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28/61

28:夜会にて

「魔力がある人間っていうのは、百に一人くらいなんですよ」

「けっこういるじゃない」

「でもその中で、本当に魔法を使える人は、その十人に一人くらいなんです」

「なる。それならたしかに少ないかも」


 やっとおばさんにも、僕の希少ぶりが分かったらしい。


「で、いま使った魔法は、その十人に一人でも、誰でもはできないんです」

「あぁ、だから驚いたのね。魔導師の不興を買ったかも、って」


 勝利だ。ついに僕の勝利だ。

 この魔物のようなおばさんが、ついに僕のすごさを認めた。


 そのおばさんが、まじまじと僕の顔を見る。

 好きなだけ見るといい。僕は寛大だから、どんな失礼だって許せる。


「――だとすると魔導師って」


 おばさんが訊いてきた。


「性格に何か問題ある人が、なるのね?」

「違います!」


 思わず大きな声が出て、辺りの人が視線をこっちに向ける。

 しまった。ついおばさんのペースに乗せられて、冷静沈着な魔導師、という姿勢を崩してしまった。


「魔力と性格は関係ありませんってば」

「でも、あのじーさんとか」


 さすがにこれは反論できない。

 あの師匠の性格が「いい」とは、間違っても言えない。


「たしかに師匠が性格悪いのは認めますけど……でも、本当に関係ありませんから」

「そなんだ」


 おばさんの、店先でいい肉選び方を聞いた、その程度の納得ぶり。

 しかたない、この人は異世界の人間だから、魔力があるっていうことのすごさが分からないんだ。


 僕はそう自分に言い聞かせた。

 そうでもしないと、自分が魔導師の端くれだってことを忘れてしまいそうだ。


「それで魔法って、どんなことができるの? 面白そうじゃない」

「何でもできるわけじゃないですよ。いつでもどこでも、ってわけでもないです」


 そう前置いて説明する。

 魔法を使うには、まず陣か、それに代わる物が要る。

 その陣を作るには、魔法用の素材が要る。

 そしてそれに魔力を込めておいて、使いたいときに発動用の呪を唱えて、さっきみたいな現象を起こす。


「複雑ねー」

「料理みたいなもんですよ。素材と手順、それに腕が必要なんです」

「なる……」


 答えるおばさんは、視線がいつの間にか明後日のほうだ。


「聞いてます?」

「聞いてるわよ。素材と手順と腕でしょ。で、性格は関係なさそうでて、実はある、と」

「それは関係ありません!」


 思わずまた声が大きくなる。そこへ後ろから声をかけられた。


「スタニフ……どの、でしたか?」

「あ、はい」


 振り向くと、周りに数人が集まってた。


「ザヴィーレイ師の、お弟子とか」

「そうです」


 これだけはたしかだから、自信を持って答える。

 これで師匠があんな偏屈じゃなきゃ、何も言うことないのに。

 周囲の人たちが僕に頭を下げた。


「魔導師殿とは知らず、失礼をいたしました。あちらの上座にお座りになられますか?」

「え? あ、いや……いいです。僕はここで」

「そうでございますか。あ、申し遅れましたが、私はルーヌ・ヘグマンと申しまして――」


 以後、次々と自己紹介された。当然覚えきれない。

 隣のおばさんは面白そうな顔で、この騒ぎを見てる。何が面白いのかさっぱり分からない。


 そうやってしばらくして、やっと自己紹介の嵐が終わって、僕はどっと疲れて椅子に腰を下ろした。

 ふと見ると、そこの椅子に座ってたはずのイサさんがいない。


 慌てて見回すと広間の向こう、姫さまはじめ、女性陣が集まってる中に紛れてた。

 おばさんって種族は総じて飽きっぽいうえに気まぐれだから、面白そうなとこへ移動しちゃったんだろう。


 ――騒動起こしかねないのに。


 この会場には姫さまもいる。おばさんが何か起こしたら、姫さまに迷惑だ。

 急いで僕は、イサさんのそばに移動した。


「あ、キミ、終わったの?」


 いつもみたいにお構いなしで、おばさんが僕に話しかけてきた。


「あら、こちらがお話に出てた魔導師さん?」

「まぁ、お若いのね」


 女性陣が口々に言う。

 うん、この貴婦人がたは、ちゃんと分かってる。


 魔導師の素質がある僕は、こういう扱いをうける程度には貴重なんだ。

 なのに、おばさんって種族ときたら……。

 そしてもちろん、話は聞いてない。

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