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23/59

23:ピンチしかない?

「そういえば」


 僕の国を思う深慮を破ったのは、おばさんの声だった。


「この国って、どうなってるの?」

「どうって、どういう意味です?」


 こんな訊かれかたしたって、分かるわけがない。

 おばさんがやれやれって顔で説明した。


「この国の政治とか、国境とかよ。あたし何も知らないんだから」


 それは威張ることじゃないと思う、そう思ったけど言えない。


「あなた、知ってるんでしょ。教えなさいな」

「そりゃ教えますけど……」


 なんで、教える側に命令口調で言われなきゃならないんだろう?

 でもやっぱり逆らえない自分が悲しい。


「えぇと、何から説明すればいいかな……まず、領主様は分かりますよね」

「分かる。ここのヌシよね」

「はい。で、ここにはほかに王様がいます」

「なにそれ」


 ちょっとこの辺は、おばさんには分からなかったみたいだ。

 まぁ複雑な話だから、しかたないだろう。


「この地方はもともと、小さな領主がいっぱいいたんですよ。でも百五十年ほど前に今の王家の祖、イングヴァル王が統一したんです」

「あぁそういうことね」


 おばさんが説明の半分までで勝手に納得する。

 けど、本当に分かってるんだろうか?


 まぁおばさんって生き物はもともと、人の話なんて聞かないわけだけど……。

 イサさんが訊いてきた。


「だとするとここの領主は昔はともかく、今は国王から領地を預かってる身、でいいわけ? まぁ建前上だけで、実質所有なんだろうけど」

「そうなります」


 ちょっと内心驚く。

 まだ半分しか説明してないのに、なんで分かっちゃったんだろう?

 おばさんの半分ひとり言らしき言葉は、まだ続いてた。


「そういうことなら、ここは半独立ってことよね……ねぇキミ、国王が支配してる国って、どのくらい? あと国境はここからどの辺?」

「それは地図がないと……」


 僕は書くものを手元に寄せて、この近辺の大雑把な地図を描いた。


「僕たちがいたユラの村をこの辺だとすると、ここらが今いるお城です。首都はもっともっと西ですね。あと村の東の山脈の向こうは、違う国王の国です」

「ちょっと待ってよ、じゃぁここ、すごく国境近いんじゃない」


 なぜかおばさんが慌てて、さらに訊いてくる。


「東のほうに山があったのは分かるけど、北は? 南は?」

「えーと、描くとこうなるんですけど……」


 僕は描き足した。

 ユラの村のずっと東は南北に長く連なる山脈だけど、山脈の一部がこの領地の北端と南端の両方で、東西に突き出てる。

 というかこのヤルマル領の東半分が、山脈の大きな谷に入り込んでる格好だ。


「で、山の北がドグエ領。南はマグヌス領。どっちも戴く国王は同じです」

「了解。そうなるとこのヤルマル領がいわゆる異国と接してるのは、この東の山脈部分だけってことね」

「そうなります」


 ユラの村始め、ヤルマル領がどこものんびりしてるのは、この地形のおかげだ。

 東から攻めるには、あまりにもここはやりづらい。


 おばさんは何が気に入ったのか、僕が書いた地図をじっと眺めてた。

 何かぶつぶつ言ってるもいるけど、よく聞き取れない。

 そのうちぽふっと音を立てて、ベッドに突っ伏した。


「ここが落ちれば隣国としては万々歳だから、何か介入してんじゃないかってのは思うんだけど……対処法がねー。どうするかな」


 ただぶつぶつ言ってるのかと思ったら、そうじゃなかったらしい。

 対処法を考えるために、原因を突き止めようとしてたみたいだ。


 と、おばさんがぽんと手を打った。


「――とりあえず領主を阻止できれば、隣国がどうだろうが当座いいのか」

「そういうことにはなりますけど……できるんですか?」

「それを考えてるんじゃない」


 おばさんの声が硬くなった。


「と言うかね、何をどうするかまだ見当つかないから、考えてるワケ。それとも、キミは何か考えついたの?」

「いえ……」


 それが分かったら苦労しない。

 というか、城の誰もが苦労してない。

 なのにおばさんときたら、僕を冷ややかな目で見た。


「考えつきもしないのに、何とか何とかって。まったく、なんでみんなそうなのかしらね? 頭は飾りじゃないだろに」


 かなりおかんむりだ。

 まずい。


 ここはそれこそ何とかしないと、僕が地獄を見る。

 必死に考えた僕は、閃いた案を言ってみた。

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