外に出たい
「はぁ……」
ヒナは窓の外を眺めながらため息をついた。
石畳の街。
遠くに見える城壁。
どこを見てもファンタジー世界だ。
東京のごちゃごちゃした街並みが妙に恋しかった。
「まぁまぁ元気出してくださいよ」
ロロが声をかける。
「そうそう。落ち込んでも何も解決しないわよ」
ララも楽しそうに笑った。
ヒナは振り返る。
「あんたたちには分からないでしょうけど、私は人間なの!」
ロロは呆れた顔をした。
「だからアルスも言ってたじゃないですか」
「あなたもAIだって」
「試しに魔法で焼いてみる?」
ララが指先に小さな火を灯す。
「ちょっと!」
ヒナが叫ぶ。
ロロとララはケラケラ笑った。
ヒナは腕を組む。
「それにあんたたち、アルスがいない時はずいぶんおしゃべりなのね」
ロロが即答する。
「プレイヤーがいる時だけ無口になる設定なんだよ」
「ゲームに支障が出るからね」
ララが補足した。
「そういう風にプログラムされてるの」
ヒナは少し考える。
「じゃあ現実の世界で、私をプログラムした人間がいるってこと?」
ロロとララはうんうんと頷く。
「それは、誰なのよ?」
ロロとララは顔を見合わせた。
そして同時にさあ?と首を傾げる。
ヒナは机に突っ伏した。
◇
しばらくしてヒナが顔を上げる。
「ねぇ」
「なんです?」
「もし本当にゲームの世界なら」
「外の世界と話をする方法ないの?」
ロロは少し考えた。
「ここにいるユーザープレイヤーはアルスだけだからな」
「難しいんじゃない?」
ララも首を傾げる。
その時だった。
「あっ」
ララが手を叩いた。
「いい方法あるじゃん」
ヒナが身を乗り出す。
「なに!?」
ララはどこからともなく赤い便箋を取り出した。
「運営に手紙を送るの」
「不具合報告とか違反報告とかに使うやつ」
ロロが感心する。
「おお、お前賢いな」
「まあね」
ヒナは便箋をひったくった。
「貸して!」
そして勢いよく書き始める。
『不具合の種類:その他』
『私は人間ですがゲームの中に閉じ込められています』
『どうか元の世界へ帰してください』
書き終えるとララへ渡した。
「これでどうするの?」
「こうするの」
ララは封筒を天井へ向かって投げた。
赤い封筒は光に包まれ、そのまま消えた。
「送信完了」
ララは得意げだった。
◇
一時間後。
食堂で三人が話をしていると、天井が突然光り始めた。
「おっ」
ロロが立ち上がる。
次の瞬間。
ひらひらと一通の手紙が落ちてきた。
「返信だ!」
ララが叫ぶ。
ヒナは慌てて手紙を開く。
そして読み上げた。
『お客様へ ゲームをしている時間が長すぎると思われます』
『現実の生活も大切にしましょうね』
部屋が静まり返る。
ヒナは手紙を見つめた。
そして。
ビリッ。
ビリビリビリッ!
手紙を細かく破いた。
「ふざけんなぁぁぁぁ!!」
ロロとララは顔を見合わせる。
そして小さな体で転がるように笑った。




