんでしょうね。僕らの前に来た魔導師も」


 言いながら松明を灯して中へ入って、床の魔法陣を検める。


「……やっぱり」


 僕の予想通りだった。


「なにがやっぱりなの?」


 イサさんが不思議そうに訊いてくる。

 まぁ分からないのは仕方ない。知らないのだから。

 だから寛大な僕は、分かり易く説明することにした。


「この祠、国境警備の大きい魔方陣の要なのは、分かりますよね?」

「うん」


 魔導師なら、知らないわけがない知識。

 あとイサさんは魔導師じゃないけど、旅の途中で何度も説明したから、ちゃんと覚えてたみたいだ。

 ただ、ここからがこの祠は違う。


「じつはここ、僕の師匠が昔、手を入れてるんですよ。だから陣が普通と違うんです」

「そうなんだ」


 どうも隠遁しながら給金をもらうときの、条件だったらしい。


 各国境はどこも、こうやって侵入を防いでる。

 でも年月が経つと効力が弱まるから、定期的にお抱え魔導師が巡回して、補修する仕組みだ。


 でも師匠、その巡回がとことんイヤだったらしい。

 研究して作った新しいタイプの、長持ちする魔法陣を、あっちこっちの祠に作ったんだそうだ。


「でも今ここにあるの、師匠のじゃないです。もっとごく普通のやつですね」

「じゃぁ、誰かが書き換えた? もしかして、あたしたちの前に来た魔導師?」

「断定できませんけど、たぶん」


 答えながら僕はリュックを降ろして、道具を引っ張り出した。


「どういう陣か、解析してみますね」


 その間にも、魔方陣に視線を走らせる。

 オーソドックスな、お世辞にも上手とは言い難い陣。

 ただ読んでくと、ふつうは国境側からは入れなくて、こちらからは出られるようになっているはずが、逆の配置になってた。


「それじゃ、意味がないぞ」


 説明を聞いた生贄騎士が、松明の明かりの下でも分かるくらい、真っ青になる。

 まぁ防衛の要が、外から引き入れて内に害をなすようになってたら、慌てて当たり前だ。

 というか曲がりなりにも軍事のプロがそれが分らないようじゃ、騎士を廃業した方がいい。


「直せそう?」

「あ、大丈夫です。師匠の陣なので直さなくても」


 僕は断言した。


 師匠、本当にこういうところはすごくて、この手の陣には修復機能を持たせてる。

 どれだけ中の文様を書き換えても、四隅に配置された小さな石が壊されない限り、漂ってる精気を集めて元に戻る仕組みだ。


 ついでに言うと師匠の陣の場合、書かれてる文様は実は関係ない。

 これはダミーで、実際には目に見えない精気を上手に練って、文様代わりにしてる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ