第112話 仲間になってくれとは言わない。永遠に一緒にいようとも
「やろう!」
初速から音速を超える銃弾を叩き落そうとするロスアンダム。けれども。
「おぅ!」
全くの別方向から飛んできた光の銃弾に振り上げていた左腕を肩から飛ばされて。
「くそが!」
だからロスアンダムは手首から先を失っている右腕でカノからの銃弾を弾いて防ぐ。
そこに。
「⁉」
飛来するは毒の銃弾。
胸の中央に大きく穴をあけて、ロスアンダムの動きが止まった。
必死の一撃だ。
「この……」
血を吐くロスアンダム。なのに倒れない。ドスンドスンと獣の足を動かし、一歩でも前に進もうと、いや事実進んでいる。
なんと言う根性と精神力。そこには素直に驚き、畏怖しよう。
だが。
オレは『ギフト・バレット』の銃口をロスアンダムの首に向ける。
苦しむ時間は少ない方が良い。トドメを撃つ。
オレの放った銃弾はロスアンダムの前から首を穿ち、逆方向から――首の後ろから光の銃弾が首を穿った。同時にだ。
膝を着くロスアンダム。ルンを睨む眼光。眼に宿った光は鋭さを失わず、それでもとうとう倒れ込んだ。
数瞬の静寂。これを破ったのは――
「……火よ」
石見の言葉。石見の魔法だった。
彼女はまず近くにあったタータルの遺体に火を放ち、続いてジャイル、サンズの遺体にも火を放ち、最後にロスアンダムの遺体にも火を放った。
肉の焼ける匂いがする。
きっと一生忘れぬだろう匂いが。
そんな匂いが充満する中で石見は手を合わせている。冥福を祈っている。
放たれた火は骨にまで達し、これを灰にして消えていった。
……うん、完全に『スティルボーン・ルナ』を敵に回しただろうな。
アメリカ国内でアメリカ魔法組織を敵にする。極めて危険な状況だ。
どうする?
「……ユーリア! 出てきてくれ!」
どこにいるか解らないグリムに呼びかけるのは、オレだ。
なんとなくだが話が通じそうだと思ったから。
「なにか用かい?」
オレの呼びかけに応じてくれるかも不明だったが、ユーリアは姿を見せた。
ただもう一人、『ロスト・パラベラム』で争ったグリム、鮮やかな青緑系・カプリブルー色の髪、明るい青系・サマーシャワー色の眼を持つクノイストを伴っている。
緊張感のある中で余裕なのか微笑むユーリアと厳しい表情のクノイスト。
二人共銃を持っていて、こちらとの距離を詰めない。いつでも撃ち合いに対応出来る距離だ。
彼らの護衛対象だろうルンはオレたちの側にいる。
……こう言う使い方は好きではないがいざとなったら人質になってもらおう。いやほんと好きじゃないんだけど。
「……ユーリア、クノイスト。
二人、オレたちと来てくれないか?」
仲間内に少しだけ走る動揺。だが状況を理解しているのだろう、反対する声はなくて。
「オレたちは今非常に危険な状況だ。なんせ敵の体内にいるんだから。
『ドーン・エリア』もアメリカの一部だからな。
少しでも多くの戦力がいる。
仲間になってくれとは言わない。永遠に一緒にいようとも。
ただある程度の目的が一緒なら、それが達成されるまでは連れ立つ事が出来るんじゃないかな?」
「……ある程度と言うのはアメリカからの脱出、だね?」
「ああ」
難しい目的だ。だがこれが成せなければオレたちの命がどうなるか。
「うーん、王女、どうする?」
「ルンはねえ、ヤーコプの傍にいたいんだけどお」
ヤーコプ、天使か。
「オレも天使には用がある。
みんなが良いと言うなら天使に会った後にアメリカを出たいな」
天使をどうするかは会えた時に考える。
自由を与える為に解放するか、最悪、親の仇として打ち倒す道もあるが。
「みんなは?」
「なにを今更。
私たちその為にここにいるんでしょ?」
そうなんだけどね。
確認は重要って事で。
「遠慮すんなよ。マインにも魔法麻薬の生産者に会うって目的出来てるしな。付き合ってもらうぜ」
「いきなり撃ったりしないでね、姉さん」
「相手次第だな」
「ワタシも良いよ。――ん?」
うん?




