デート?
ヒナはティアラを手に取り、嬉しそうに眺めていた。
窓から差し込む光を受けて、銀色の装飾がきらきらと輝く。
「今日はご機嫌ですね」
ロロが笑う。
「ふふ」
ヒナはティアラを撫でた。
「アルスも意外といいところあるのね」
そして少し考える。
「ねぇ」
「なんですか?」
「アルスってさ。どんな人なの?」
ロロとララは顔を見合わせた。
「勇者様ですよ」
「世界を救った英雄」
「いや、そういう意味じゃなくて」
ヒナはため息をつく。
「操作してる現実の人」
ララは首を振った。
「開発者ってことくらいしか知らないよ」
ロロが腕を組む。
「でもヒナの知り合いじゃないの?」
「AIの君を作るくらいなんだから」
ヒナは首を横に振る。
「ゲームの中でアルスってキャラクターには会ったことないわ」
「そりゃそうだよ」
ララが笑う。
「あれ開発者専用のチートキャラだもん」
ヒナは少しだけ考え込む。
そしてぽつりと呟いた。
「ちょっとだけ」
「彼のこと知りたくなってきたかも…」
ララの目が輝く。
「もしかして、恋!?」
ロロは冷静に言う。
「ただのAIの学習機能だろ」
二人はケラケラ笑った。
◇
現実世界。
タクミはマネージャーへ報告書を提出していた。
「性能評価は順調です」
「そうか」
マネージャーは頷く。
そして何気なく言った。
「一週間後にメーカーが回収に来るからな」
タクミの動きが止まる。
「回収?」
「メンテナンスだよ」
タクミは青ざめた。
あと一週間。
それまでに答えを見つけなければならない。
ヒナはなぜ出て行ったのか。
レンを選んだのか。
その理由を。
「どうやって聞けばいいんだ……」
タクミは小さく呟いた。
◇
その夜。
城の食堂の扉が開いた。
「よう」
アルスだった。
ヒナが振り返る。今日は黄色いドレスを着ていた。頭にはモモンジュのティアラ。
アルスは思わず見惚れる。
「どうかした?」
ヒナが首を傾げた。
「いや、そのドレス。似合ってるな」
ヒナは少し照れたように笑う。
「防具屋でもらったの」
「そうか」
そして今度はヒナがアルスを見る。
「それよりあんた。その宝石なに?」
アルスの両手には大量の宝石が抱えられていた。
「君へのプレゼントだ」
「いらない」
即答だった。
「装備袋いっぱいになるじゃない」
アルスは固まる。
「そうか。そうだな」
ヒナは思わず吹き出す。
なんだか少し面白かった。
「今日は帰りたいって言わないんだな」
アルスが不思議そうに尋ねる。
ヒナは窓の外を見ながら少し考えた。
「なんかね」
「ゲームやってた頃思い出したら」
「この世界ちょっと好きになってきた」
アルスは目を見開く。
「え?」
「現実でもさ」
ヒナは小さく肩をすくめた。
「ゲームに逃げてた時もあったからね」
アルスは黙る。
「ねぇ」
「退屈だから何かクエスト作ってよ」
「クエスト?」
「みんなで楽しくできるやつ」
アルスは困った顔をしたが、しばらく考えてから頷いた。
「分かった、ちょっと準備してくる」
そして次の瞬間、姿を消した。
◇
一時間後。
アルスが戻ってくる。
ララが驚いた。
「早かったですね」
「ああ」
アルスは笑う。
「見えなくしてたクエストを見えるようにしただけだから」
ヒナが立ち上がる。
「どんなクエスト?」
「滝の洞窟」
アルスが答える。
「その奥にある炎の実を探すんだ」
「モンスターは?」
「消しておいた」
アルスは笑う。
「ヒナが嫌がるからな」
ヒナも笑った。
「よし!」
「行こう!」
ロロがクリスタルを掲げる。
四人は光に包まれた。
次の瞬間。
その姿は食堂から消えていた。




