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ヒナの気持ち

「わぁ……」


ヒナは思わず足を止めた。


青く輝く滝。


幻想的な光。


洞窟の壁には無数の結晶が埋め込まれ、まるで夜空の星のように輝いている。


「すごく綺麗」


ロロが首を傾げた。


「ヒナはここを知ってるんですか?」


「うん」


ヒナは嬉しそうに頷く。


「実際に来るのは初めてだけどね」


そして周囲を見回す。


「私、この場所大好きなの」


アルスも満足そうだった。


「気に入ったなら良かった」


そう言って軽く準備運動をする。


「じゃあ行こうか」


アルスを先頭に四人は洞窟を進み始めた。


しかし。


「見て見て!」


「こっち綺麗!」


ヒナたちは写真機能で遊び始める。


アルスはどんどん先へ進んでいく。


しばらくして振り返った。


「おーい!」


三人はかなり後ろにいた。


「置いてくぞ!」


ヒナたちは慌てて小走りで追いかける。


ロロが感心したように言った。


「勇者アルスは詳しいんですね」


「当然だろ」


アルスは笑う。


「ここを作ったの俺だからな」


ヒナの足が止まった。


ララが不思議そうに振り返る。


「どうしました?」


「ううん」


ヒナは首を振る。


「なんでもない」



やがて洞窟最深部へ到着した。


最後の扉を開く。


その先には巨大な木が立っていた。


燃えるような赤い葉。


枝には真っ赤な果実がいくつも実っている。


「あった!」


ヒナが走り出す。


アルスも負けじと駆け出した。


そして。


木の目の前で二人同時に落とし穴へ落ちた。


「ぎゃあああ!」


ドサッ!


ロロとララが慌てて穴へ駆け寄る。


「アルス!」


「ヒナ!」


下から声が聞こえた。


「大丈夫だ」


「いたたた……」


二人はゆっくり立ち上がる。


そして顔を見合わせた。


「「すっかり忘れてた」」



ロロが穴を覗き込む。


「どうします?」


「悪い」


アルスが手を振る。


「回り道してこっちに来てくれ」


「了解です」


ロロとララは走っていった。


洞窟に静寂が戻る。


ヒナはがれきへ腰を下ろした。


「最悪」


ため息をつく。


「あと少しだったのに」


「運営にクレーム入れようかしら」


アルスは苦笑する。


「勘弁してくれ」


二人は並んで座った。


しばらく沈黙が続く。


そして。


アルスが口を開く。


「なあ」


「なに?」


「タクミのことなんだけど」


ヒナは少し首を傾げる。


アルスは慎重に言葉を選んだ。


「嫌なとことか無かったのか?」


ヒナは考える。


そして首を振った。


「無いかな」


「彼は凄い人よ」


「頭もいいし」


「優しいし」


アルスは黙って聞いている。


「そっか」


少しだけ安心したような声だった。


だが次の質問はもっと重かった。


「他に気になる男とかは?」


ヒナは即答する。


「別にいないよ」


アルスの表情が固まった。


レンの名前すらも出ない。


――じゃあなぜ、俺の元を去ってレンの所へ行ったんだ?。


「でも」


アルスが顔を上げる。


「タクミとずっと一緒にいるのは無理かな…」


世界が止まった。


「え?」


アルスは固まる。


ヒナは遠くを見る。


アルスは思わず立ち上がった。


「それどういう意味だ!?」


ヒナが驚く。


その時だった。


「お待たせしましたー」


ロロとララが部屋へ入ってきた。


ヒナはほっとしたように二人へ駆け寄った。


ロロが報告する。


「来る途中で別ルート見つけました」


「おそらくそちらが正解です」


だが。


アルスは怒りの表情でロロに近づく。


「そんなの」


声が震えていた。


「どうだっていいんだよ!」


次の瞬間。


ロロの身体を思いっきり蹴り上げた。


「うわっ!」


ドサッ!


ロロは床へ転がった。


ヒナが立ち上がる。


「ちょっと!何てことするのよ!」


アルスは答えない。


ただ目を逸らす。


そして。


ヒュッ。


その場から消えた。



現実世界。


タクミはヘッドセットを外した。


呼吸が荒い。


嫌いになったわけじゃない


レンの話も出ない。


好きだと言った。


それなのに。


「なんでだ……」


タクミは両手で顔を覆う。


「なんで一緒にいられないんだ」


もう一度ログインしようとする。


だが手が止まった。


今の自分では。


まともに話せる気がしなかった。



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