12話 公認劣等生
「き、今日は天気がいいですね。ははっ」
「合格発表にはもってこいね。空模様と同じで私達も晴れやかに合格出来たら最高だけど……私もちょっと緊張してきた」
「あ、はは……」
き、気まずい。
学校やダンジョンで挨拶してくれていたとか、チョコとか、この間の試験とか接点はあるっぽいけど、全部一方的でなんなら初めて会うのと変わらない。
初手天気の話とかまずかったか?女の子だから服とか、でも制服一緒だしなぁ。
世の中の陽キャって言われる人達はこういう時どうしてるんだ……。助けて……。これならまだ麗華にステータスの事とか弄られてた方がよっぽど気が楽なんだけど……。
「それにしても入学試験の3つ目のグループ対抗試験。あれって綾斗君が殆んどだったよね?こう壁と『バリア』の間にオークを挟み込んでぐしゃあって」
「み、見てたんですか?」
「勿論。それに藤君も相沢君もチェックしてたよ。勝負、それも大事な試験。各グループの有力な人達には細心の注意が必要だと思ってね。でも私は綾斗君の『バリア』が強力だって知っていたから襲いはしなかったの。藤君と相沢君は様子見てたら襲わなくても問題ないかなって思ったから、とにかくみんなでオークを狩る事に徹してたってわけ」
「じゃ、じゃあ俺が『バリア』を発動するのが遅かったり、野宮さんよりダンジョンに入るのが遅かったら……」
「攻撃してた。あくまで試験だから私も受かる為に非情になってたよ。……多分」
凛として見せた顔が急に気まずそうなそれに変わった。
さっきのやり取りの時もそうだったけどコロコロ表情が変わって面白い人だな。それに思ったより話しやすいかも。
「なんでちょっとにやけてるの?私顔に何かついてた?」
「付いてないよ。……多分」
「た、多分ってなに!? え、手鏡手鏡……ごめんなさい綾斗君、ちょっとこれ持ってて!」
野宮さんは手鏡を取り出すとバックを俺に手渡してわたわたし始めた。
面白いなぁ。本当に何も付いてなかったけど、もう少し黙っておこう。
「も、もう! だからなんで笑ってるの?」
◇
それからからかっていた事がバレて軽く怒られたものの、気まずい空気はどこへやら、俺達は楽しく談笑しながら学校に辿り着いていた。
人と話すのってこんなに楽しかったんだな。
考えてみれば父さんや母さんと話す事はあったけど『楽しく』って感じじゃなかったもんな。
小さい頃麗華と笑って遊んでた気はするけどそんなの覚えてないし……。
「どうしたのボーッとして。やっぱり緊張?」
「そうじゃなくて、考え事です」
「そう、なの。私はもうダメ。さっきから手が……。ほら、受験票がこんなになっちゃって」
「8番……。あ、ありましたよ」
受験票から見えた数字を遠くにある掲示板から探そうとするとその前の番号が全て飛んでいてあっさりと見つかった。
えっと俺の番号は……
「え!? 本当だ! あった! ……あったよ綾斗君! ……綾斗君?」
「は、はは。やっぱり攻撃力1じゃ無理ですよね……」
俺の番号44番は見つからない。後ろの45番はあるみたいだから藤は受かったのか。いいなぁ。
「落ちたあああああああっ!」
「あれは……相沢君?」
「……Cグループ一応最後に1位だったんだけどね」
悲しみにくれようとしていると、相沢の悲痛な叫び声が辺りに響いた。
俺の分まで、落ちた人の分まで悲しんでいるような気がしてなんか見ていて気持ちよくすら感じる。
「あ、あの、俺も落ちたから……ってその髪型、大分イメージ変わるね」
「攻撃力1か! あの時の事は本当にありがとう!でも今日は厄日だ!やけ酒、いややけコーラ付き合ってくれ!」
相沢は泣きながらダル絡みしてくる。
いつの間にか友達みたいなんだけど……。
「お前ら騒がしいって。おい野宮、こういう奴の対処得意だろ?黙らせてくれ」
「藤君。久しぶりね。その様子だと受かったのかな?」
「勿論だ。野宮も『通常』で合格だろ? クラスによっちゃあ争う事もある。その時はよろしくな。騒がしいお前らも今度は倒してやるから覚悟してろ。じゃあな」
「……今度? 今藤君今度って言った?それに『通常』って……。あ、2人ともあれ!」
敵対心丸出しの藤がその場から去っていくと野宮さんが掲示板の右端下に指を差した。
『特別劣等生合格者、1、25、44、52、80以上5名』
そこには俺の番号とずっと先頭だったから多分相沢の番号だろう1の番号があった。
劣等生って言葉が気になるけど……俺攻撃力1で、受かっちゃったよ。
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