表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/60

52:渦中の地へ

「今日はどこまで行くのー。疲れた」

「あと一息です、イサ殿」

「その一息がいつも長い!」


 前の方から、イサさんの不機嫌な声が聞こえる。


 僕らはお城を出て、東へ延々旅をしてた。

 住んでた村なんてとうに通り過ぎて、もう国境近くのの山岳地帯の、山道だ。


 最初は馬車だったけど、麓の村でそれは置いて、今は馬だけになってる。

 前の馬に乗ってるのは、あの容姿端麗な生贄騎士と、イサさん。後ろが僕だ。


 驚いたことにイサさん、馬に乗れなかった。

 あんなヘンな乗り物は、平気で乗り回すのに。

 なので頑丈な軍馬を選んで、生贄騎士と二人乗りだ。


 ぽくぽくと音を立てて、馬が坂道を登ってく。

 地図を見る限り、そろそろ最奥の村に着くはずだ。


 国境付近は当たり前だけど、他国からの侵入が怖い。

 だからもちろん、魔法でそれなりの防備をしてる。


 幸いこの国は国境が険しい山脈で、通れるところが限られてるから、防備は逆に万全だ。

 でも国境の村でこんなヘンなことが起こってるとなると、その防備も怪しかった。


 だから、見に行く最中だ。


 途中で師匠のところへ寄って、いろいろ心当たりを聞いて道具も持って、それから出発して半月ちょっとは過ぎてる。

 ホントこの国、東西にばっかり長い。


「あぁ、あれですね」


 前の方から、生贄騎士の声がした。どうやら目的の村が見えたらしい。


「すごいとこにあるわねー」

「確かに。僻地とは聞いてましたが……」


 細い道が開けた先に見えたのは、ほんの少しの山間の平地と、山肌に張り付くように建ってる家、それに僅かな段々畑だ。


 家の数は見える範囲だと、全部でせいぜい二十件だろう。

 でもこんな山奥なことを考えると、ずいぶん人がいる方だ。


「あの大きい家が、村長の家?」

「たぶんそうです」


 言いながら彼は馬をいったん止めて、自分だけ降りた。


「行きましょう」


 馬に乗ったまま村へ入るのは、失礼に当たる。

 ただ女性と子供、それに騎士と貴族、あと魔導師は除外だ。


 だからいま降りなきゃいけないのは、雇われ護衛に扮した彼だけだった。

 いい気味だ。


 イサさんは手綱を生贄騎士に任せて、鞍に捕まってた。案外上手だ。

 これで馬が暴れたら速攻で落ちるんだろうけど、訓練されてる馬なだけあって、そういうそぶりは全くない。


 通りすがりの家の窓から、こっちを見てる人がいる。

 なんか見世物の気分だ。パレードならいいのに。


 あと不思議なことに、誰も出てこない。

 たいていの村だと、人が駆け出してくる。けどここは、家の中から見てるだけだ。


 首を傾げながらも進んでくと、目星をつけた家から人が出てきた。

 来てるものがちょっとだけ立派だから、村長だろう。


「これはこれは、魔導師様方、よくぞおいでくださいました」


 村長がそう言ってくる。

 僕とイサさんが、黒のマントを羽織った魔導師スタイルだから、何者なのかは一目瞭然だ。

 というか、それ以外に間違えられたら困る。


「こんな辺鄙なところへ、どんなご用で」

「研究のためにこの近くに幾つかあるはずの、祠を見に来ました」


 僕が予定通りの台詞を言う。

 村長が一瞬びっくりした表情を見せたけど、すぐ笑顔になってうなずいた。


「かしこまりました、お部屋を用意させていただきます」


 魔導師がどこかの村を訪ねて、滞在を断られることはほぼ無い。

 魔導師がいる間に村の結界や魔法の道具を直してもらえるし、薬ももらえるからだ。

 だから辺境になるほど、来るのは大歓迎だ。


 逆にヘタに断ると、魔導師の間に「あの村は泊めてくれない」という噂が広がって、誰も寄り付かなくなる。

 そうなったら村は立ち行かない。


 だからまず喜んでいいのに、村長は何を驚いたんだろう?

 祠を見られるのが嫌だったんだろうか?

 いろいろとおかしな村だ。


「ささ、どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」


 馬から降りて、案内されるままに離れへ入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ