第119話 グリムも同行してほしい
「……っ」
あくどい。なんと言うあくどい事を考えるんだ……。
「一つ良いぃ? かえるの王子はなーんも備えていないのお?」
「いいや、王女。
俺ちの魔力が込められている『ドーン・エリア』の技術。製品。
これらから魔力を解放すればアメリカの用意している魔法毒は無力化される。
こっそりやるの大変だったけど」
そこで、オレたちに改めて目を向けるかえるの王子。
ずっと向けられてはいたけれど、なにやら期待の篭った眼差しだ。
「キミらに俺ちからの依頼だ。
魔法毒の無力化を行ってしまえば人は俺ちの製品たちに恐れを抱くようになってしまう。他にも仕掛けがあるんじゃないかってね。
だからそうなる前に、天使ヤーコプの居場所を教える代わりにアメリカに囚われているグリムを救出してほしい」
と言われ、誰も返事が出来なかった。
しないのではない、出来ないのだ。戸惑っているし困ってもいるから。
グリムを救出。これは別に良い。
オレたちは基本、対グリムで動いてはいるけれど「じゃあグリムに対する非道を無視して良いのか」と訊かれると絶対にそうではないから。
暴力にさらされて、助けを求められ、助ける為の力があるなら応えたい。
が、オレたちがアメリカと事を構えるとなれば日本との関係が劇的に悪化するだろう。
ここが難点なのだ。
気軽に無責任な行動はとれない。
それに確認したい点もある。
「あのさ、アメリカ各地に拠点を置いているグリムもいるよね? そのグリムたちはどうしているの?」
と言うのは石見。オレが気にした点もこれだ。
どうしてグリムは動いていないのか。
この疑問に対しかえるの王子は。
「『ガロウズフィールド』って解るかな?」
質問を返してきた。
ガロウズ……なんだって?
「確かにアメリカにもグリムはいるよ。けどね、ホワイトハウスを中心に半径五キロメートルは制圧不可。その秘密が、魔力生成を抑制する力場『ガロウズフィールド』の存在だ。
近づけばその目で見てもらえるんだけど――」
かえるの王子の背後に映像が浮かぶ。ホログラムのスクリーンだ。映されているのは大きな塔が何本か。
巨大な松明のように見えるそれからは青白い炎が高々と空へと昇っていて。
「これらの塔が円柱状に『ガロウズフィールド』を形成している。薄っすらと霧みたいなのが見えるだろう?
質が悪い事にホワイトハウスから球の形に半径百メートルは除外されていてね、連中はそこで魔法毒の精製に勤しんでいるんだ。
捕えられたグリムもそこに」
「……グリムが外から入れば無力化されるって事か」
オレの呟きに「そ」と短い返事が。
転送は行った事がない場所自分の目で見た事がない場所には翔べないからこちらもダメなのだろう。
石見によると「詳細な景色を頭の中で描く必要がある」らしいから遠目での確認は意味がない。グリムの視力は人間並みとも訊くし。
「それだとおれたちもどうしようもないのでは?
魔法具や魔法を取られればただの人ですよ?」
「車で突っ込んでほしい」
オイ待て。
「ってのは半分冗談で、魔力を使わない爆弾で以て塔を破壊する。
そこまでは車で行くか忍んで行くかしてほしいんだ」
思い切って猛スピードで行くかゆっくりひっそり行くか、か……。
では爆弾の方は?
「大丈夫、俺ちが作っている。
二種類だ。
一つは塔を破壊する物。
もう一つは軍事兵器を無力化する浸食爆弾。まあ無力化言っても錆びつかせるだけなんだけど。
問題があるとするなら浸食爆弾の範囲だね。半径五百メートルしか作用しない。
おまけに完成しているのは一発だけだ」
……なんと言う、心もとない装備……。
「……条件がある」
「石見?」
「私たちがケンカを売りに行くのにはグリムも同行してほしい」




