第144話 ……人だな
第三章の始まりです!
宜しければお付き合いください
空から人が降りてくる――
良いだろう、夢のある話だ。
フィクションによく使われる冒頭部分。
ゆっくりと、重力がほとんど働いていないかのように眠れる人が降りてきてストーリーが始まり、展開されるのだ。
ここから続くだろう冒険に、読者・視聴者である我々は胸躍らせ、心を弾ませる。
ありがちと言えばありがちだが、様式美と言えば様式美ともとれるか。
ただそれはたいていの場合、異性同士の出会いの演出だ。
降りてくるのが女の子の場合受け止めるのは男の子。
降りてくるのが男の子の場合受け止めるのは女の子。
秘密を抱えた謎の人物の登場に主人公の人生は一変する。
自ら進んで動く主人公、巻き込まれる主人公、仕方なく付き合う主人公。
主人公の形は作品によって変わってくるが、彼ら彼女らは冒険を通し勇気を学び、絶望を学び、友情を学び、力を学び、正義を学び、悪を学び、子供と大人の違いを学び、恋と愛を学び、成長する。
成長した主人公は世界を救ったり救わなかったり。
財宝を手にしたりしなかったり。
些細な幸福を手にしたりしなかったり。
身近な冒険に終始するのも良い。
盛大な冒険に終始するのも良い。
ただ楽しく暮らしました、そんな物語でも良いだろう。
いずれにしても自分とは違う存在との出会いによって始まるストーリー。
違いに遭遇し、迷いながらも関係を結び、理解しあい、手を取り合ってハッピーエンドで終了する。
だとするなら、似た性格だったり同性だったりした場合はどうなる?
意気投合はきっとする。
だって同じだから。共通点があるから。
同族嫌悪は……まあそんな事もあるか? ケンカをしながら進むストーリー。その過程で友情が育まれる、とか。
同性愛に目覚める、これもありか? 昔と違い現代での否定は少ないだろうし。とは言え“昔と比べて少ない”と言うだけで受け入れてくれる人は多くないように思う。まだまだ厳しい世の中だ。それでも読む側・観る側を納得させられるならば、それは作者の勝利だ。こちらは感服しお見事と手を叩くだろう。ファンになってしまうかもしれない。
では、オレが主人公だった場合はどうなる?
空から降りてきた人をオレが受け止めてしまった場合、いったいどんなストーリーが待っているのか――考えただけで心が躍る。
「……人だな」
上空を見ながらオレは――親に糸掛と名づけられたオレは呟いた。




