第120話 礼を言うべきじゃないかい?
「……俺ちたちは――」
「無力化される、のは解ったよ。
だけどグリムを助けに行くんだ。そこにはグリムも参加すべきだよ」
「……」
「ただ人間に助けられて、グリムの誇りは傷つかない?
グリムに誇りがあるならどんなに不利でも人と一緒に戦うべきだよ。
それが出来ないと言うならこの依頼は受けられない」
「……」
「俺とクノイストが行くよ」
渋るかえるの王子と、苦笑交じりの笑みを浮かべるユーリア。
クノイストは大きくため息を一つ吐く。
「良いだろう、俺も行こう。彼女の言う事はもっともだ」
「……俺ちは謝るべきかな?」
「礼を言うべきじゃないかい?」
「……オーケー、解った。
ありがとう、ユーリア、クノイスト」
グリムの協力は約束された。
では、アメリカにもいるだろう『人赦聖騎士団』はどうだろう?
後でシエルにメール送っとこう。
「問題はまだあるぜ。
マインらがケンカ売れば外交問題。こっちどうする?」
「あ、それなら大丈夫」
パチン、かえるの王子が指を鳴らす。すると映像が切り替わって。
表示されたのは文字と図。なんだこれ?
「これはアメリカが企んでいる世界隷属計画の証拠資料。
政権を非難し、国民を犠牲者に出来る資料だ。
俺ちは『ドーン・エリア』に一つ仕掛けをしといてね、ネットを通してエリアの機密を盗もうとしたらそっくりそのままそれを相手のコンピュータにお返しするってファイアーウォールさ。
何度も侵入されそうになってその都度アメリカの機密をいただき続けた」
なんつー……。
なんつー事をだがしかし、これらがあれば現アメリカ政権だけを糾弾し日本の立場は守られる、か?
「けれどこれらは捏造可能な証拠だ。
だから証人がいる」
「オレたちに大統領でも捕えて来いと?」
「うん」
「……マジか」
「大マジだよ。あの男さえ手に入れば口を割らせる事は容易い。それは俺ちがやろう。
これで問題はクリアされたかな?」
……まあ、オレたちが考えている問題は、だけど。
不測の事態にならないのを祈ろう。
「おっけ。みんなも良いかな?」
オレたちの顔を一人ずつ見ていく石見。
見つめられたオレたちは石見と目が合うと一人ずつ頷いて。
「ありがとう、人の子たち。
突入は明日からにしよう。部屋は用意するよ。今日はイーラ・フレア産の湯にでも使ってゆっくりすると良い。
飛べ!」
パチン、指が鳴る。
するとなんとオレたち全員を連れてまたもや転移。
今度連れて行かれた場所は――
「こりゃまた、小さい火山だな……」
遠くに見える火山だから、ではなく。オレたちのいる場所からほんの百メートル程度の距離に十メートル程度の高さの火山があった。火山としては破格の小ささだ。多分。
それでも火口からは煙が上がっていて、マグマが流れ出ていた。流れ出たマグマはすぐに冷えて固まっていてここまでは届いていない。
ここ――石造りの家がある場所までは。
家の数は十か。しっかりと土の上に建っていて、歩道はきちんと舗装されている。車道はない。車も見当たらない。
空は青空が広がっているが……絵みたいだった。浮いている雲は本物か?
空間の大きさは直径五百メートルってとこか。狭い場所に火山と家がギュッと詰まっている。
居るのはオレたちだけのようだ。
「イーラ・フレアを真似て俺ちが作った田舎だよ。俺ちたちの休む家。
客用の家は二軒しかないが、そいつを使ってくれ」
「あいよ」
オレが返事をするのと同時、子供たちが散って行った。散って家々に入っていく。どうやら自分たちが利用する家は決まっているらしい。
ではオレたちの家はどれかな?
「こっち」
「いて」
ハインリヒに脇腹チョップされた。なんで?
やった当人はとっくに歩き出しているし……。
「ハインリヒちゃんについて行って。
俺ちは俺ちの家に行くからさ」
「お、おぉ」
ゲラゲラ笑うかえるの王子に若干むかついたが、まあ良いさ、広い心でハインリヒとは付き合って行こう。
「こことここ」
そのハインリヒに早足で追いつき、トコトコとついて行くと端っこの家に案内された。
歩道を挟んで右と左に一軒ずつ。
「男女で別れて。ここでエッチは認めない。うらや――子供たちの教育に悪いから」
一瞬本音を訊いた気がするが、訊かなかった事にしよう。




