第132話 お前もなかなか厄介だね
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「私様には最後の誇りに聞こえたが、断末魔にでも聞こえたか?」
バカな。こいつとの間には距離も毒の靄もあったはず!
「全て彼女が消し飛ばした。
私様を呼び寄せる為にな」
言葉を放つごとに口からわずかな炎が見える。
いつでも打てると言うようにちらつかせて来る。
バトルオーラだけで……体を締め付けられるようだ。
ノクスレベルではないにしても重い。
これがこいつの、ドラゴン男の圧力か!
「お前たちもそろそろ見学は飽いたろう」
口が開かれた。炎をたたえた口が。
「がぁ!」
そして炎の息吹が放たれる。石見が閉じ込めている熊男とカマキリ女に向けて。
「はぁ、熱いぜマスター」
「ワタシ様はそうでもない」
瓦礫は灰に。
熊男とカマキリ女が自由を得た。
「さあ、私様たちの誇りを実力として見せる時だ」
「おうとも!」
まず動いたのは熊男。作り上げた空間の穴球体を振りかぶり、投げる。
球速は時速百キロメートルってとこか。速いが避けられる。と言うか狙いが甘い? オレたちの真ん中あたりに飛び込みそうだが誰にも当たらないぞ?
だが、ノーコンと言うのではないだろう。きっとこれにも意味がある。だから油断はせずに誰もが念の為にと球体から距離を取る。
「のんびり動いてんじゃねえよ!」
「!」
熊男がなにも持っていない腕を振るった。するとそれに連動して球体が飛ぶ方向を変えた。
狙われたのは――石見だ。
「魔法のサポートは邪魔だからな!」
だからと言って女性を先に狙うとは!
「褒められんわ!」
即『ギフト・バレット』で球体を撃ち落そうとするオレ。けれど放たれた銃弾は球体の後方を通過してしまう。動き回る石見を狙い続ける球体の速度が上がったから。
「限界速度を出したとは言っていないぞ!」
「更に」
ドラゴン男が羽ばたいた。巨大な翼の羽ばたきは熱を持った豪風を巻き起こし、オレたちの動きをかき乱す。
無論、石見の動きもだ。
「盾よ!」
動いてかわすのは無理だと判断したのか魔法による障壁を作る石見。けれど。
熊男が拳を強く握りしめた。すると球体が二つに分裂、内一つが球状の魔法障壁に接触しこれを破壊する。強い破壊力が地面にも走り空中にも走り、石見はあえて左腕を前に出す。
「っつ!」
左腕で破壊力を全て受け止め体を庇ったのだ。だがそのせいで腕はボロボロに。
「治れ!」
「治れ!」
石見の言霊と心樋の言霊が重なる。当然石見の左腕の治療の為に。
「もう一発あるって忘れてないか?」
そう、分裂したもう一つが石見に迫っている。
「兄さん撃って!」
「!」
心樋の要求に疑問を挟まず一撃放つ。石見を助けたかったが狙いは滅茶苦茶だ。
「追え!」
しかし、銃弾が曲がった。
石見を追い続ける球体に向かって。
「当たって!」
魔法を放った心樋にとっても不慣れな操作なのか、願い祈りながら熊男のように腕を動かし銃弾を操作し続ける。
「お前もなかなか厄介だね」
そんな心樋に向かって鎌を振るカマキリ女。断裂された空気が心樋を切り刻まんと飛来し、
「盾よ!」
なんと心樋が三重魔法を。断裂空気は防げた。ただ無理があったのか言霊を放った舌からわずかに出血してしまう。
それでも心樋は銃弾を操作し続け、とうとう球体に接触させる。
炸裂する銃弾と爆発し破壊を撒き散らかす球体。
近くにいたから石見も吹き飛ばされて、
「止まれ!」
なんとか魔法を使って宙で制止した。
「ありがとうね心樋!」
「いいえ!」
「成程、言霊魔法か、グリムを模しただけかと思って見くびっていたが使えるようだ」
ドラゴン男の口が開く。
炎ではない、ただ開いただけだ。だが開かれた場所は――心樋の背後。
噛み砕く気か!




