第122話 うまく行くのを願ってる
「……熱い」
「ですねえ」
夕食を終えたオレとフォゼ、二人揃って現在入浴中である。
少し入っていれば湯の熱さにも慣れるかと思ったが……むしろ肌が痛くなってきてんですけど?
「ダメだあ、オレ先に上がるな」
「はい。おれはもうちょい入ってますね」
「ん」
フォゼは熱さに同意しつつも平気そうだな。
温泉大国日本の出身者としては若干悔しいが、意地をはる事でもなし。素直に出よう。
――の前に。
「冷た」
水を火照った体に当てて冷やす。
それが済むと脱衣所へ。
新しい下着を身に着けてパジャマに着替える。
今日はもう寝るだけだ。
だから事前にどこを誰が使うか決めたベッドルームの一つに入って、白いベッドに潜って瞼を閉じる。
雲のようにふんわりとした布団に包まれながらゆっくりと夢の世界に沈んでいく意識。
ああ、良い夢見れそう……。
◇
夢は見られなかった。今朝になって目は冴えている。どうやら思った以上に深い眠りを堪能出来たようだ。
「良し、突入組みんな集まったね」
小さな火山のある空間の歩道、オレたちが借りた二軒の家に挟まれた歩道にて一人一人指を差す石見。
オレ、石見、心樋、カノ、フォゼ、ユーリア、クノイスト。
加えて見送り組のルンにかえるの王子にハインリヒの姿もある。
子供たちはまだ寝ているようだ。
「獲物もそれぞれ持ったし、いつでもオッケーだよ、かえるの王子」
「うん。
んじゃ早速やるよ? 心構えもオッケー?」
頷くオレたち。
気持ちの切り替えは出来ている。ここからはバトルの時間だ。
「うまく行くのを願ってる。
では――翔べ!」
「「「⁉」」」
突如、本当に突如現れたオレたちを見つけ警備に当たっている兵隊たちに動揺が走ったみたいだ。
しかしそこはプロの兵隊と言うところか。
驚き、乱れたのは一瞬ですぐにそれぞれが持っている銃の口をこちらに向けて撃って。
が。
「バカ野郎撃つな!」
一人の兵が怒鳴りつける。
そりゃそうだ。まず現れたのはボートだから。ジャイルの忘れ形見であるボートだ。
そいつが車道を勢い良く滑って兵隊たちへと突っ込んでいるのだ。
撃ちたくなる気分は理解する。だけれど、ボートにはたっぷりガソリンが積まれているんだよ。怒鳴った方が正解だ。
ボートは滑りながら『ガロウズフィールド』直前まで行った。
そこで、轟音を上げて爆発する。何発かの銃弾を受けて火花が散ったから。
「くそが!」
何人かの兵を巻き込んだ爆発から難を逃れた別の兵、が、汚い言葉を口にする。
燃え上がる炎から距離を取って、ボートの次に現れたオレたちへと銃口を向けて精密な狙いもつけずに乱射。
ただの銃弾だ。魔法具ではない。
ゆえに全ての銃弾は心樋が展開し維持してくれている魔法障壁に弾かれる。
良い魔法障壁だ。今オレたちが乗っているオレの愛車、四輪駆動車をちゃんと守ってくれている。サンキュ。
そんなオレたちは猛スピードで炎へと突っ込もうとしていて。魔法障壁があるから炎も熱も問題ない。だがしかし。
「来たよ!」
索敵を行っていた石見から言葉が飛ぶ。
「二時の方角から一人! 十一時の方角から二人! 遅れて一時の方角から一人!」
石見の索敵情報に合わせてまずオレが、次にカノが、続けてフォゼが、更に続けてユーリアが一撃ずつ放つ。この心樋の魔法障壁、内から外に出るのは可能だから。
だから放たれた四つの銃弾はなににも邪魔されずに集まって来ていた魔法士に命中する。
「ん?」
命中、したはずだ。だが四人の魔法士の接近速度が落ちていない。
バトルオーラで防いだか!
「けど!」
オレはアクセルを踏み込む。限界まで速度を出して炎へと突入した。
ボートの瓦礫を踏みつけ、或いは飛ばし、
「!」
炎から出た先に兵がいた。魔法士ではない、ただの兵だ。銃を構えて、車の先に陣取っている。
このままでは轢いてしまう。と思った。
「浮け!」
けれど石見の魔法によって兵は浮かされ横へと飛ばされて。
前方が開いた。
車の速度は落とさない。
魔法士は後方に着地した。着地して即座にオレたちを追ってきている。
「こっちが――先だ!」




