第125話 当たらなきゃ良いんだろ!
静かにカウントダウンが始まった。
それに合わせ運転中のオレと再度魔法障壁を展開した心樋を除くみんなが石見が指を差す方角へ銃口を向ける。
あと五秒。
ってとこで準魔法士の姿が視認出来た。
あれは――蜂か? 蜂の機械獣を全身に纏っている。
本当に大きいな。纏う人間の三倍くらいの大きさだ。あれだと空気抵抗のせいで細かな動きは出来まい。
それに。
「一匹で来るなんて良い度胸じゃねえか!」
カノの言う通りだ。こっちに何人いると思ってんだ。
快勝出来る、と思った。
「!」
しかし。蜂から無数の青白いレーザーが放たれて、それを受けた魔法障壁が消失した。
「え⁉」
戸惑う心樋。だが戸惑いながらも三度魔法障壁を展開して。
「なんか『ガロウズフィールド』に入った時と同じ消え方だったよ!」
ガロウズと同じ! そして出て来ない魔法士! ならあの青白い光は!
「『ガロウズフィールド』のレーザー版、だろうね。
俺たちの魔法具も当たったら終わりか」
それどころかグリムは直撃したら膂力もまた落ちるだろうに。
車の上方を蜂が通過した。
魔法障壁を『ガロウズレーザー』で消しながら通過しすぐに反転。追って来る。
さっきと今、レーザーの照射は二秒で消えた。あれが限度か? それとも罠か?
「当たらなきゃ良いんだろ!」
銃を構え狙いをつけるカノ。
「⁉」
けれどもなんと、蜂の各部が分離した。
分離し飛翔し『ガロウズレーザー』を打ってくる。それぞれがバラバラにだ。恐らくは蜂の複眼の応用。
厄介! これは思っていた以上に厄介だ!
「小盾よ!」
無数の飛翔体が放ってくる『ガロウズレーザー』、を石見が無数の魔力の盾で相殺する。
とは言え全ての『ガロウズレーザー』を消せてはいない。守られたのはオレたちに直撃するコースのみだ。
「心樋! 出来る⁉」
「や、やってみます!」
盾の小型化、それと確実に狙った場所に出現させる技術。
オレの感覚では相当高位の魔法になる。
「小盾よ!」
それを初手実戦で展開する心樋。小さな盾は八つ出現し内七つが『ガロウズレーザー』の相殺に成功した。
打ち漏らした一つはオレの銃に向かってきたが車から飛び降りる形でかわして。
車に影響は――ないようだ。壊されていないしエンジンも動き続けている。
「みんな見える範囲でバラけて! レーザーは可能な限り私と心樋で防ぐから相手の処理速度を分散させて隙をうまくついて攻撃を!」
「「「了解!」」」
返事をしながら一斉に車を降りる面々。ただ指示を出した石見と心樋は切られた屋根から顔を出したまま残る。
オレたちは自身の握る銃にとって撃ちやすい距離を取りつつ、二人から見える範囲にとどまり動き続ける。
そんなオレたちを飛翔体が追撃し、蜂人間本体も『ガロウズレーザー』で攻撃してきた。が、小盾で防がれて。
……多少レーザーの狙いが甘くなったか?
先程までオレたちの銃を狙っていたのに今は少しだけずれている。
機械獣を纏った人間の処理が人としての脳任せになるのか機械獣がサポートしてくれるのか不明だが、限度はあるようだ。
加えてさっき車を打たれた時に判明した事が一つ。レーザーは物体を素通り出来ない。
とは言えその辺にある石ころを投げてレーザーに当てるのは――
「ダメか!」
至難の業。やってみたけど無理だった。体勢も崩れるし防御は魔法士二人に素直に任せよう。
「雷よ!」
クノイストが魔法を放った。天から蜂人間に直撃する落雷だ。
恐らく機械を麻痺させられるかと思ったのだろう。
彼の読みはどうだ?
「……防いだな」
ポツリと呟くクノイスト。
落雷は蜂の羽で防がれた。いや正確に言うなら羽が細かく震え展開した八角形のビームシールドで。
「防いだのは効くからだ。ユーリア」
「ああ。雷よ!」




