表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メルヒェン・ヴェルト ~世界に童話を~  作者: 紙木 一覇
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/118

第118話 アメリカの欲はもっともっと強かった

 確保した虫を全て虫かごに入れて、そこに殺虫剤を注入。全ての虫が死んでいる。マジで虫退治は終わったようだが、だからなんで今?


「こいつらはね」


 ハインリヒから虫かごを受けとって中を検めるかえるの王子。

 虫かごを振って一匹一匹本当に死んでいるか確かめている。


「俺ちが基本設計図を作ってアメリカに流したモノだよ。

 機械の監視用虫さ」


 監視用!

 本物の虫じゃないってか。


「そんな驚くかな。『ドーン・エリア』の役割って元々色んなモノをテストして世界に放つ事でしょ」


 それはそうだが。だがなぜアメリカがかえるの王子を監視している? 正直驚いたのはこっちだ。


「単純な理由さ。

 俺ちから天使ヤーコプの居場所を()き出す為だよ」

「……教えてないのか? ってか『世界牢』第十四区はアメリカにあるんだろう? 知らないんだ?」

「知らないんだよ糸掛(いとかけ)

 第十四区は俺ちが天使ヤーコプを匿う為に作った家だから」

「家」


 そして匿う。


「アメリカは……天使を確保出来ていない。

 けれどかえるの王子、あんたと全面戦争する気もない?」

「うん。

 そもそもどうして俺ちがアメリカに『ドーン・エリア』を設けたのか、そこから話そうか。

 あ、その前にお菓子おかわり頂戴ハインリヒちゃん」


 ……この状況で良く食べるな……だから太るんじゃなかろうか。


「ん」

「ちょお、俺ちキミの雇い主だよね? 優しくしてよ」


 ハインリヒにお菓子の乗ったトレイを頬にぶっ刺されてブーイング、かえるの王子。

 この二人ずっとこんな調子でやって来たのかな。


「やって来たんだよ。昔ハインリヒちゃんが俺ちに続いてこっちに来た時人間たちに捕まって実験動物にされそうになってたのを助けたんだけど、それ以来こんな感じ。

 ハインリヒちゃんは俺ちから離れようとしないし、俺ちもハインリヒちゃんの冷たい対応気に入ってるから特に文句はないよ」


 そうか。ドMなのか。ならばそっとしとこう。


「で、ハインリヒちゃんを捕まえたのがアメリカなんだよね」

「「「……は?」」」


 幾つかの重なる声。オレの声もその中にある。

 いやだって、ねえ?

 ハインリヒからしたらアメリカから離れたいんじゃないか?


「いや、ハインリヒちゃんは強い子。

 だから他のグリムがアメリカに滅茶苦茶されないよう見張る事にしたんだよ。

 けれどアメリカは諦めなかった。

 なんとか【メルヒェン・ヴェルト】と繋がり支配しよう独占しようと企んだ。

 そこで俺ちと天使ヤーコプは考えたんだ。

 あえてアメリカと繋がり、彼ら彼女らの行動をコントロールしよう、ってさ。

 天使ヤーコプを内側に持つ事でアメリカの欲を満たし、俺ちの技術をアメリカの技術として世に出させる事で欲を満たし。

 そうやって俺ちたちはアメリカからグリムを守ってんの」


 だけれど。と続く言葉。


「アメリカの欲はもっともっと強かった。

 ヨーロッパやアジアと協力し、ワールド・ダウングレードを引き起こした」


 ここで、ジュースを一口啜る。口を潤してかえるの王子は続けるのだ。


「この世界を支えるのになにかが必要だったのは理解するよ。けどさ、それが篝火だったのはグリムとして許せないよね。

 素直に俺ちに相談していればなんとかなったかもなのに。

 ま、もう言っても詮無い事だけど。

 でだ。

 強すぎるアメリカの欲は未だ続いている。

 ワールド・ダウングレードで世界が変わっても、いや変わってグリムが多く流れ込んだからこそグリムを手にしてしまった。

 アメリカは、グリムを解剖解析して、階級を作ろうとしているのさ」


 階級?


「単純な階級だ。

 アメリカ大統領をキングに十二人の貴族。下に労働階級と奴隷階級。これだけ。

 その実現方法はこうだ。


 グリムに喰われずに済む薬を開発した――


 人の心を少しだけ変質させて、グリムが嫌がるモノへと変質させて心を守る、そう喧伝し自国民と他国に薬を売り捌く。グリムが敵性存在として認識されている今だから可能なやり方だ。

 人々は間違いなく飛びつくだろうね。

 けれど薬の真実は心ではなく体組織を変質させる為の魔法の劇薬。

 通常の食事ではなく人の心を喰わねば満足出来ない体に変える魔法毒さ。

 今グリムを想像したろう? でも違うんだ。

 喰い方がグリムとは異なる。

 魔法毒を受けた人間は自ら心を喰う術を持たず、人から“与えられて”初めて摂取可能になる。

 それに気づくには一年が必要だ。一年はこれまで通りにパンでも米でも肉でもお菓子でも食べられる。

 が、それは徐々に出来なくなっていき、気づいた頃にはもう手遅れ。

 人間として残される十三人に半グリム化した人々は隷属するしかないって事。

 人は生きる為に十三人から“食”を与えられ、代わりに十三人の為に働き続ける。

 アメリカ人はまだ良いよ。給金を貰える労働者だから。

 けれど他は奴隷だ。給金を貰えず、“食”を貰えるだけのお人形さ。

 多くの死者が出るだろう。

 紛争が起こるだろう。

 それでも夢の実現に向けて動き続ける。それが今のアメリカ。今の強欲なアメリカ大統領なのさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ