第131話 甘かったのはどっちだ
クノイストの眼光が変わった。完全に獲物を狩る側の眼に。
「なにをしようと」
カメレオン女の姿が歪む。油のように光が滲んで姿が消えていくのだ。
「無駄」
「お前がな」
余裕の姿勢を崩さずに完全にカメレオン女の姿が消えた。
足跡も見えないし気配も消失した。記憶からは消えないか?
「いいや」
「え」
「やつは記憶からも消える。俺の『パーペチュアル』が一時的にその威力を削減しているだけだ」
そう、なのか。オレたちだけで挑んでいたら危険な相手だったかも。クノイストがいて良かった。
「安心は早い。作戦を遂行出来てからにしろ」
「あ、はい」
怒られてしまった……。
「カメレオンは俺が――」
『パーペチュアル』のトリガーが引かれる。
「――無力化する」
「!」
弾速に特別なモノはない。それでも目に捉えるには速い『パーペチュアル』の銃弾はカメレオン女のバトルオーラに接触し、ガラスを割るように女の姿を消失状態から世界に復帰させた。
「っ!」
復帰させたままにカメレオン女の胸に迫った銃弾だったがこれは避けられてしまう。わずかに左肩を掠り出血させたが、浅い。
「……面倒な銃を持っているんだね」
「厄介な能力を持っているな」
「「けど」」
「ボク様に消せないモノはないんだよね!」
バトルオーラが大きく膨らんだ。あいつ、余裕の態度に見えたが本当に手を抜いていたのか。
「俺に削減出来ないモノはない」
第二射、発砲。
「無駄と言ったよ!」
撃たれた銃弾に正面から向かっていくカメレオン女。割と速い動作だ。カメレオンって鈍いイメージだがそこまでは一緒じゃないか。
そしてその速い動作で銃弾に指で触れ、これを消した。
「ほおら無駄だった!」
「お前がな」
「ぐっ!」
突如カメレオン女が後方に弾かれ飛んだ。自身の胸に穴を開けて。
は? なにがあった?
「俺の『レイ・ガン』さ」
「ユーリアの光弾の姿を削減しておいた。
鈍い爬虫類は罠にかかりやすいな、カメレオン」
「……っ!」
カメレオン女の背が壊れた地面に打ち付けられる。一度バウンドし、女は――体勢を立て直しクノイストに一直線に迫る。胸に空いたはずの穴を消失させて。
「甘かったね!」
「予想済みだ」
だから即座に次弾を撃つクノイスト。しかし指に触れられ消失させられてしまう。
「気づかないか? 俺以外の戦意を削減している事に」
「なに!」
全方位を取った。心樋の魔法で飛ばされたオレたちがカメレオン女の上・左右・前後を取ったのだ。
「俺たちの力は似ている。作戦は心の中で。甘かったのはどっちだ」
「お前さ!」
「「「!」」」
なにもなかった。いやなにもないと思っていた。撃てば当てられると。
なのに、どうしてかオレたち全員が刻まれた。
この痛みと傷! 鋭利な刃物で切られた傷だ!
「だっ!」
心樋によってゆっくりと降ろされたオレだったが、痛みで全身が痺れて膝を着く。
周りを見ると、カメレオン女を囲った他のみんなも同じ感じか。
「ナイフを消していたのか」
「お前はボク様が消すよクノイス――っつ⁉」
クノイストの持つ『パーペチュアル』にカメレオン女が触れる――そう思われた瞬間、カメレオン女が横に吹っ飛んだ。
心樋に跳び蹴りをかまされて。
「心樋が体術で戦える、これが最大の罠だ」
「治れ!」
そしてすぐに治癒魔法を発動させオレたちを治しにかかる。
全く、心樋の成長速度には驚かされるな。
「蹴られたくらいで!」
「なら撃たれろ」
全員一斉に発砲。
何度か撃ってカメレオン女の周囲に漂うナイフをまず落としきる。
「見えないはず!」
「言ったろう、作戦は心で。
石見の探知魔法で見つけられたナイフの位置は俺たちの心に伝えられた」
熊男とカマキリ女を閉じ込めながらの二重魔法だ。高等な技だが見事やってのけた石見。
「そしてお前の消失は俺が削減する」
カメレオン女の頭蓋に向けられる銃口、煌めく魔力のマズルフラッシュ。
銃弾の勢いに押されて仰け反る女と、削られるバトルオーラ。
悪いとは少しだけ思うけれど!
「終わりだ」
「あ――――――――――――――――――――――――――ああああぁ!」
全員に一撃ずつ貰って、カメレオン女、轟沈だ。
「断末魔に聞こえたか?」




