第129話 化け物、だよ
「翔べ!」
「いたっ!」
みなの回避は間に合わない。そう感じたのか石見が極々短い距離だけ空間を飛ばしてくれた。慌てて放った魔法だからか着地の姿勢は不安定。手近なビルの屋上へとバラバラに飛ばされたオレたちは――オレは背を屋上の床にぶつけてしまう。
痛みをおして姿勢を整えると、飛び込んできた景色は惨状。
襲ってきた横殴りの火炎によって灰の道が出来ていた。火はまだ灰にくすぶっている。凄まじい威力だ。
なんだ? 魔法による攻撃か?
火炎が迫ってきた方角を見やる。と、そこに、ホワイトハウス上空に飛翔する大型獣が見えた。
あれは……あの巨躯、あの姿形、あの翼は――例えるならそう、ドラゴン?
「ワシ様たち『スティルボーン・ルナ』のマスターさ!」
視力を取り戻した熊男が意気揚々と叫ぶがそちらには顔を向けない。
白系・シルバーホワイトのバトルオーラを纏う同色のドラゴンがイエローの鋭利な眼を煌めかせ大きく口を開けていたから。その口に、真っ赤な炎を咥えていたから。
「ノクスには劣るが彼、ワタシ様たちのマスターも種々様々な獣の遺伝子を覚醒させた人だ。結果姿はドラゴンに似、放つバトルオーラは魔力とブレンドする事で高熱変化を起こすようになった」
バケモンかよ!
「化け物、だよ」
とても嬉しそうに言う。
仲間の力量を誇るのは別に良いのだが、あんたらも今、火炎に巻き込まれそうになっていたよな?
「ワシ様らの力量を見誤らねえよマスターは!」
「ワタシ様たちなら避けられる、と判断されての攻撃だ」
「そうかよ!」
一撃発砲。オレではなくカノの『ブリンク』によるドラゴン男への攻撃だ。どこまでも速度を増していく杭に似た銃弾は音速をあっさりと超えて――ドラゴン男が大きく羽ばたいた。巻き起こされた突風はこちらに届く程に強烈で熱を持っていた。これもバトルオーラと魔力がブレンドされているのだろう。熱風はカノによる銃弾を弾き飛ばしオレたちの肌を少し焼く。
「なら!」
次撃はフォゼから。『レディ・ポイズン』を撃とうとしたところで熊男が跳んだ。跳んで巨体を以てフォゼを潰しにかかるが、
「ちっ!」
オレとユーリアから狙われ撃たれて、なんと空気を蹴って宙で飛び跳ね回避しやがった。
その間にフォゼは発砲、ドラゴン男が羽ばたく。だが。熱風が魔力込みの銃弾――毒にやられて蒸気に変化、オレたちとの間に白い毒の靄となって漂った。
こちらからドラゴン男を視認出来なくなったが向こうからも同じだ。おまけに毒の靄に突っ込むわけにもいかないだろう。
ならその間に。
「ワシ様をやろうってか!」
銃口を向けられてなお、熊男は猛る。
「こいつを避けてからにするんだな!」
熊男の両の拳が胸の前で打ち合わされる。ガツンガツン! と何度も打たれて、なにをする気か知らないが待っていられるか。
「お前こそ!」
こっちの一撃を避けてからにするんだな!
『ギフト・バレット』、発砲。と同時に撃たれた銃弾が割れた。……は?
「だ!」
なにが起こったのか解せずにちょっとだけ呆けてしまったオレとそんなオレの左肩に蹴りを食らわすクノイスト。倒れはしなかったが数歩分よろけて、オレが立っていた場所に切り痕が出来ていた。
これは。
「礼を言う! サンキュ!」
「ああ」
カマキリ女による攻撃だ。あいつ、空気を断裂させ飛ばしやがった。
その間にも熊男は拳を打ち合わせていて、拳の間にあった空気が歪んだ。




