第130話 やるぞ
「はっはぁ!」
嗤う熊男。両拳の間に小さな『球体』を作って、更にそいつに拳を打ち付ける。
球体が大きくなる。あれは、空気の球か? それとも空間の穴か?
「まずは!」
頭部レベルになった球体を振り上げて、自身が立つ地面へとぶつけた。
途端。
「「「うぉ!」」」
球体が爆裂。見渡せる一帯を、ビルを・道路を・建造物を・樹木を破壊する。
空間の穴だ! 熊男は拳の威力で空間を傷つけていたのだ。
「なんって裂傷!」
これを体にぶつけられたら一発で粉々だろう。
「ぶつけてやるさ!」
「ワタシ様もお忘れなくな」
再び拳を打ち始める熊男。隙の多い動作だ。可能ならそれを突いて行きたいところだが。
「させない」
カマキリ女が熊男の前に陣取って邪魔をする。
こちら側の誰かが撃つと即座に鎌を振って銃弾を裂くのだ。腕が見えなくなるレベルの凄まじき速度で。ほんっとに邪魔だな。なんとか鎌を砕きたいところだ。
「囲え!」
石見が魔法を放った。瓦礫が持ち上がりカマキリ女と熊男を閉じ込める。
「だからなんだと?」
すぐさま鎌で瓦礫を切り刻む、が、切り刻んだだけで瓦礫が剥がれ落ちない。石見がずっと魔法を維持し続けているからだ。
「石見!」
「うん!」
『ギフト・バレット』発砲。撃たれた銃弾が瓦礫に当たる直前に瓦礫に穴が空く。石見が穴を開けてくれたから。そこに銃弾は飛び込んで直後に穴が閉じる。
「……ん?」
炸裂の手応えがない。
瓦礫に閉じ込められた中で炸裂したなら威力はカマキリ女と熊男に吹きつけただろうに。
熊男の空間の穴がなにか作用したか?
「ふふん」
「?」
訊いた覚えのない声が、笑い声が響いた。
姿は見えない。どこからだ?
「こっちだよ」
こっち。声がしたのはカマキリ女たちを閉じ込めた瓦礫方面。
その瓦礫が一部“歪んだ”。
陽炎のような歪み方だ。いくら火炎攻撃を喰らった後とは言え不自然な揺らぎ。
「ボク様の姿を見たいかい?」
いや別に。
理解した。どう考えても誰かが姿を隠しているのだと。
三人目の魔法士がいたのだ。
「見せてあげるよ、見たいだろう」
不自然な陽炎が大きく歪む。油のように光を反射して姿を見せたのは――白人の女。膝辺りまである長い髪の色は赤系・シルバーピンク。眼の色は黄系・オリーブ。バトルオーラの色もオリーブだ。
じゃなくてそこら辺は良くて、問題がある。大きな問題が。
どうして裸なのか!
「ふふん。ほうら見たいでしょう?」
見たいけど見たくない!
白い肌で肉感的な体を惜しげもなく披露する白人女。確かにアメリカ人ってやたら肌出す服着るけど全て取っ払えば良いってもんじゃないだろう。それで男が釣れると思うなよ。
「目をそらすな目を」
「いた」
カノに後頭部を叩かれた。
だってさあ。
「魔法を維持し続けている石見の代わりだ。しっかり敵を見やがれ」
「お、おう」
結構恥ずかしいけど、見ざるを得ない。見るぞ。
「まあ、消すのだけれど」
「ん?」
そぅっと目を向けると裸女の獣人化が始まった。あの緑色の爬虫類の体は――カメレオン!
「さあ、撃ってごらん」
では遠慮なしに、とばかりに撃たれたのはユーリアの『レイ・ガン』。
光の銃弾はあまり魔力を込められていなかったのか小さく遅く。しかしカメレオン女に迫ったそれは彼女のバトルオーラに触れた途端姿を消して。え? 消えた?
「ユーリア?」
「銃弾そのものが消えたね。つまりは姿も気配も存在すら消失させるのが彼女の能力って事だ」
「……さっきのオレの弾も」
そうして消されたのか。ん? じゃあどうして服を着ていない?
「魔法石と魔力の無駄な消耗はごめんだからよ」
……体見られる方がマシってか。解んない感覚だな……。
「クノイスト、お願いするよ」
「解った」
暗い緑褐色・千歳茶色の銃を構える、クノイスト。
彼の銃の能力は確か、一定範囲の威力削減。
「やるぞ、『パーペチュアル』」




