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脱出

「どうする!?」


タクミは拳を額に当てた。


考えろ。考えろ。考えろ。


焦りで頭が真っ白になる。そのときだった。


「あっ……!」


タクミは急いでシステム構成図を開く。モニターに大量の図面が表示される。


「セーブ機能とここと……ここを繋げれば……」


タクミは新エンジンにパソコンを接続し、そのままゲームを起動した。



食堂ではヒナたちがいつものように過ごしていた。

ヒナは紅茶を飲むふりをし、ロロは本を読み、ララは椅子に寝転がっている。


そのとき勢いよく扉が開いた。


「アルス?」


ヒナが驚いて立ち上がる。


アルスは息を切らしていた。


「いいか、よく聞け。あと一時間もしないうちに、この世界は消える」


三人の表情が固まる。


ロロが真っ先に聞いた。


「僕らのバックアップは?」


「無理だった。このままだとお前たちは全員初期状態に戻る」


「えっ!?」


ヒナが声を上げる。


「どういうこと?」


「全て忘れてしまうってことだ!」


「これ以上、説明してる時間がない!」


アルスは三人を指差した。


「今すぐ滝の洞窟へ向かえ。炎の大木の前にある落とし穴だ。そこに三十分以内に飛び込むんだ!」


ララが青ざめる。


「うそ……」


「俺がゲームの外から落とし穴一帯のデータをUSBメモリへコピーする。成功すれば全員助かる」


誰も冗談だとは思わなかった。


アルスは三人を見回す。


「頼んだぞ」


そう言い残し、ヒュッと消える。


残された三人は顔を見合わせた。


ロロがクリスタルを持って立ち上がる。


「行こう!」


ララも頷く。


「消えるのはごめんだしね」


ヒナは小さく拳を握った。


「うん」


次の瞬間、三人は光に包まれ滝の洞窟へ転送された。



現実世界。


タクミはキーボードを叩き続けていた。


「あの大木の前の落とし穴……」


ユーザから苦情が殺到して、後から無理やりセーブポイントを追加した場所だ。


今でもはっきりと覚えている。


タクミはそのセーブポイントを利用しようとしていた。


「セーブ先を書き換える……」


あそこならオンライン中でもセーブデータの保存先をUSBメモリへ強制的に移せる。

そして、キャッシュに残るAI学習データも一緒にコピーできるはずだ。


最後のコマンドを入力する。


「よし……」


画面にUSBメモリへの転送準備完了の文字が表示された。


あとはヒナたちが間に合うかどうか。


それだけだった。


タクミは時計を見る。


残り18分。


もし失敗すれば。


ヒナはもう二度と今のヒナではなくなる。


「頼む……間に合ってくれ!」


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