14話 私のお兄ちゃん
「加護麗華、そういえば名字が一緒……でもでも顔が全然似ていないし、こんな話題になりそうな事なのに噂すらなかったなんて……」
「引きこもりの人が兄なんてメディア受け悪いから。だから中学も別々にした」
麗華はぶっきらぼうに野宮さんな言葉を返した。
俺以外の前だと猫被るのが当たり前だったのに、今日は様子がおかしいな。
「そうだ。カレーあるんだけど麗華も食べるか?最近は外食ばっかりだろ?」
「いい。食べてきたから。相手の都合で仕事がなくなって……ふぁ、今日は1日寝てるからうるさくしないでよね」
「わ、分かった」
「……なんだ、一緒に祝う人いるんじゃん」
「な、なんか言ったか?」
「なんでもない。高校受かったみたいだけど私、守られるほど弱くないから。それと、今日はたまたま話さないといけなかっただけで、特別。あの時の言葉まだ有効なんだからね」
それってあの時の……。
でも……。
「死んでないからセーフなんじゃないのか?」
「死んだら口きかないって意味じゃない。まさか繋げて理解してた?馬鹿なおに、兄さんはやっぱり嫌い。無茶する兄さんはもっと嫌いだから」
麗華はそう言って自分の部屋に向かった。
あんな態度だけど多分無茶するなって言ってくれたんだよな?
「な、なんか思ってた印象と違くて驚いちゃった……」
「家ではあんなですよ。でも今日は前会った時より優しい感じでした」
「あれで? 綾斗君、大丈夫?引きこもっててちょっとものの感じ方おかしくなってない?」
「だ、大丈夫、だと思います。そ、それよりカレー温まりましたから食べましょう!」
「うん。ありがとう」
――その後俺は野宮さんと談笑しながらカレーを食べたり連絡先を交換していると母さんが帰って来た。
俺達の事を変に冷やかすもんだから野宮さんはせかせかと帰ってしまった。
それでついつい母さんを軽く叱りそうになったけど、その目に映る涙が俺から出ようとした叱責の言葉を飲み込ませたのだった。
◇
「あーもう! なにあの女なにあの女なにあの女! 『私の』お兄ちゃんなのに!」
お兄ちゃんの合格発表日だからいろんな仕事を無理やり昨日の内に済ませてきたのに!
あの女の所為で全部パアよパアっ!
お兄ちゃんから母さんに合格メールが来てたから、私は直接合格おめでとうって言いたかったのに。
……でも私が悪いのか。あんな約束意固地に守って。
でもそうしないとあの日からお兄ちゃんを見るだけで心臓がおかしいくらい高鳴って……。
守ってもらうなんてやっぱり申し訳ないからもっともっと強くなりたいって気持ちとお兄ちゃんに守って欲しいって気持ちが混ざってそれも私をおかしくさせる。
仕事は好き。でもこれ以上お兄ちゃんと離れるのはやっぱり辛いな。
なにかいい方法……でも私、高校には行かないって事務所と決めてるしなぁ。
「はぁ。……お兄ちゃん」
最近の日課。
お兄ちゃんの事を考えながらこうして足の間に手を入れる。
こんな事しちゃ駄目って思ってもやっぱり止められない。
「……ふぅ。お兄ちゃんが私の事務所に入ってくれればなぁ。……。ダンジョン高校入ったんだもん、お兄ちゃんの事ちょっと紹介してもおかしくはないよね」
ティッシュで汚れた手を拭いて自分のスマホに手を掛けると、私はダメ元で事務所に連絡を入れてみるのだった。
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