第114話 さあ行こうほら行こう今行こう
「確かに研究所にいそうだし事実前は【メルヒェン・ヴェルト】の研究もされてたっぽいけどお、知らないかなあ? 【メルヒェン・ヴェルト】から篝火を奪った連中は自害しているって話い」
「ああ……前に戦ったグリムが言ってたな」
Sグリム・フェレナントとの戦いでだ。
「自害した連中に研究者の大半も含まれるからあ、そこからはもうここの研究所は『ドーン・エリア』に関する研究開発しかしてないんだよお。
だからかえるの王子の居場所は別だねえ。
もっと下あ。パンフにも地図にも載っていない最下層だねえ」
地面を爪先でつんつんとつつきながら。
隠された最下層、か。
「道は解ってるのか?」
「必要ない。俺が穴を開ける」
「待て待てクノイスト! オレたちがお尋ね者になるのはともかくここに住んでいる人たちをこれ以上怯えさせるな!」
今更って感じはするけども!
けど下には学校があり子供たちがいるのだ。
「ではどうする? 彷徨うぞ?」
「かえるの王子は気配隠してないんだよね? なら私が魔法で気配を視認出来るようにするから、それで探していこう」
「……面倒だな」
「確実、だよ」
少し睨みあう石見とクノイスト。
その間に入ったのは――
「良いんじゃないかなクノイスト。
俺としてもここにグリムを狩る連中が集まってくるのは避けたいしね」
「……解った。
ではやってくれ、石見」
「うん。ありがとう譲ってくれて。
では――」
両手を前に、なにかを支えるかのように手を出して。
「霊視ろ!」
言霊を。
差し出された両手から魔力の球が拡がって様々なモノが色づいていく。草葉は煙のような光を放ち、風には光の流れが生まれ、呼吸で吐き出される息には光の粉が混じる。
「ルン、この中にかえるの王子の気配はある?」
「うん。これ、水の波紋みたいなやつがかえるの王子――」
「俺ちの気配だね」
「「「!」」」
声がした。突如の声の闖入にオレたちは揃って上を見る。
だって声がしたのは上だったから。
そこにいたのは――なんだ? 風船?
大きな黒い風船が、ぷかりと浮いていた。
「初めまして。俺ちがかえるの王子だ」
否。風船ではない。
大きく丸く見えたのは体躯。黒いタキシードを着たグリム、かえるの王子の体躯だった。
ってか胴体はともかくサングラスをかけ黒い帽子をかぶっている頭部まで丸いぞどうなってんだ。
「へいへい、そんなのはどうでも良いよ些細な事さ」
パチンパチンと指を鳴らすかえるの王子。
……些細じゃないだろ……。
「そ・れ・よ・り・も! 移動するよここは危ない。いくら俺ちの『ドーン・エリア』が特別なバリアに包まれているとは言え市民の不安を煽るような事はしたくない。
アメリカ軍部が動く前に移動だよ」
パチン、更に指が鳴る。
「さあ行こうほら行こう今行こう。
飛べ!」
パチン。鳴る指と同時に放たれる高位グリムの使う魔法。
移動の魔法だ。
かえるの王子が起動させた魔法によってオレたちは――獣たちが闊歩する草原へと投げ出された。
「なん⁉」
おまけに水がドーム状に草原を包んでいて海獣が泳いでもいる。
異様。どう見ても異様な光景に思わず銃を構えるオレたち、魔法を放てるように構える石見たち。
だが。
「心配ないよ」
着地した風船――じゃなかったかえるの王子が大きな椅子に腰を下ろして。
「ここは俺ちの家の一室。
『ドーン・エリア』最下層に位置する空間。ちょっと次元をずらした俺ちのホーム。
解るだろう? 獣たちはみんな準魔法士の扱う機械の獣。
俺ちの作った子供たち。
ユーザーなしで勝手に襲い出したりしないから安心しなよ」
言われ、それでもやまない心臓の音。
即座に安心など出来ないが、敵意は本当に感じない。獣たちにはこちらを喰ったりする意志はないようだ。
少し落ち着いて改めて獣たちを見やると確かに機械で出来ている。
これを全て、かえるの王子が作ったって言うのか……。
「まあまあ座りなよ」
パチン、指が鳴るとどこからともなく現れる多くのぬいぐるみたち。
オレたちよりも小さくて、心樋くらいの背丈のぬいぐるみたち。が、人数分の丸い椅子を用意してくれて。と、小さなテーブルも。
「ハインリヒちゃん、ジュースとお菓子配ってー」
「はい」
「「「うぉう⁉」」」




