13話 俺の妹です
「綾斗君、次は入学式になると思うんだけど……その、連絡先とか交換しない? 最初は私も不安だから良ければ一緒に登校したいなぁって……駄目かな?」
「……」
「綾斗君聞いてる? 綾斗君!」
「あ、ああ、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてて……。何て言うかその、まだ実感がなくて……」
合格者の番号を見つけて相沢から喜びのヘッドロックを受け、その場にいた攻撃力1の俺が受かったっていう事実を知った他の受験者に白い目で見られ、それでも喜んでくれる野宮さんがいて……。
でもそのどれもが現実だと感じられなくて、夢を見ているみたいで、帰宅中もどこかぼーっとしてしまっていた。
「分かるよ。だって毎年ダンジョン学校の一般試験の倍率は10倍とか言われてるもんね。それに私達が受けた日とは別の日に海外や地方の人の試験もして……。試験内容が普通の高校とは違くて、筆記試験の内容も勿論だけど学校で作ってるらしいんだけど、とにかく受験者の母数がかなり多い。そんな中特別劣等生っていう枠でも受かったんだから本当に凄いよ」
「凄い、俺が……」
ずっと罵られてきたからそんな風に直ぐに自分を思えない。でも、少しは自分を誉めてあげてもいいのかも知れないな。
「家、か」
「そのさ良かったらなんだけど、お昼一緒にどうかな? 近くのファミレスとか……」
「その、申し訳ないんだけど今日は父さんが作り置き……」
野宮さんの顔は試験の時に見せてた勇ましいものでも何でもない不安な表情。
きっと今のお誘いは相当勇気を使ったんだと気づかされる。
引きこもりの俺だからか、そういう所にはどうしても気付くし弱い。
確か、作り置きはカレーだったから温めるだけ。それにご飯も炊いてたし、カレーは一回にそれなりの量を作ってたみたいだから……。
「ひ、昼は父さんがカレーを作り置いてくれて……。その2人分以上あるから……良かったら、一緒にど、どうですか?」
「……。じゃ、じゃあお言葉に甘えようかな」
そうして俺は初めての多分友達を家にご招待するのだった。
◇
「お、お邪魔します」
「その、こ、こっちです」
俺はリビングに野宮さんを案内すると取り敢えず食卓にかけてもらってお茶を差し出した。
現実感がどうとか、そんなのはもう飛んで、俺の頭は初めて友達を家に上げた時どうすればいいのかという議題に支配されてしまっていた。
「えっと俺はカレー温めてますから、これ」
「あ、ありがとう。私も何か手伝う?」
「だ、大丈夫。お客さんは座って待ってて下さい」
ウェットティッシュを差し出しすと俺は緊張を誤魔化すようにカレーを火にかけた。今のうちに話題を練らないと。
さっきまであんなに普通に話してたのになんで家に上げただけでこうなっちゃうのかな?
はぁ。カレー、かなり量があって温め時間かかりそうだな。助かる。
「普段お料理はお父様が?」
「はい。母さんは妹に付きっきりなので」
「妹さんがいるのね。なんだか意外」
「はは。あんまり兄貴っぽくはないですよね俺」
「そんなことな――」
ガチャ
野宮さんがフォローしてくれていると、リビングの扉が開いた。
そしてそこから顔を出したのは、以前見た時よりも大人らしくなった妹の姿。
「麗華……。きょ、今日はホテルじゃないのか?母さんは?」
「コンビニ寄ってから来るって……。それでそこの人は?」
久々だっていうのに冷たい視線。
でも、会話してくれたな。
「え? 綾斗君の妹さんって……え?」
「この人は同級生の野宮さん。それで野宮さん、驚いたかもしれないんですけど、こっちは加護麗華。俺の妹です」
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