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キングメーカーの挑戦

ラクスについて分析会議をしていたエクレイドの面々は、基本形態とも言えるラディアンスの強みが分からないでいた。

そんな中、ドリーム・ワールドを構築する上であらゆる不条理や矛盾を押し込められた特殊な位相「アンダーユニバース」から忘れ去られた神が出現し、アーブトピアへモンスターを差し向けてきた!

ラクスの全データを基に作られたというモンスターに、果たしてリヒトとソルティアは立ち向かうことが出来るのか?

 アーブトピアの王宮のテラスで、アーブ国王ケンドリック四世は朝の風を浴びていた。


「ねぇケン」

「ああ、おはようマリエット」


 王妃マリエットがケンドリックの隣にやって来て、手摺(てすり)に寄りかかりながら話を続ける。


「エクスレイドの方達の発表、ニュースになってるわね」

「ああ、神獣が目醒めた話か」


 火吹きイルカの港に居た者がトリスタン小隊とバレットテイルの戦いを撮影して、その際バリードが映りこんでいた様子をマギ・ネットにアップしており、有識者によって当代の神獣に似ていると一部話題になっていた。

 そこにエクスレイドからの正式な発表で、あのモンスターが空裂神獣バリードと認められたため、ハイポリア全土がお祭り騒ぎになったのだ。


「今頃実家は大騒ぎね、本当にあなたと結婚して良かった」

「おいおい、それだけか~?」


 マリエットは王妃になる前、神獣の伝承や記録を継承するべく結成された教団の総帥の長女にして巫女であった。

 今頃マリエットの両親や兄弟姉妹達は礼拝客や学者達の訪問でひっきりなしになっているだろう。


「王妃として、ハイポリアの一国の政を担う者として喜ぶべきかしら?」

「そうだな、俺も素直に喜びたかったが……」


 愛する夫が表情を曇らせた事に、マリエットは体を起こしてケンドリックの手を握る。


「どうかしたの?」

「神獣が現れる事は吉兆なんだろうが、どうも俺はこう考えてしまう……神獣が目醒める程モンスター災害が激化しているのかと」

「そう……ね」

「凶獣の夜のような出来事は二度と繰り返してはならない。俺は君まで失いたくない」

「私も同じよケン」


 凶獣の夜、ハイポリア全土に被害を齎した最低最悪のモンスター災害、ケンドリックに国営の対モンスター災害組織を結成しようと決意させた事件である。


「エクスレイドも頑張ってくれてるし、今はラクスという心強い味方も居る。どうかこれ以上状況が悪化しない事を祈りたいな」

「ええ、私達に出来る事をやりましょう」


 このケンドリックの願いとは裏腹に、今日ハイポリアに新しい敵が現れる事になる。

 モンスターとも違う全く新しい敵に、果たしてエクスレイドはいかに立ち向かうのか。



 

 ベースアヴァロン内部で探査隊は、ラクスについての会議が行われていた。


「ラクスには状況に応じて四種類の姿になれる事が判明しました」


 クォーツモニターにそれぞれラディアンス、ブリザニング、グランサンダー、エーテルバーストのラクスの写真が映し出される。


「光の力とエーテルの力を宿したラディアンス、エーテルバーストを除き、ブリザニングとグランサンダーは二つの元素を宿しているようですね」

 

 イーライが報告している中、ヴェルクがすっと手を挙げる。

 

「はいどうぞヴェルク君」

「分かんなけりゃ分かんないで良いんだが、ブリザニングなら火と水、グランサンダーなら地と風っていう相反する属性を秘めてる訳だが、どうしてうまい事戦えてるんだ?」

「それについては僕の考察になりますが、おそらく相反する属性を体内でぶつけ合う事で発生する膨大なエネルギーを力に変えて戦っているのかと思います」


 ヴェルクは眉を顰めつつ感心したように頷き、腕を組みながら言った。


「あれほど図体がデカけりゃそんな芸当も可能なのか」

「ええ、詳しいメカニズムは今後調べていくつもりです」

「私も質問いい?」

「ええ、どうぞヒオさん」

「エーテルって……どんな元素だっけ?」

「ああ……なるべくぅ……分かりやすく説明しますね」


 火水風地、生命を構成する四つの属性元素に加わる第五属性元素エーテル。

 空元素とも呼ばれるそれは、他の四元素のバランスを調整するために存在するのだ。

 エーテルのバランスを上手く崩せば他の四元素を生み出すことが出来るほか、性質上莫大なエネルギーを秘めているため、扱いは慎重にならなくてはならない。


「あぁ……なるほど、扱いが難しいのか。魔術師元素って言われてるのも納得ね」

「高等科の初歩で学ぶ元素魔法ではまずエーテルへの理解が問われます。ここで躓くと……今後の授業はハードモードです」

 

 エーテルバーストはリヒトが使っていて一番楽しい形態である、出来る事が多すぎる故に初めは扱いに苦労したが、慣れると困難な状況に即座に対応できる形態であるが故に、使っていて楽しくなってくる。


「うむ……」

「あれ、隊長どうかしたんですか?」


 アイリスが首を傾げながらラクスの写真を眺めている。

 何か気になる事でもあるのだろうか。


「ふと思ったんだ、ブリザニングは速さ、グランサンダーは力、そしてエーテルバーストは光線技と強みがあるわけだが」


 顎に手を当てながら、アイリスは更に続けた。


「ラディアンスの強みってなんだ?」

「あばふっ!」

 

 とんでもない禁句である、リヒトは思わず椅子から転げ落ちそうになる。


「確かに……ラクスは最初にこの形態になる事が多いけど、なんでだろう?」

「あ、それはだね……」


 リヒトが説明しようと口を開いた直後、警報が鳴ってウェンディが通信機を取る。


「はい探査隊です、緊急ですか調査ですか? 緊急寄りの調査、わかりました」

「緊急事案?」

「資料出しますね」


 クォーツモニターに写真が表示され、イーライのパッドには詳細が送られる。


「空が割れてる?」


 青空に無数の細かいひびが入り、そこから黄色い光が漏れ出している。


「なんでしょうね、なんかまるで別位相に繋がってるみたいですね~」

「そうだよウェンディ、位相間移動の痕跡が見られる」


 半年間ハイポリアで生活していて初めて聞くワードが出てきた。


「ゴメン、位相って何?」

「簡単に言えば、この世界と重なり合って存在する別の世界です」

「いわゆる神やハイポリアの神獣、あるいは悪魔が住まう別の世界って事ですね」

「要は異次元空間って事ね」

「そんな理解で大丈夫です」


 つまりこの空に走るひびは異次元空間から何かがやって来た、あるいはやってこようとしている痕跡という事になる。


「何かが出て来ようとしている……と」

「ええ、それも想像もできない程恐ろしい何かです」


 イーライがひびから感知されたエネルギーを魔術解析した結果のグラフをパッドから転送し、それを見た皆の顔が強張る。


「マイナスエナジー……」

「まさか……アンダーユニバースから来たの⁉」

 

 またまた知らない単語が出てきた。


「アンダーユニバースってそんなにまずい所なの?」

「僕らの世界、リヒト君の世界のでいう所の夢界(ドリーム・ワールド)は、地球という星に住まう者の集合意識が作り上げたもう一つの地球なのですが、その性質上世界各地の神話が同じ世界に存在してしまう事になってしまう。普通だったら世界観同士の衝突で崩壊してもおかしくない所を、アンダーユニバースというあらゆる不条理や矛盾を無理に押し込める位相を作る事で、崩壊を回避しているのです」

「それに現実世界には夢界(ドリーム・ワールド)に独自の領地(せかい)を持てる夢見人と呼ばれる超能力者が居る、そういった小さい世界同士の衝突の(ひず)みを回避するための位相がアンダーユニバースなんだ」


 一応理解はしたが、そんな所に一体何が潜んでいるのか。


「アンダーユニバースには自分を信じ崇める者を失い、名前すら消え忘れ去られた地球の神々が潜んでいて、昼夜を問わず日々戦いに明け暮れているそうです」

「その様子を垣間見た夢見人ランドルフ・カーターは『地獄以上、地獄以下』と表現した」

「つまり、そんなおぞましい所から何かが来ようとしていると」

「急ぎましょう、すぐに現地へ!」




 ベースアヴァロンからケイが発進し、探査隊はアーブトピアの外れへ向かった。


「よりによってアーブトピアの近くかよ」


 ケイからパラボラアンテナを展開し空のひび割れをスキャンする。


「これは位相間の穴ですね。それが僕らの目に映った際に〝空のひび割れ〟として脳が処理してしまうようで……」


 その時、突如スピーカーからノイズが走り、何者かの声が響き渡った。


『来たなエクスレイド! 私はお前達に挑戦する!』

「あぁ?」


 スピーカーから流れた女の声に呼応するように、空のひび割れが大きくなった。


『行け! ロイズキング!』


 空のひびは完全に亀裂と化し、その中から十メートル程の数体の同型モンスターが出現して咆哮を上げた。


「こんなにモンスターが来たらアーブトピアが!」

「出動要請は間に合わない! とりあえず私達だけで行くぞ!」


 アイリスがクレイモア、ヴェルクがハンマー、ヒオが矢筒と弓を持ってケイを降り、リヒトがそれに続こうとすると、イーライに呼び止められた。


「少し待っててください……よっ!」


 ケイ内部のコンソールを操作すると、奥の転送装置にライフル状の魔道具が転送された。


「これって!」

「リヒト君用に調整したライフル型ワンドブラスターですよ、欲しがってたでしょ?」


 イーライからワンドライフルと各種アタッチメントを受け取ったリヒトは、思わず笑みをこぼして言った。


「ありがとう! これで戦える!」

「ええ、僕もケイで援護しますから、前線は頼みます!」

「背中は任せたぞ!」


 リヒトを見送ったイーライはコックピットに腰かけ、後ろのウェンディに視線をやる。


「準備は良いか?」

「私を誰だと思ってるんですか? センパイの世界一優秀な助手ですよ」

「よし、スカイモード転換! 雷電魔術砲起動!」


 ケイが変形して空へと向かい、目の前のロイズキングへと攻撃を仕掛けるのだった。



 

「ハッ!」


 クレイモアを抜いたアイリスは身体に魔術強化を施して跳躍し、空中で火炎魔法を刀身にエンチャントしてロイズキングの体表に突き立てる。

 クレイモアの刃の先端が刺さり、ロイズキングの体表を引き裂いていく。


「そこまで硬い訳ではなさそうだ!」


 暴れるロイズキングを黙らせるようにアイリスは柄頭を殴りつけて振動魔法を発動して内側から破壊を試み、ロイズキングは絶叫してアイリスを振り落とす。


「爆ぜろっ!」


 空中でワンドブラスターを抜いたアイリスはクレイモアでつけた傷に向けて爆裂弾を叩き込み、内側から破壊してしまった。


「フッ……こんなものか」


 


 ヴェルクは二体のロイズキングを相手取り、互角の戦いを繰り広げていた。


「テメェら! 絶対に街は壊すんじゃねぇぞ! そんな事したら……」


 ヴェルクの言葉を待たずにロイズキングは近くにあった建物を胸から放つ光条で粉砕し、ヴェルクに破片が降り注ぐ。


「テメコラ! 壊すなっつったろうが!」


 キレたヴェルクはハンマー内部の炉心を起動して横薙ぎに振り抜き、二体とも骨を粉砕して動けなくしてしまう。


「タッパ十メートル! こんぐらいだったら行けんだろ!」


 そう言うとヴェルクはハンマーの柄尻に仕込まれた魔術式を蹴って起動して突き立てると、魔法陣が展開してロイズキングが結晶化して粉々に砕け散り、無数の宝石が降り注ぐ。


「ヘッヘン! 久々に素材ゲットだぜ」




 一際苛立った様子で歩き回っているロイズキングの足元では、ヒオが素早く動き回っていた。


「たっ! ふっ!」


 足や尻尾を上手く躱し、口から放たれた光条が地面に炸裂した衝撃を利用して飛び上がり、弓を番えて放つ。


「――――」


 ヒオがそよ風の囁きの如き歌を口遊むと、(やじり)に刻まれた模様が輝いて稲妻のような軌道を描いて何度もロイズキングの体を刺し貫き、最後の一撃が突き刺さった直後に爆散してしまった。


「戻れっ!」


 着地したヒオの右手に帰って来た矢が収まり、それを再び番えながら別のロイズキングへと向かっていく。


 


 リヒトは早速ワンドライフルを使ってロイズキングを攻撃し、その威力に感嘆していた。


「すげぇ威力だ!」

『君と私の力が流れ込んでいるからだろう、ジェムを使うか?』

「ああ、ブリザニングを」


 アタッチメントを切り替えて広範囲モードにすると、リヒトは引き寄せたロイズキング三体に凍結波を浴びせ、グランサンダージェムに触れて土石流を浴びせて粉々に粉砕してしまった。


「良い武器だ」


 ワンドブラスターで後ろを見ずに真後ろのロイズキングを撃ち抜きながら、リヒトはニヤリと笑って呟いた。


「おーいリヒ……うわなにそれ」


 偶然合流したヒオがライフル型ワンドブラスターを見て目を白黒させる。


「いいだろ? さっき貰ったのさ」

「イーライに作ってもらったの?」

「ああ、僕だけ専用武器無かったし丁度いいだろ?」


 そう言いながらリヒトは肩にかけたワンドライフルで後ろのロイズキングを撃ち抜き、ヒオと互いに頷き合ってそれぞれの武器を構えて逆方向を向く。


「そっち何匹?」

「ひいふう……四匹か」

「こっちも四、一気に片付けるよ!」


 リヒトはワンドライフルとワンドブラスターの二丁を構え、ヒオは矢を番えてロイズキングに向ける。


「おおおおっ!」

「……ふっ!」


 ワンドライフルとワンドブラスターから発射された魔法弾が次々とロイズキングの皮膚にめり込み、ヒオが放った矢は無数に分裂してホーミングしながら爆発し、ロイズキングを怯ませる。


「さっきのはただの弾じゃないぞ」


 ワンドライフルのアタッチメントを切り替えたリヒトは共鳴振動波を放ち、それを喰らったロイズキングは体の内部に入った魔法弾が振動波を放って全て大爆発を起こしてしまった。


「もう終わった⁉」

「ああ、いい武器だ」


 ヒオが最後の一匹に取り掛かろうとしたその時、ロイズキングの腹部から巨大な岩石が突き抜けて爆散し、煙を払うと得意げな顔をしたヴェルクが居た。


「もう! 私の獲物だったのに……」

「まあまあこれも援護って事で、しっかしどんだけ送りこみゃ気が済むんだ」


 この三人だけでもそこそこの数を片付けたはずだが、まだまだロイズキングは残っている。


「それにしても何の目的でロイズキングを? 私達に挑戦するためだけってワケじゃないでしょ?」

「まあ考えても仕方ない、とりあえず全滅させよう」

 

 ヒオとベルクと別れた後、リヒトは自分の頭上にケイが通るのを感じながら、次のロイズキングを撃破しようとすると、またもやあの女の声が響き渡る。

 

『ハハハハ! 合格だエクスレイド、だがこれには勝てまい! 行けぃ! ボムスキング!』


 空中の亀裂が一気に広がり、三本の角を持つ爬虫類を思わせる全長五十メートルのモンスターが現れた。


『それに加え……ハァッ!』


 残ったロイズキングが全て合体し、二体の五十メートル級のロイズキングとなってボムスキングの隣に向かうと、三体揃って咆哮した。


「なんだと⁉」

『ハハハハハ!』


 空の亀裂から黒衣を纏った長髪の不気味な女が現れ、建物の屋根の上に立って腕を組む。


「さあ行け、ボムスキング! ロイズキング! アーブトピアを破壊しろ!」

「させるか!」


 ヒオが矢を、アイリスが斬撃を女に向けて放つも、女は手を翳してそれを止める。


「エクスレイド、もうお前達に用はない。この私擁立者(キングメーカー)の標的はラクスだ!」

「なんだって⁉」

「キングメーカー? 何言ってるんだ?」

『まずい! あの女はアンダーユニバースの忘れ去られた神々の一柱です!』


 イーライが言うには、忘れ去られた神々は信奉者を失ったが故に名前を失い、自分の能力に関係した称号を名乗っているという。


「キングと付くモンスターを作るから擁立者(キングメーカー)か、なるほど名前負けしてる奴だな」

『自信を持つのは良いですが、少なくとも奴は魂が中層次元を突破した超能力者なんです。気を付けなくてはあっという間にやられますよ』

「警告ありがとう、気を付けるよ」


 クォーツシーバーの通信を終え、リヒトはワンドライフルを担ぐと建物の影に入った。


「中層次元を突破した超能力者はここにも居るぞ」

「君と私なら神相手でも負けないさ!」

「ああ、行くぞソルティア!」


 リヒトの右腕にスパークルトランサーが出現し、そこにラディアンスジェムを装填してレバーを押し込む。


「ハァ……タッ!」


 リヒトの魂がソルティアのものと融合し、二人の姿が大きく強く変わっていく。



 

 主人の命を受けたロイズキングとボムスキングは、早速アーブトピアの郊外の街を破壊しようと動き出すも、突如目の前へ現れた輝く巨人に目を奪われる。


「来たなラクス……フフフフ」


 キングメーカーは不敵な笑い声を上げ、余裕たっぷりに告げた。


「このボムスキングは貴様の四形態のデータを全てインプットして生まれたキングモンスターだ! それに加え二体のロイズキング……フフフフ、貴様は絶対この私に勝てない! さあ! 新しい世界の為に死ぬがいい!」


 咆える三体のキングモンスターを前に、ラクスは戦いの構えを取る。



 そしてキングメーカーの発言で完全に燃え上がったリヒトは、数年ぶりに獰猛な笑顔を浮かべた。


「あいつ、結構吹いてくれるじゃん」


 リヒトの精神状態を表すかのように、ラクスの精神世界の内側の光が猛るように輝く。


「決めた、全部ラディアンスで倒す」

「ラディアンスは無限の可能性を秘めているからな。きっと可能だ!」

「ああ、プライド高いやつの鼻っ面は、実力で打ち負かしてバキバキにしてやるに限るからな!」



 咆哮して走ってきた三体を跳躍して回避すると、牽制用の楔型光弾であるレイストライカーを放ってロイズキング二体を引き離し、ボムスキングに向かって行く。


「ハッ!」


 ラクスはまずボムスキングへ喉目掛けた鋭い地獄突きを食らわせ、続く肘打ちからの両拳突きで大きく後退させた後、右足にソリッドレイを纏って後ろ飛び蹴りを命中させた。


「ゼヤッ!」

「おお! ラクスが優勢だぞ!」

「ええい! 何をしているボムスキング! そんな軟弱に作った覚えは無いぞ!」


 ロイズキングが胸から光条を放つのを見たラクスは側転とバク転でそれを回避し、二発目の光条をハニカムシャッターで防御する。


「ホォォ……」


 ロイズキングの光条によって防御一転になるラクスを見たキングメーカーは機嫌を良くして不気味な笑みを浮かべる。


「いいぞロイズキング! さあボムスキング、お膳立ては整った、あのバリアを破るのだ!」


 ボムスキングがトドメに口から光線を放とうとエネルギーをチャージしていると、突如ラクスがハニカムシャッターを上へ傾け、ロイズキングの光条は空へと向かった。


「ゼィアッ!」


 ラクスが天に向けて指先を向けると上空にもハニカムシャッターが張られ、それがロイズキングの光条を反射して光条を撃ち返されてしまった。


「なにッ⁉」


 思わぬ上空からの攻撃に、三体のキングモンスターは吹き飛んでしまった。



「決まったな」

「ああ、奴らにラディアンスの本当の強さを見せてやる!」



 吹き飛んだキングモンスターに対してもラクスは油断せず、構えを解かず警戒していると、今度はボムスキングが仕掛けてきた。


「フッ!」


 ボムスキングは口から無数の火炎球を放ち、ラクスはアストロイドボムを小さくしたものを放って攻撃を相殺する。


「ゼッ! ハァィヤッ!」


 爆炎を突っ切る様にラクスはアストロイドボムを放つも、ボムスキングは角から光波を放ってアストロイドボムを無効化し、再びロイズキングと共に光条と光波で攻撃を仕掛けてきた。


「ゼハッ!」


 ラクスは跳躍して光波と光条を回避し、飛翔しながらレイストライカーを広範囲に連射して場を撹乱すると、一体のロイズキングの真後ろに回り込んでアストロイドボムを生成する。


「ゼェイヤッ!」


 生成したボムを手に持ったまま、ラクスはロイズキングの体を切り裂き、最後に頭目掛けてボムを叩きつけ、ついに一体目を撃破してしまった。




「ロイズキング! ええい! 貴様ら何をしているんだ!」


 キングメーカーが歯を剥き出して怒りを露わにする中、探査隊の五人は感心したようにラクスの戦いを見ていた。


「ラディアンス、こんなに強かったんだ」

「思い返せばラディアンスで戦っていた時、常に何かしらハンデがあったな」


 思えばフォゴン戦では霧の影響を、ズオーギラン戦では養護施設が近くにあったため十全に戦えず、バグライトンや分裂前のグリアンゲロはストレートに倒し、ザントラスもガラスを吐くまでは有利に戦えていた。


『そうか、シンプルイズベスト! 全ての能力が均衡を取ることで、あらゆる場面に対応できるんだ!』


 益々猛る二体のキングモンスターに対してラクスは構えを取り、走ってきたロイズキングの尻尾による一撃を躱してレイストライカーを放ち、続け様にボムスキングの腕の一撃を防御して喉締めを放って肘打ちを食らわせ、堅実に勝利への道筋を立てていく。


「見ているだけではいけないな、我々はロイズキングを集中して攻撃! ラクスを援護する!」

『了解!』

「しゃぁ! 待ってました!」

「ロイズキングですね、行きましょう!」


 アイリス、ヒオ、ヴェルクが走り出すと同時にケイが旋回してロイズキングへ向かい、魔術砲を連射して気を引く。


『こっちに来ますよ、気を付けて!』


 こちらに向かってきたロイズキングを引き付け、アイリスら三人は全力で持ち場へと走り出した。


「イーライ! アーム出して!」

『アームですね!』

 

 ケイが若干高度を下げてゴレムアームを展開し、ヒオは跳躍してゴレムアームに飛び乗って更に高く跳躍し、ロイズキングの身長より高い場所で弓を引く。


「見えなく……なれ!」


 ヒオが放った矢はロイズキングの脳天に突き刺さり、そこから煙幕がもうもうと発生してロイズキングの顔面を完全に覆ってしまった。


「ヴェルク! 今よ!」


 その下の物影で待機していたヴェルクがハンマーの柄尻を蹴って魔術式を起動すると、ロイズキングの足に魔法陣が展開して爪先から徐々に結晶化していく。


「見えない動けない、ぜひとも俺の装飾品づくりの素材になってくれや!」


 下半身を固められて動けない上、視界も完全に塞がれたロイズキングは藻掻くも、もはや打つ手は完全にない。


「これで終わりだ……フッ!」


 アイリスがクレイモアの刀身を撫でてから空を切ると、空中に炎の斬撃と氷の斬撃が十字に交差した跡が残る。


「ハァァァアッ!」


 アイリスが十字の斬撃を突くと斬撃は勢い良くロイズキングに向かって行き、体を切り刻んで大爆発を起こしてしまった。


私達(エクスレイド)を舐めるなよ!」




 仲間たちの勝利を見届けたラクスは、最後に残ったボムスキングと向かい合い、最後の戦いを始めようとしていた。

 

「ボムスキング……貴様も負けるなど許さんぞ!」


 配下のロイズキングを殺されて怒ったボムスキングは、胸を叩いて腕を振り回して咆哮すると跳躍して体を旋回させながらラクス目掛けて尻尾を叩き付けようとする。


「フッ! ゼヤッ!」


 ラクスはハニカムシャッターを展開すると、シャッターを半分に分割して片方を右側に置いて尻尾の一撃を防ぎ、もう片方のシャッターをボムスキングに押し付けて衝撃を伝達して吹き飛ばし、追撃にレイストライカーを放つ。


「くそ……くそっ! 何故だ! ラクスは……私の見込みが甘かったとでも言うのか⁉」


 四形態に対応した強さを発揮するはずであったボムスキングは、基本形態(ベーシック・タイプ)とも言うべきラクス・ラディアンスに完全に押し負けている。

 突き付けられた残酷な事実にキングメーカーはもはや頭を抱えるしかない。


「いいや……そんな筈はない! ボムスキング! お前の秘めたエネルギーを解放しろ! 私が許可しようッ!」

 

 それを聞いたボムスキングの目が光り、腹部から不気味な光が放たれ、それが徐々に喉元へせり上がって来た。


『皆さん伏せて! とんでもないエネルギーだ!』


 イーライの警告の三秒後にボムスキングの口から黒い光球が放たれ、ラクスは咄嗟にリダブライズサークルを展開してスパークルシュートを放つ。


「オォォ……ゼェヤッ!」


 気合を入れてスパークルシュートの威力を押し上げて光球を破壊するも、光球が破壊した余波でケイが一時的に制御不能になってしまった。


「くおおおおっ!」

「いやあああああっ!」

「ハッ⁉ フオッ!」


 普段は敵の拘束に使うチェインレイを放ってケイの制御を立て直すと、再び光球を放たんとしているボムスキングに向けて構える。



「奴を倒すには……これしかない!」



 ラクスは右足を地面に擦りつけてソリッドレイを纏わせると、光球が喉にせり上がって来たタイミングを見計らって助走をつけた後ろ回し蹴りを叩き込む。


「なっ!」

「スォォ……ゼェェェェエエエッ!」


 光球発射を妨害されて苦しむボムスキングに、ラクスは直蹴りや回し蹴り足刀蹴りなどを連続で放ち、最終的に跳躍からの大旋回踵落としを脳天に叩き込んで完全にダウンさせてしまった。


「やった!」

「すげぇ! 速くて見えないキック連打だ!」

「ラクスが勝った!」

『すごい……蹴りだけでやっつけちゃった』

『ラディアンス……これは評価を少し改めなくては』


 エクスレイドが勝利に湧くのと対照的に、キングメーカーは敗北に項垂れて……いたかに思えた。


「ンックハハハハハハ! ハーハハハハハ!」

「なんだあいつ」

「負けた癖に笑ってるの?」


 ひとしきり哄笑を上げたキングメーカーは、ラクスを指差して語り始めた。


「ボムスキングに実力で勝ったのは認めてあげるわ! フフフ……でもねラクス、今ボムスキングの中にさっきの光球のエネルギーが何発分あると思う?」


 ラクスは驚愕した様子で物言わぬ死体となったボムスキングへと構えを取り、それを見たキングメーカーは更に哄笑を上げる。


「生きている時は制御が効いていたが死んだ今はどうなる事やら? まあハイポリア全土とは行かずとも……ここを中心にギルモアスと森は焦土、エフェルスタンドは半壊するんじゃないかしら?」

『⁉』

「なんですって⁉」

「ふざけるな! 今すぐボムスキングをアンダーユニバースに送り返せ!」


 アイリスがクレイモアを突き付けて怒鳴りつけるも、キングメーカーは意に介さない。


「さあどうするラクス? お前が犠牲となるか? それともここを見捨てるか? 残り少ない時間で何が出来るかな?」


 そう言っている間に、ラクスのメテオシンボルの輝きが赤く変化した。

 リヒトとソルティアの魂の融合によって高次元空宇宙から召喚される無敵の戦闘用肉体(アバター)ラクスは、三次元宇宙では数分間しか顕界することが出来ず、更にソリッドレイを用いた技を多用すると活動時間は短くなっていく。

 残された時間は短い、果たしてどのように状況を逆転するのか?



「リヒト、どうする? グランサンダーで殴って大気圏外に吹き飛ばすか?」


 ソルティアの美しい声に、若干の焦りが混じっていた。

 

「いや、このままだ」

「リヒト!」

「……要は爆発させずに死体を処理すれば良いんだ。だったらこの形態(ラディアンス)しかない!」


 数秒の沈黙の後、ソルティアはリヒトの意図に気付いた。

 

「そうか! あの技だな?」

「わかったみたいだな、息を合わせろよ」

「もちろんだ! 行くぞリヒト!」

「ああ! スパークルカノンだ!」



 ラクスはまず腕を交差して輪状にしたチェインレイを複数個放ってボムスキングの死体を包み込み、上空へと体を浮遊させる。


「ハン! 空に飛ばす気? 浅知恵にも程があるぞ!」


 だがキングメーカーの予想に反し、ラクスは両拳をメテオシンボルの前で重ねた。


「スパークルシュートを放つ気⁉ これじゃ火に油を注ぐようなものじゃない!」

「オイオイ……ラクスの奴どうしたんだ⁉ 大丈夫なのかよ!」

「……彼を信じよう、何か考えがあるんだ」


 拳を広げてリダブライズサークルを展開した直後、左腕を斜め上に、右上を斜め下に広げて、リダブライズサークルを更に五つ展開する。


「輪っかが五つに増えた!」

「なにっ⁉」


 広げた腕を回して胸の前で交差すると、ラクスの腕の周囲がエネルギー変換によって輝く。


「オオ……ゼヤアアアアアアアッ!」


 交差した右腕を前に出して十字を組むと、右腕からはエメラルドグリーンの、左腕からはスカイブルーの十字型光線が発射されてボムスキングの死体に直撃し、なんと爆発せずに完全に焼き尽くして消し去ってしまった。


「な……な……」

「フッ!」


 キングメーカーの完全敗北である。

 困惑から一転、キングメーカーは頭を抱えて髪の毛を掴みながらラクスに向けて怒鳴りつける。


「おのれおのれラクス! 覚えていろ! この借りは必ず返してくれる!」


 キングメーカーの真上の空が割れて、そこへキングメーカーが飛翔して吸い込まれるように消えていく。


「アンダーユニバースからの刺客は私だけとは思うな! 貴様を消したい奴は山ほど居るんだからな! フハハハハ!」

「ゼヤッ!」


 捨て台詞を放ったキングメーカーを一蹴するかのようにラクスはアストロイドボムを放ち、空のひび割れをキングメーカーごと爆散させて消してしまった。

 

「……ゼワッチ!」


 ひび割れが消えたのを確認したラクスはそのまま上空へと飛び去り、空の彼方へと消えていくのだった。



 

 モンスターを倒して事態を収束した探査隊は事後処理隊に連絡し、到着までの間その場で待機する事になった。


「しっかしあのキングメーカーとか言う忘れ去られた女神さん、アンダーユニバースから来たって言うからめちゃくちゃ身構えたけど大したことなかったよな」

「そうだね、ロイズキングも僕達だけで倒すことが出来たし」

「ボムスキングの最期は私も非常に焦ったが、ラクスのあの技で事なきを得て本当に良かった」

「そう! そうですよ! あの光線なんですけどね!」


 イーライが興奮しながらクォーツパッドを見せた。


「単純計算でスパークルシュートの乗倍の威力なんです!」

「じょ……乗倍⁉」

「はぁ~、その威力なら爆発すら起こさずモンスターを消し飛ばせるのも納得ですね。そういえばリヒトさん、あの技は何て名前なんですか」

「ああ、あれはスパークルカノンって言ってね、ラクスの四形態で最高威力の技なんだ」


 確かにあの凄まじいまでの威力は、輝きの大砲(スパークルカノン)の名に相応しいだろう。


「ラディアンス……どうやら認識をかなり改めないといけないようですね」

「ああ、シンプルが故に様々な状況に対応できるだからラディアンスは強いんだ」


 それだけではない、リヒトにとってラディアンスはソルティアと初めて融合した時に成った形態であり、思い入れの深い姿なのだ。


『君のお陰で、僕は多くの命を守れるんだ』

『こちらこそ、君のお陰で私はもっと強くなれる』


 これからもリヒトとソルティアは共に歩むと、互いに決心するのであった。




 アーブ王国のどこか、薄暗い部屋の一室に足音が響いた。


「キングメーカー、よくものうのうと帰って来ることが出来ましたね。(わたくし)ならばそんな真似は出来ませんよ」

「やかましいグリセラフ! だいたいなんだあのデータは! 何がラクスの全てが入ったものだ、全てでも何でもなかったぞ!」


 オレンジ色のゆったりとしたローブを纏った長身の痩せた男の背後に、眼鏡を掛けた背の低い少年が現れる。

 

「僕が悪いというのですか?」

「その通りだチェアインスペクター! 貴様が集めて分析したデータが不十分すぎたせいで私は負けた!」

「警告したでしょう? あくまであれは現段階のラクスのデータだとね」

「言い訳する気か?」

「醜い争いならば他所でやっていただけませんか?」


 グリセラフに止められたことで、キングメーカーの矛先は彼へと向く。


「だいたいお前の主は何故顔を出さない? 本当に約束を守る気があるのか⁉」

「グリウェは滅多に出歩く訳にはいかなくなりましたからね。ここアーブでは禁教指定されましたから、だからこうして(わたくし)が居るのですよ」

「本当にラクスを倒せば……約束通り名を与えると?」

「ええ、我が主はそのつもりです。ですが早くしなければなりませんよ……なぜならあなた以外にも」


 薄暗い部屋の中で、複数の不気味な気配が蠢いた。


「アンダーユニバースから逃げ出して来た者達は居るのですからねぇ」




To Be Continued.

忘れ去られた神の背後には、やはりあのグリウェが……。

果たして今後、どのような手でラクスやエクスレイドを苦しめるのか、激化する戦いに目が離せません。

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来週もまたこの時間でお会いしましょう!

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