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メルヒェン・ヴェルト ~世界に童話を~  作者: 紙木 一覇
第二章

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143/144

第143話 オレたちと心を動かそう

「うぉ」


 突然第三者の声が響いた。良く知る声だ。オレにとってとても大切な声だ。


「石見(がらみ)!」


 それに、心樋(ことい)、カノ、フォゼの姿もある。


「独りが淋しいなら私たちとおいでよ。

 独りきりでいるのが辛いなら私も同じになるよ」


 横に来て、オレの手を握る石見。

 そして空いている手を天使に向けて伸ばす。


「良いじゃねえか、不老不死。正直マインは老けたくねえ」

「姉さんの面倒はおれが見ないと」

「ワタシはもうちょっと成長したいけど、全盛期過ぎたら良いよ」


 それぞれが手を伸ばす。天使に向けて。


「ヤーコプ、こっちに来てくれ」

「うらは……」


 けれど天使はこちらには来ない。


「辛いの……怖いの!

 永遠ってそんなに良いものじゃない!

 ただただ霧の中を歩いているだけで! 手を伸ばしても誰にも触れない! 足で歩いてもどこにも着かない! そこに希望はないの!」

「それは独りだったからだろう!」

「独りを選んだの!

 みんな変わっていくから!

 うらだけ変わらないなんて! うらのせいで誰かが生きて! うらのせいで誰かが死ぬ! ただの地獄よ!」

「オレがいる! オレももう変わらないんだろう! だったらずっと一緒にいれば良い! どこにでも連れて行くさ! ヤーコプ! まだまだ行った事ない場所いくらでもあるだろう! 一緒に行こう!」

「糸掛(いとかけ)には石見がいる!」

「“オレには”だけじゃない!」

「私! ヤーコプとも一緒にいるよ! みんなで生き続けよう!」


 天使が泣いている。ボロボロと大粒の涙を落としている。


「なあ、ヤーコプ?

 泣いたのっていつぶりだ?」

「……解(わか)んない」

「なら。感情、自分の感情を揺さぶられる感覚、忘れていたんじゃないか?」

「……」

「思い出していこう、知っていこう。

 オレたちといればきっとなにかが変わっていく。

 きっと楽しいぞ。

 いや、きつい事があるかもだけど、ため息つく事があるかもだけど、それだって大切な経験だ。

 オレたちと心を動かそう」

「……」


 天使が動く。涙を流しながら、手が伸びてくる。オレたちの手に触れようと、一歩動き、二歩動き。

 そうしてとうとう、天使の指がオレの指に触れた。


「……!」


 途端、天使を抱きしめる石見。


「よっし、出よう! 私たちと一緒に!」


 真っ白な全てに色がつく。

 カラフルになり、しかし崩れていく。


「うらは……石見が好きなの」

「ごめん。私、糸掛が好き」

「……うん」


 フったと言うのに。フラれたと言うのに二人とも笑顔だ。


「うん。失恋ってすっきりするのね」


 館も迷路も崩れて消えていく。

 天使を囲っていた牢が、失われる!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!


「「「!」」」


 一瞬閃光が見えた気がした。包まれた気がした。

 そうして気づくと元の世界にいて。

 オレたちはみんな、手を繋いでいて。当然天使も。


「やほー、ヤーコプ。ルンだよ解るぅ?」

「……ええ。久しぶり、ルートヴィヒ。ルン。

 かえるの王子、牢、壊れちゃったわ」

「良いよ良いよー。あんなんない方が良いし」

「……そう、ありがとう」

「ま、それよりも。

 天使、これからどうすんの? 俺ちと『ドーン・エリア』にいるかい?」

「姿を隠している人といるのはごめんだわ」


 ん? 姿を隠している?


「あ、そう言えばみんなには見せてなかったね」


 パチン、と指が鳴る。するとなんとびっくり。かえるの王子が破裂した。

 ええ?

 確かに風船みたいな体だったけど……。って。


「こっちが本当の俺ちだよ」


 またもやびっくり。割れたかえるの王子の体。その中から、少女が出現した。

 床につく程に長い、上品なピンク系・ピンクベージュの髪に同色の眼を持つ、グリムの少女が。

 はぁぁぁぁぁぁ?


「こっちの俺ちって不便なんだよねえ。モテて。邪魔くさい」


 ……贅沢な理由で隠してたんか。確かに美少女だが。


「うらは、糸掛たちと行くわ」

「そ。残念。フラれたか」


 全く残念じゃなさそうに、笑う。


「んじゃあ糸掛たちはこれからどうするんだい?」

「んー?

 どうしようか」


 いったん日本に連絡とって事の顛末を報告するのは当然として、その後だな問題は。


「グリムの王、ギフトをなんとかしなきゃなんだけど」


 居場所が解らないんだよな。


「ギフト=イヴェントだね。

 俺ちたちの情報網にもひっかかって来ないんだよねぇ。あ、ちょっと違うか。

 ひっかかるけれどその度に居場所を変えられるんだよねぇ。

 一応、王のいる場所がグリムの本拠点になるんだけど今どこにいるやら」

「「う~ん」」

「うら、少し行きたいところがあるのだけれど」


 うん?


「ママとパパのお墓参り」


 ママ&パパ。ヤーコプの、お母さんとお父さん。死なせてしまったと言うお母さんとお父さん、か。


「良いよオレは。みんなは?」


 問題なし。良いよ。構いません。

 などなど前向きな返事が各所から上がり。

 なら、まずは墓参りに付き合うと言う事で。


「場所は?」

「ヨーロッパ――ドイツよ」






 第二章   了

第二章はここで終了です!

お付き合いいただきありがとうございました!


本編最終章である第三章は少し間をおいてのスタートです。

また、よろしくお願いいたします。

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