21話 ベンチ
「あいつ絶対俺達の事嫌いだよな。退学って言葉滅茶苦茶嬉しそうに吐き捨てたぞ」
「美人だから許されるけど、むさい男の教師に同じことを言われたバージョンを想像したら……腹立つかもね」
「いや、美人だからセーフにはならないだろ……。お前相当変わってるな」
「そうかい?」
俺達はアルミラージ狩りを切り上げて、全員で職員室で立花先生にランクを犠牲にしてポイントを貰うと校庭の近くのベンチで途方に暮れていた。
ランクを交換する際に学生証を受け取ったのだが、面白い事に俺達全員分は既にランク0の記載がされていたらしく、通常ランクの変更があった場合書き換えを行うようなのだが、そんなものは一切行われなかった。
周りの外の教師達が口々にやっぱりと笑っていたのは中々に屈辱だった。
勿論相沢は怒り心頭、金田は先生が女性だからギリギリセーフらしい。
「立花っちはぁ、あーし達を退学させたいのかなぁ?」
「面倒な生徒達の担任に嫌々宛がわれたかもねえ。それで私達が全員退学した場合には通常のクラスを持てるとか……。何かそういった条件、約束が校長との間にあるんじゃないかしら?」
「だとしても先生なんだから……。あーしもっと可愛がって欲しいかも」
風間さんの隣に座っている渚さんはベンチの上で体育座りをしてがっくりと落ち込んだ。
感情の浮き沈みが少なそうな人だけにこの反応は意外だ。
「も、も、もしかしたら劣等生クラスの担任っていうだけで他の先生に揶揄われたりしてるのかも。立花先生は立花先生で辛い立場なんじゃないかな?」
「そおかなぁ?」
体育座りの渚さんは膝に顔を乗せたままこてっとこちら側に頭を倒して視線を合わせてきた。
下から見上げるようなその視線は、なんというかちょっとずるい。
「女性を困らせているっていうのは僕からすると最大悪。ああ、自分はなんて罪深い男なんだ」
「あ、あのあくまで予想だから」
「でえも、本当に私達の所為で先生が揶揄われてるんだとしたらぁ……。もっとちゃんとしなきゃだよねえ……」
「そうですねえ。虐める側は楽しいですけど虐められるのは辛いだけですから」
さらっととんでもない発言をする風間さんに金田以外のみんなは顔を引き攣らせた。
アルミラージを殺してる時も思ったけど、この人大分サイコパスだよ。
「風間っちこわぁ。あーし友達だけど、虐めないでねぇ」
「ふふふ、それはどうしようかしらぁ」
不敵に笑う風間さん。
金田がそれを見て体をねじらせてるけど、ヤバい癖もってそうだな。
「うーん。ちゃんと、か……。そうなると教師達が俺達の事を優秀だって思う位の成績になるしかないな。そうすれば退学させて気楽になるとか以上に鼻高々で笑いが止まんねえだろ」
「せ、成績ってランクだよね。それでダンジョン踏破がランクアップの条件。ダンジョンにはもう潜れるらしいし、そもそもランク上げないと退学だから……」
「あー、早速潜っちゃう感じぃ? 綾斗っち?」
相沢の成績の話から俺達に今出来る事はダンジョンの踏破しかないって結論に到って口に出すと、嬉しそうに渚さんは口角を上げた。
「マイナス分を帳消しにする分と1回ダンジョンに潜れるだけのポイント、それにアルミラージを殺したときのポイントもある……。それに僕も今日は女の子との約束は無いから付き合ってあげてもいいよ」
「私もまだ殺したりないなあって思ってたんです」
「不完全燃焼だよな、あんなんじゃ」
金田、風間さん、相沢の順にダンジョン侵入に意欲を見せる。
初日から引き籠りだった俺がクラスメイトとダンジョンに……。これ聞いたら父さん卒倒するかもな。
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