第113話 グリムなのか? ここの責任者って
「あの……なに?」
心樋が戸惑っている。
そりゃそうだ。
だってクノイストにジ~と見られている。
こら人の妹に手出すなよ?
「そんなつもりはない」
さいで。
ではどうして見ていた?
「まさかグリムってまだ心樋を狙っているのか?」
本人は篝火の戻し方を知らないと言っているのに。
「どこかでなにかを見ている可能性はあるけれど」
間に入って言葉を紡ぐ、ユーリア。
「あいにく記憶を探る術なんて“ここにいる俺たちは”持ち合わせていないから見ていたとしてもどうしようもないね」
ここにいない連中には可能なんだ?
「だからひとまず心樋を狙ったりはしないよ」
「……そうか」
さて、ユーリアの言葉は真実か否か。
「俺たちグリムは、だけど」
「……余計な一言を」
「ふっふ。
まあ、どこに幼女趣味の変態がいるか解らないんだ。しっかり妹を守ってあげなよ」
「言われんでも」
「それよりも。
ユーリア、俺には気になる事が」
「うん?」
再び心樋を見やる、クノイスト。
そして何事かユーリアに耳打ちを。
「へえ。クノイストはそう思うんだ」
「ああ」
「ふむ」
顎に手をやるユーリア。
少し考えこんで、二人揃ってまたもや心樋を見る。
なんだってんだ?
「いや、なんでもないよ。今んとこは」
「?」
「んじゃあ、ルンはヤーコプのとこに行くよお。
少なくともそれまでは一緒って事でえ。
その後はそん時考えよお」
「了解。王女の仰せのままに。クノイストも良いかい?」
「ああ」
「糸掛たちはどうだい?」
「問題ない」
あるとするならそもそも天使がどこにいるかだが……。
「居場所はかえるの王子が知っていると思うよお。『ドーン・エリア』の設計・開発・責任者のお」
「……は?」
かえるの王子。ああ、童話『かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ』のね。
……待て。
「グリムなのか? ここの責任者って」
「え? そだけどぉ?」
知らないの? って感じで首を傾けられても普通は知らんと思います。
「どうしてグリムが? ここ、アメリカの秘匿領域ですよね?
まさかアメリカの重鎮がグリム側だったりします?」
「ううん。アメリカって元々自分たちが世界一になる為になんでも利用してきた国でしょうぉ?」
……まあ、そう言う側面もあるっちゃあるが……。
しかし……。
「かえるの王子ってのは利用されてんのか? マインらの生活水準を上げる技術や法確保の為に?」
「さあ? ルンも最後にかえるの王子に会ったのは随分昔でぇ、何年も会ってないから今の彼の心境は解んないなあ。
当初は協力関係にあったはずだけどお」
ならば当初の目的とは?
「かえるの王子が【メルヒェン・ヴェルト】からこっちに来たのはすっごい昔ぃ。まだこっちとの境界線があやふやだった頃なのねえ。【メルヒェン・ヴェルト】が出来た頃はいろんなモノが曖昧だったんだよぉ。理も、奇跡も、術も、科学も、心理も、世界もねえ。
そんな時にかえるの王子はグリム人形として初めてこっちに来たのお。
自分を誕生させるに至った物語のキャラクター名・かえるの王子を名乗り始めてえ――これに倣って成長した上位グリムは由来のあるキャラクター名を名乗るようになったんだねえ――で、以来ずっとこっちにいるのねえ。昔なら帰れたと思うんだけどお」
「それでもかえるの王子は帰ってこなかった。
俺たちと違って頭良いって話だから俺たちには解らないモノでも見えているんじゃないかな?」
「ふぅ、ん」
確かにオレでは天才の考えとか解らないけれど。
「じゃあ、ルンたちはかえるの王子の居場所は知っているの?」
「知ってると言うかぁ、かえるの王子気配全く隠してないから辿り着けるよお。
ただあ、アメリカがルンたちをどうにかする前に行かなきゃだねえ」
そうだそうだった。ここは最早敵地の真っ只中。
急がねば。
「で? どこにいんだかえるの王子ってのは?」
「下の階だねえ」
下。一階。
学校とその関連施設、病院に研究所とオレたちには少し近寄りがたい建物がある場所。
これらの中で怪しいのは――
「研究所か?」




