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ヒナ ver.2.0

ゲーム会社の会議室。


タクミは今日も自分の席には戻らなかった。


レンと顔を合わせたくない。


それも理由の一つだった。


だが本当の理由は別にある。


部屋の中央には新エンジンが置かれていた。


まだ開発中の試作品。


本来なら社外からのアクセスやゲームサーバーへの接続は禁止されている。


だがタクミは無視した。


自らプログラムを書き換え、誰にも知られない専用サーバーを構築していた。


そこにはフロンティアクエストの世界が再現されている。


当然、許可など取っていない。


見つかれば懲戒処分では済まないかもしれない。


それでもタクミはやめなかった。


もう後戻りできなかった。




タクミは椅子にもたれながら考える。


AIで作ったヒナ。


あれはいったい、いつのヒナなのか。


学習させたのはメール。


SNS。


メッセージ履歴。


スマホのバックアップ。


そして細かな個人情報。


それらを元に人格を構築した。


だが。


「そうか……」


タクミは小さく呟く。


決定的な情報が抜けている。


ヒナが自分と別れたという事実だ。


だからAIヒナは今でも自分を恋人だと思っている。


タクミは目を閉じた。


「それじゃ意味がない」


知りたいのは別れた理由だ。


それが分からなければ、本当のヒナは再現できない。


その時だった。


タクミの目が見開く。


「まだ残ってるじゃないか」


ヒナが使っていたフロンティアクエストのゲームアカウント。


そこには大量のプレイ履歴とチャットログが保存されているはずだった。


タクミはすぐに開発者権限でサーバーへ接続した。


ヒナのアカウントを開く。


プレイ履歴。


チャット履歴。


ログデータ。


大量の情報が表示された。


タクミはそれらを自分のサーバーへ転送する。


進捗バーがゆっくり伸びていく。


やがて転送完了の文字が表示された。


タクミは画面を見つめる。


「これでAIのヒナが更新されるはずだ」


その声は期待と不安が入り混じっていた。



その頃。


ゲーム世界。


ヒナは椅子に座ったまま動かなくなっていた。


「ねぇ、なんか様子おかしくない?」


ロロが顔を覗き込む。


ヒナは固まったまま目玉だけがぐるぐる動いている。


微動だにしない。


「故障?」


「違うと思う。なんかAI学習させられてる感じ」


「あー、アップデート中ね」


ララは納得したように頷いた。


二人はしばらくヒナを眺める。


そしてロロがニヤリと笑った。


「少しいたずらする?」


ララも同じ顔になる。


「いいの思いついた」


二人は顔を見合わせ、同時に笑った。


「ふふふ」


「ふふふふ」


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