第2話 巻き込まれ傍観者
翌日、私は朝早くに教室に向かいました。
まだ他のクラスメートは寮から来ていません。誰もいない教室には私一人のため、なんだか開放感を感じます。
イオリ・モノルの席に画鋲とかばらまきたい気持ちを抑えつつ、ある準備を行うことにしました。
使われていない椅子を一つ持ってきて教室の隅に置いていると、イオリ・モノルが箱を持ってやってきました。
「おはようございます、モノルさん」
先に来られた優越感でこれには私もにっこりです。
「おはよう、ホーンボーンさん」
イオリ・モノルは若干イラっとした顔をしています。よしっ!
そして、そのあとすぐに20枚ほどのメモ用紙を持ったカイネさんもやってきました。
「二人とも早いね、おはよう!」
当事者もそろったので早速始めることにしましょう。
イオリ・モノルは持ってきた箱を隅の椅子の上に置きました。
箱の上面には腕一本通すことのできるくらいの穴が開いており、中身はまだ空です。
箱には、
『考えた競争内容を1人1つ書いて入れて下さい』
と貼ってあります。カイネさんはその横にメモ用紙を置きました。
「本当にこんなことで、決闘内容決めるの?」
カイネさんは不安そうに言いました。
「結局ここだけは決まりませんでしたから。天に任せましょう」
実は昨日決闘周りのルールを決めて、いざ競う内容も決めようとしたのですが、私とイオリ・モノルの話は平行線をたどりました。さらには両者の意見にかたくなにカイネさんが反対をし、中々決闘内容が決まりません。
無駄な時間が過ぎていく中、カイネさんの一言で私は閃きました。
『もうこんな変なこと思いつくらいなら、クラスメートの皆に考えてもらった方がいいよ!』
聞いたとき、これだ、と思いました。
クラスメートに匿名で決闘内容を募り、それを箱からくじ引きの要領で引く。そうすれば公平性もあっていいのではないかと考えたのです。
そして、今日それを実行すべく私たちは朝早くから教室につどった訳なのでした。
「まず、私達からいれてしまいましょう」
イオリ・モノルはそう言って、メモ用紙を一枚手に取り自分の席に行ってしまいました。やっぱり画鋲設置しておけばよかった。
私とカイネさんも紙を手に席に着きます。
三人で自分が書いたものを見られないようにこそこそと書いた後、用紙を半分に折って箱の中に入れます。
そのころからちらほらと他のクラスメートも教室に来ており、私たちの行動と箱を見てから、同じようにメモ用紙を持って行っていました。ある人はさらっと書いて、またある人はメモ用紙ぎっしりに何かを書いています。一体どうなるのでしょうか。
クラスメートの皆さんはなんだかんだでノリがいいのか、皆さん何かしら書いて箱に入れてくれました。つまり、箱の中には20通りの決闘内容が入っています。20回戦えますね。
「カイネさんもキーラさんも朝早かったみたいだけどどうしたの?」
箱の中身に思いを馳せているとシエナさんが話しかけてきました。
「ふふん、モノルさんとの決闘に関してなんですが」
「結局内容が決められなかったから、クラスのみんなに考えてもらって、それでくじ引きしようってことになったの」
「えええ……」
ちょっとシエナさんが引いた顔をしています。地味にショックです。
「だから、あそこにあんな箱が置いてあったんだね」
納得したシエナさんにカイネさんが聞きました。
「シエナも何か書いて入れてたよね?」
確かに、カイネさんのもですけど、温厚そうなシエナさんはどんな勝負事を考えたのか気になります。
聞かれたシエナさんは露骨に目が泳ぎました。
「どうしましたか?」
「う、ううん、なんでもないよ。あははは……」
一体彼女は何を書いたんでしょうか。
まあ、折角皆さんには匿名で書いてもらったので、詮索はしないこととします。
筆跡でわかってしまうかもしれませんが。
授業は少しそわそわしながら受けたその日の放課後。
私たち以外人のいなくなった教室で私とイオリ・モノルは箱を挟んで向かい合っていました。
「箱の中身をひくのは私でいいんだよね?」
「お願いします」
「お願いするわ」
カイネさんはえいやっ、と箱に手を入れてごそごそした後、一枚の紙を取り出します。
紙は折りたたまれているので、まだ何が書かれているかわかりません。
近くではシエナさんが困ったように微笑みながら様子を見ています。
カイネさんは紙を広げてその内容を読み上げました。
「えーと、『妹が最近ストーカー行為をしていて困っています。どうにかしてください』。……んんん?」
「なるほど、妹さんのストーカー行為をやめさせたら勝ちなんですね」
「より再犯性を低くしたほうがポイントが高くなりそうだわ」
「いやこれそういう話じゃなくない?私は何を判定したらいいの?倫理観?」
カイネさんにはぜひそのあたり頑張っていただきたいです。
「でもこれ匿名なんだよね?誰が書いたのかわからないんだと、その妹さんにも辿り着くのが難しいと思うんだけど」
シエナさんが気合を入れている私たちに話しかけてきました。
「確かにそうですね、さすがオブザーバーのシエナさんです」
「え?オブザーバー?」
その時、教室の扉がバーンッと開いたのです。
「それを書いたのはワタクシですわ!」
赤コーナー:キーラ
青コーナー:イオリ
審判:カイネ
実況解説:シエナ
でお送りいたします。




