18話 アルミラージ
「落ちてくる……」
展開された魔法陣からモンスターの顔が現れ落下してくる。
小型のモンスターでウサギに似ているけど、額に角が生えている。アルミラージ、オークと同じDランクモンスター。体の大きさや目の色が違っていて結構個体差があるみたい。
「あいつら何か背負ってるぞ、あれはリュック?」
「そんなもの持ってるモンスターっているの?」
相沢が言うようにアルミラージの背には小さいリュックが。あんなのモンスターだけの世界にあるとは思えない。
……誰かが背負わせている?
「リュックの中には端末、ポイントを貯めたり使ったり出来る『ポイントチェッカー』が入っています。1人1つずつ用意してあるので必ず取得してください。取得できなかった生徒は……これも現在のランク1を使って交換出来ます。ただ、卒業して事務所に所属しようとしている探索者がこの程度のモンスターからアイテムを奪取出来ないようではどうかと思いますけどね……」
立花先生の煽りともとれる説明と共にアルミラージは地面に落ち、そのままいたる所に走っていく。
速い。ダンジョンでレベル上げはしてたけど、体力に自信があるわけでも足の速さに自信があるわけでもない。
ここで捕まえてしまわないとまずい事になる。
他の生徒も似た様な事を悟ったのか、一斉にアルミラージ捕獲に足を走らせる。
だがアルミラージはひらりひらりと攻撃を避けてまるで嘲笑うかのように駆け回る。
ポイントの手前出来れば殺すよりも捕獲したいと思って全力で戦えてない生徒が多いのもその原因か……。
「いやぁ速かったねえ、ウサちゃん」
「はい。俺も急いで捕獲に参加しないと……。ん?渚さん、速かったって?」
「このウサちゃんねぇ、あーしがスキル発動して3秒も逃げ延びんだよぉ。ヤバくなぁい?」
渚さんの手には目を潤ませるアルミラージ。
耳を片手で握られ今にも泣き出しそう。
それにしても、この一瞬で捕まえたって……渚さん劣等生クラスだよね?
「私も捕まえたわ。足を切って耳を削いでギリギリ生かしてあるの。うふふ」
「ふ、僕にかかればこの程度……あ、ちょっ、あんまり動くと痛いから動かないで……」
血飛沫で顔を汚す風間さんと、捕まえたアルミラージにたじたじの金田。
凄い、凄いけど……この2人が同じクラスになったのは何となく分かる。
あれ、そういえば相沢は?
「おい! そのウサギは俺が狙ってたやつだろ!俺の獲物を横取りするたあ……お前、覚悟出来てんだろうな」
めっちゃメンチ切ってる。
不良やめたんじゃなかったの?
しかもウサギ奪ってこっちに帰って来たよ……。
「攻撃力1はまだ捕まえれてないのか?急がねえと夕方まで鬼ごっこコースだぞ。なんなら俺が1匹捕まえてきてやろうか?」
相沢は気を利かせてくれるけど、立花先生の言う通りこのくらいこなせないで最高ランクなんて無理。
引きこもりで学校に行かなかった時、俺はその環境を変えようと努力しなかった。そんな俺に父さんは虐める側が悪いから、と優しくしてくれた。でもたまに頭を過る。
あの時自分が何か行動を起こしていたら違う景色が見れたのかもって。
麗華に情けない姿を見せなくてよかったかもって。
だから今度は自分から動く。
「『グラビティバリア』、ダブル!」
俺は『グラビティバリア』を2重で展開して、アルミラージ達を自分の元に引き寄せる。
「解除、バリアシリーズ③『スモールバリア』」
『グラビティバリア』を解除して引き寄せたアルミラージ達が逃げる前に自分ごとバリアの中にアルミラージを閉じ込める。
後はこいつらをこの狭い空間で捕まえるだけ……
「あっちょっ! まっ!」
「とんでもないスキルと使い方だけど……。攻撃力1は攻撃力1だな!あっはっはっ!」
逃げ場のないアルミラージだったが捕まえる力も体力もない俺はバリア内で鬼ごっこを開始。
そんな俺に対して相沢は大笑いをして見せたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけましたらブックマーク・評価を何卒宜しくお願い致します。




