発進! キングアーサー!
不利な状況から何とか抜け出したエクスレイドは、カーミラの打倒に動き始まる。
モンスターを呼び出す力を持つカーミラに対抗するには〝王の城塞〟を開放するほかない!
ミラ、アルフレッド、マティアス、そしてバーンズは〝王の城塞〟解放の為に奔走する。
〝王の城塞〟とは何か、そしてカーミラが残していた恐るべき能力とは?
第三章、ここに完結!
女吸血鬼カーミラによって占拠されたベースキャメロット。
カーミラを追い詰めるエクスレイドだったが、カーミラは秘められた神の力の一端を解放、巨大熊マナランと、怪鳥コレドゥルスを召喚して駆けつけたシエロを磔にして捕えてしまう。
圧倒的な力を持つカーミラに成す術はあるのか、そしてハイポリアの未来の行方は?
シエロを磔にした事で有頂天になったカーミラは哄笑を響かせ、エクスレイドの方を向いて手を手を伸ばす。
「コレドゥルス! マナラン! ベースキャメロットを破壊しろ、丁度いいリフォームだ!」
怪鳥と巨大熊がこちらを向いた途端、足元から光弾が射出されコレドゥルスとマナランを攻撃する。
「なんだ?」
「……まさか、ガレス小隊!」
脱出に成功していたガレス小隊が救援に駆けつけたのだ。
「どうやって私の支配を脱し……ッ!」
眉を顰めるカーミラの目の前に、ケイが現れて強力なサーチライトがカーミラを照らす。
『皆伏せて! 隊長はシールドを!』
クォーツシーバーからイーライの声がし、アイリスがシールドブラスターの広範囲防御モードを起動し、それ以外の者が伏せると同時になんとケイの大型魔術砲が火を吹いてカーミラを砲撃した。
「クゥアッ!」
咄嗟に回避したものの余波で壁に叩き付けられ、カーミラは鋭い犬歯を剥き出してケイを睨みつけて怒りを露わにする。
「貴様……グウッ!」
副砲から光弾が迸ってテラスを滅茶苦茶にしながらカーミラを追い詰め、不利を悟ったカーミラはコレドゥルスとマナランに手で撤退を指示すると、足元に臓物と骨が蠢く空間を形成する。
「すぐに殺してやる! この基地ごと押し潰す!」
何とか危機を脱したエクスレイドが周囲を見回すと、それはそれはひどい光景が広がっていた。
「うわ、ボッコボコ」
「綺麗だったんだけどな、ここ」
景色がよく見え、隊員達の憩いの場であったテラスは今やケイによる砲撃の余波で跡形もなく破壊されていた。
『仕方ないでしょう……こうするしかなかった』
「ゴメンゴメン、助かった。感謝してる」
とはいえシエロは囚われ、支配下から脱したとはいえラウンドナイツはほぼ機能不全、そしてカーミラは逃走という状況は依然として最悪と言っても良かった。
『とりあえず探査隊は引き続きカーミラを捜索し、アルフレッド君はベディヴィア小隊と合流した後、ケイに来てもらいます』
イーライの指示に従い、各々は再び動き出したのであった。
「イーライ、君は何か作戦があるようだが、何を当てにしているんだ?」
「決まってますよ、これから〝王の城塞〟を起動するんです」
「うむ……」
王の城塞という耳慣れない言葉に、ウェンディは首を傾げながらイーライに聞く。
「センパイ……王の城塞って?」
「全てのチャリオッツの頂点に立つチャリオッツだよ。強大な力を懸念してここの近くに封印されてるんだ。すぐに起動できるか……はぁ⁉」
イーライの眉根が寄り、一気に表情に不穏な色が宿る。
「やられた! 連中はベースキャメロットのものだけでなく〝王の城塞〟の起動の為の予備エネルギーまで持って行ってる!」
近くの壁を殴りつけて苛立ちを発散した後、大きく息を吐いて次の一手を考える。
「ベディヴィア小隊に手伝ってもらって……魔的エネルギーの回復を試みましょう。最低限のエネルギーさえ送り込めばあれは十全に動きます」
「それは可能なのか?」
「ええ、エネルギー増幅機能で理論上では一旦動けば向こう三千年は稼働する事が可能です」
とりあえず方針は決まった、一刻も早く〝王の城塞〟を起動してカーミラを打倒しなければならない。
ケイは着陸し、やって来たベディヴィア小隊を迎え入れるのだった。
逐電したカーミラを探し当てるべく、探査隊の四人は再びベースキャメロットを彷徨う事になった。
「一応奴の反応はクォーツシーバーに記録させておいた」
「さすが隊長、準備が良い!」
「しかし奴はどうも壁をすり抜けて自在に移動できる力が……おっと」
リヒトの近くを飛んでいたピースが、急に何処かへふらふらと飛んで行ってしまった。
「何かピースが掴んだみたいですね、すみませんがついて行っても良いですか?」
「ピースと一緒なら大丈夫だろう。ついて行くと良い、ただし何かあればすぐ連絡するように」
「ありがとうございます」
アイリス達と別れてベースキャメロットの外に出てピースを追いかけると、彼は逆さ磔になったシエロの前に居た。
「ピース! お前気を利かせてくれたのか!」
にこりと笑ってあの可愛らしい声で鳴くピースの喉を撫でてから、リヒトはシエロの頭に触れてテレパシーでの交信を試みる。
「オトハ、聞こえる?」
「……リヒト?」
「良かった、生きてはいるみたいだ」
「そうね……でもゼフェルが危ないかも」
オトハ曰く、ゼフェルは長時間の魂の融合に備えてオトハを全力で生かす方向にシフトしており、そのために膨大な力と体力を割いているという。
「なるほど、到底喋れる状況じゃないって事ね」
「心配するなオトハ、ゼフェルは必ず君を守り抜く」
ソルティアはそう励ますと共に、リヒトの手を通してゼフェルにエネルギーを送り込む。
「私からはこの程度しか出来ないが、足しにしてくれ。必ず私とリヒトが君達二人を救い出す」
リヒトがシエロの頭から手を離したその瞬間、途切れ途切れのか細く小さな声で「頼んだぞ」という声が聞こえたような気がした。
「早い所カーミラを倒さないと」
『そうだな、呼び出すモンスターが二体とは限らない、それに神の力の一端とやらがモンスターの召喚のみで終わるとは思えないからな』
ソルティアの指摘にリヒトは頭に指を置いて、大きく息を吐いて考える。
「とりあえずカーミラの行方だね、行くよピース」
ピースは一声鳴くと翼をはためかせ、リヒトの後をついて行くのだった。
「良いですか皆さん、これから向かってもらうのは……」
ベディヴィア小隊に囲まれながら、イーライはクォーツパッドに表示された地図を指しながら話し出す。
「外部エネルギー生成所です」
ベースキャメロットの裏に、魔的エネルギーを生成している場所がある。
そこでは何らかの要因でエネルギー生成が上手く行っておらず、エクスレイドの切り札を出すことが出来ずにいるとのこと。
「あなた達にはキャプテンと共にここへ向かい、障害を取り除いてほしいんです」
「キャプテンはもう大丈夫なんですか⁉」
「俺を誰だと思っている、もう大丈夫だ」
窓から見える外部生成所を見ると、カーミラが作り出すような血と臓物と骨で覆い尽くされていた。
「何アレ……」
「カルンシュタインの子供達、その成れの果てだと思う」
「えっ?」
「俺のようにヤツの胎から生れたダンピールとは違い、奴らは多種族に胚を植え付けて生まれている。実質的にはゲブライカンやマナラン、コレドゥルスと同一の存在だな」
さらりととんでもない情報を言ってのけたアルフレッドに、ミラとマティアスは内心凍り付く。
「心配するな、三人……いや、四人いれば必ず上手く行く」
「そうだぞミラ、マティアス。怖気付いても始まらないぞ!」
アルフレッドの笑顔と、バーンズの力強い激励が二人の心を奮い立たせた。
「そうだよね、今のエクスレイドで動けるのは私達だけ!」
「何が女吸血鬼カミーラだ! こちとら天下のエクスレイドだっての!」
勇んで見せる二人にイーライは微笑み、クォーツシーバーで武装を転送する。
「これ、僕が作った新しい魔術武装のサークルキャノンです。良ければ使ってください」
アルフレッド以外の三人はサークルキャノンを受け取り、心底楽しそうに笑って腰に提げる。
「まずは制御パッドを探してください、キャプテンのクォーツシーバーを使えば〝王の城塞〟を解放する事が出来る」
「感謝します」
「行ってきます」
四人は外部生成所付近に降ろされ、素早く入り口のフェンスに近付く。
「任せろ」
アルフレッドがサーベルでフェンスを切り、中に入ってから周囲の情況を確認する。
「エネルギー生成の回復を優先するぞ、戦闘は最小限だ!」
バーンズの指示で素早く施設内に入ると早速ダンピールが現れた。
「邪魔邪魔邪魔ッ!」
ミラがサークルキャノンでダンピールを吹き飛ばし、全員素早く生成所の奥へと向かう。
「おい! これじゃねぇか!」
マティアスは血と臓物に塗れながらも弱々しい光を放つクォーツパッドを見つけ、腕で臓物を払って操作を始めた。
「ダメだ! 何かがエネルギーを吸ってる!」
「このぐちゃぐちゃのせいだ!」
室内や機器を覆っている血と臓物のせいだろう。
「耳を塞いでろ!」
アルフレッドはそう叫ぶと刀身を撫で、渾身の力で納刀して鍔鳴りを発生させる。
すると鍔鳴りの音波によって周囲の臓物が嫌がるように後退していく。
「今のうちですキャプテン!」
「おう! 俺の後ろは頼んだぞ!」
三人はバーンズの周囲に陣取り、迫るカルンシュタインの子供達や臓物で出来た触手を切り裂いていく。
「消えろッ! 今すぐッ!」
「うおおおおっ! シュナイダー印の武器を喰らえ!」
サークルキャノンから放たれる爆炎と、銀のサーベルの刀身の閃光が薄暗い生成所に瞬き、次々と敵が消滅していく。
「もう少しだ……耐えろよ!」
切り札を巡る戦いは、まだまだ始まったばかり。
一方探査隊は反応を頼りにカーミラの行方を捜していた。
「もうすぐかな」
「近いけど……何だろうなコレは」
場所の特定は出来ているが、それが自分達の居場所と重なっているのだ。
「嫌な予感がする……ちょっといい?」
ヒオが弓を引いて天井に狙いを定め、自分の知覚を頼りに妙な感覚を辿っていく。
「すっ!」
一番濃い部分に向けて矢を放つと、女の悲鳴と共にずるりと何かが落ちてきた。
「カーミラ!」
「見破ったのか、流石だ」
自分に刺さった矢を引き抜きながら、カーミラは三人を睨みつける。
「貴様達ァ! どう見破った⁉」
「バレバレなのよ、あんたのドス黒い気配がね!」
アイリスがクレイモアを抜き、ヴェルクが愛用のハンマーを取り出してカーミラへ向かって行く。
「ハッ! リィアッ!」
カーミラは手を翳して真紅色の火炎を放ち、アイリスは咄嗟にシールドブラスターで防御する。
「この技は魔術か」
そう思ったが何かが違う、あまりにも高威力すぎる。
「……いや違う! 超能力だ!」
魂が高次元に至った者は超能力と呼ばれる超常的な力を扱う事が出来る、いわゆる神と呼ばれる存在も超能力者なのである。
つまりカーミラの言う神の力の一端とは超能力の事だったのだ。
「気を付けろ! 奴は超能力者だ!」
「厄介だが……攻撃が効かない訳じゃないでしょう!」
ヴェルクのハンマーの柄尻の術式が起動してカーミラの下半身を結晶化させていく。
「そのッ……程度でッ!」
カーミラはすぐに結晶化した足を粉砕して回復させると跳躍し、腕を振って衝撃波を放つ。
「くおっ!」
全員即座に回避した後、ヴェルクがメイスのヘッドを、ヒオが雷撃効果を持つ矢をカーミラ目掛けて放つも、天井にこびりついた血と臓物の中に入り込んで回避されてしまう。
「天井に注意を向けろ!」
三人とも上を見上げてカーミラの襲撃に備え、感覚を研ぎ澄ます。
(どこだ……どこにいる……)
皆が天井へ意識を向ける中、その足元の臓物がかすかな音を立てて蠢く。
「シィィィィ……」
カーミラは天井から床に一瞬で移動していたのだ。
そうして一番近くに居たヒオのアキレス腱を狙って手刀を叩き込もうとしたその時、突如腕が爆ぜて吹き飛んでしまった。
「グヌゥオッ⁉」
「残念だったな、バレバレなんだよ」
カーミラの腕を撃ったのは、外から戻って来たリヒトだった。
「リヒト!」
「悪いね、遅くなった」
「このッ! よくも私の腕を!」
臓物の中から這い出すと同時にカーミラは思い切りリヒトへ殴りかかろうとしたが、特殊バヨネットの先端を胴に喰らって感電し、身動きが取れなくなった所でリヒト渾身の踵落としを脳天に喰らう。
「シエロをああした事……後悔させてやる」
カーミラが反撃はおろか反応する隙を与えず、リヒトは執拗に顔面を狙った蹴りを連続で叩き込み、最終的に顎を蹴り抜いて壁に叩きつけてしまった。
「……すげーなオイ」
「ごめん、頭を冷やすべきだったか」
しかしカーミラは強大な力を持つ吸血鬼、外れて砕けた下顎と腫れ上がった顔面を回復させながら、リヒトに向かって怨嗟の視線を向ける。
「おのれ……この私の美しい顔を……男が足蹴にするなど許さない! 考えが変わった! 先に貴様らを抹殺する!」
カーミラは再びマナランとコレドゥルスを呼び出し、地面が大きく揺れる。
「キャメロットが潰れる! 外に出よう!」
ヒオの大声と共に四人は全員外に出て、月夜に光る二組の双眸を確認した。
「ヤベーぞこれ!」
「どうやって倒そ……おお? どうしたピース!」
急にピースがリヒトの肩を叩き、あっちを見ろと訴えている。
「あっちに何か……おい嘘だろ?」
「あれは!」
マナランとコレドゥルスだけではなく、なんと三体目と四体目のモンスターまでもが出現しようとしているではないか。
しかもその新たに出現したモンスターは見覚えのある存在だった。
「ゲブライカンに……カッティダイヤー⁉」
「そういえばファビアンが取引した相手って……」
これで繋がった、ファビアンの取引相手とはカーミラだったのだ。彼の言っていた『エクスレイドは狙われている』とは、もしかするとこの事ではないのだろうか。
「これから四体とカーミラの相手をしないといけないなんて……」
そう思っていたが、なんだか四体のモンスターの様子がおかしい。お互いに近付いてあの血と臓物を纏い、繭を作り出して融合せんとしている。
「フフ……始まったか」
ベースキャメロットから出たカーミラは、両手を広げて宙に浮き、探査隊の面々を見下ろして宣言した。
「悪夢を見せてやろう」
カーミラはドレスを靡かせながら四体のモンスターが作り出した繭の中に飛び込んで融合に加わると、グロテスクな繭から一本の腕が出現して繭を破って新しいモンスターが出現する。
そのモンスターの姿は。
「カーミラと……モンスターが合体した」
大理石の彫刻を思わせる姿となって巨大化したカーミラの下半身は四足の獣のものに変わっており、その獣も前半分は狼、後ろ半分は熊を思わせる姿をしており、更にその背には翼が生えていた。
「カーミラのキマイラ……カーマイラと言った所かな」
カーマイラは自分の姿を見て満足げな表情を浮かべると、醜い笑みを浮かべて腕から槍を生成して探査隊の四人目掛けて叩きつけた。
「うおっ!」
「どわああっ! 危ねぇ!」
「チィ!」
ピースが角から光条を放ったのを切っ掛けに全員が各々の武装で反撃するも、カーマイラには全く効いていない。
カーミラの力によって生まれてしまった超吸血合体モンスターカーマイラ、果たしてエクスレイドはこの強敵に如何にして立ち向かうのか?
そしてカーマイラの様子はケイからも見えてきた。
「なんだよアレ! デタラメすぎるだろ!」
イーライは苛立ちながらパッドを確認し、エネルギーの送信状況を確認する。
「〝王の城塞〟を動かすだけのエネルギーが足りない! このままだと皆が!」
その時、空から一筋の閃光が外部生成所に落ち、数秒して轟音が響き渡った。
「わっ⁉ 雷⁉」
雷は再び外部生成所を狙って落ち、それに伴ってエネルギーが大幅に回復していく。
「この雷……僕達を助けてくれてるのか!」
イーライは咄嗟に窓に駆け寄って外を確認すると、稲光が一瞬だけ裂いた闇の隙間に、巨大な鳥の影か見えるではないか。
「神獣……バリード!」
空と天候を司る神獣が、この窮地に駆けつけてくれたのであろうか。イーライは頭の奥で「がんばれよ」という声を聴いた気がした。
「おうおう、なんだなんだ⁉」
急にバーンズがそんな声を出したため、ベディヴィア小隊の三人の背筋が凍り付く。
「キャプテン⁉」
「何かあったんすか!」
「いや、いきなりエネルギーが急激に回復してな、むしろいい事かもしれん」
その後すぐにエネルギーは所定値に至り、バーンズは三人の肩を叩いて近くの転移装置を指した。
「行くぞ! ついて来い!」
バーンズと共に転移すると、そこは薄暗い空間が広がっていた。
「イーライ、俺だ。無事に〝王の城塞〟へ転移したぞ」
『無事に出来ましたか! 既に手筈は整っています。あとはあなたの一声です』
バーンズは薄暗い部屋の中にあるスイッチを押すと、いきなり灯りが点いて三人は思わず目を顰める。
「キャプテン、王の城塞って一体……」
「これはエクスレイドの切り札にして、究極のチャリオッツだ! 今日この日をもって、初めて戦いに臨む!」
各部が大きく揺れると共に、バーンズは牙を剥き出してその名を叫んだ!
「発進ッ! キングアァァサァァァァアアアアッ‼」
カーマイラの暴れぶりに成す術無しと思われていた最中、突如ベースキャメロットが揺れ出し、その背後から巨大な影が出現した。
「なんだアレ! せ……戦艦⁉」
「あれは確か〝王の城塞〟!」
突如現れた謎の戦艦について何か知っているらしい様子のアイリスに、皆の視線が集まる。
「あれは究極のチャリオッツとして設計されたが、あまりにも強力であるが故に封印されていた魔術兵装……フォートレスチャリオッツ・アルトリウス!」
アルトリウスは船首を向けると、困惑しているカーマイラに向けて一斉に砲撃を始め、あっという間に体を穴だらけにされてしまう。
『探査隊! その場から離れるんだ! 今から特大の一撃を撃つ!』
バーンズに従って離れた直後、アルトリウスの先端の主砲に膨大なエネルギーが集まって青白い熱線が放たれ、カーマイラの胴を抉って撃ち抜いてしまった。
「……すっげぇ、究極のチャリオッツって言われるだけはあるぜ」
「イーライって何でも作れるのね」
しかしこの一発を食らわせた事でカーマイラは怒り狂い、撃ち抜かれて消滅した部位を回復させると、体の一部からマナランとコレドゥルスを分離させて差し向けてきた。
「あいつどんだけ能力を隠し持ってるんだよ!」
アルトリウスの中でその圧倒的な威力を見て呆然としていたベディヴィア小隊を、バーンズが振り返って言った。
「お前達、ここの下にチャリオッツがある。それに乗って出撃しろ」
「新しいチャリオッツですか?」
「ああ、このアルトリウスを究極とするならば、あれは最強のチャリオッツだ」
「最強のチャリオッツ……それって私達に乗りこなせるんですか?」
バーンズはしっかりと三人の目を見て静かに告げる。
「お前達は新人ながら、ここ数ヶ月のうちに始まった巨大モンスターとも渡り合っている。お前達の実力ならば必ず乗りこなせる……それに!」
バーンズは三人と肩を組み、牙を見せて力強い笑みを浮かべてから言った。
「お前達がやらずして誰がやるんだ!」
その通りだ、やれる事を全てやり切るしかないのだ。
「分かりました……行きます!」
「最強のチャリオッツがなんぼのもんじゃい!」
「必ずカーミラをこの手で!」
バーンズに見送られた三人はコックピットに乗り込むとチャリオッツを起動し、機体の名を確認する。
「ボールス……」
「パーシヴァルか」
「ガラハッド……成程、最強のチャリオッツって訳ね」
聖杯探索を成功させた騎士の名を冠し、バーンズをして最強と謳われるチャリオッツの力とは如何ほどのものなのか。いちパイロットとして三人の胸の中に熱いものが滾る。
「よし、行くよ皆!」
「ああ!」
「おう!」
「ベディヴィア改め、グレイル小隊! 出撃ッ‼」
ミラのガラハッド、アルフレッドのパーシヴァル、マティアスのボールスがアルトリウスから発進し、凄まじいスピードで三体のモンスター目掛けて突進していく。
「うおおおおっ! 速ェ! とんでもなく速ェ!」
ボールスのスピードに感動しながら、マティアスはマナランとカーマイラを攻撃する。
「スピアショット!」
パーシヴァルから放たれる槍型の光弾がカーマイラの顔の右半分を抉り、更にコレドゥルスの尾羽を焼き尽くす。
「さてさて、あんたは何が出来るのかな……これは!」
ミラがレバーを押し込むとガラハッドの機体表面が魔術シールドに覆われ、このままスピードを上げてコレドゥルスに突っ込んで吹き飛ばし、地面に叩きつけてしまった。
「すっごい、さすが最強のチャリオッツ!」
アルトリウスとグレイルズの様子を見ていたリヒトは、皆に気付かれないようにゆっくりとその場を離れた。
「僕も負けてられないな、行こうソルティア」
『ああ、エトワールだ!』
エトワールジェムをスパークルトランサーに装填したリヒトは、左手にエトワールレットを出現させて詠唱を始める。
「宇宙の闇、星の光。それらを繋ぐは願いの力、星を我が手に! エトワールッ‼」
リヒトの魂がソルティアと融合し、徐々に体が大きく強く変わっていくのを感じた。
ガラハッド、パーシヴァル、ボールスに加え、エトワールギアを纏ったラクスも出現し、エクスレイドは一気に沸き立った。
「ラクスだ! ラクスも来てくれた!」
「完全に追い風だよ! このまま攻撃を続けよう!」
ラクスは逆さ磔になっているシエロの方を向くと、念力で浮かせた後にレイストライカーを連射して骨で出来た拘束具を破壊し、シエロを完全に開放する。
「ムウンッ! ジェッ!」
「ゼッ! フワッ!」
ラクスはシエロにエネルギーを送ってから頷くと、同時に構えてカーマイラに向かい合う。
「ウワアアアアアッ! アアッ! ラァッ!」
一気に敵が増えた事に苛立ったカーマイラは槍で星の戦士達を指してマナランとコレドゥルスを差し向けた。
「ゼッ!」
「ジェイヤッ!」
ラクスはエトワールアイギスをマナランの顔面に叩きつけ、シエロは飛行してアストラルハルバードでコレドゥルスに斬りかかる。
「フッ! ゼイヤッ!」
マナランのカウンターパンチを受け流しながらラクスは背負い投げして頭を地面に叩きつけ、シエロも先程のリベンジだと言わんばかりに高速でコレドゥルスの周囲を飛び回って翻弄する。
「ラクスとシエロが熊と鳥を引き付けてくれてるぜ! 今のうちにカーミラをやるぞ!」
「おう!」
「OKマティアス! 行けガラハッド!」
グレイル小隊はカーマイラの周囲を飛び回り、最強と謳われるチャリオッツの武装全てを駆使してカーマイラに攻撃を叩き込む。
「ウウウッ! ヴアッ!」
槍を振り回したり、各モンスターの能力を使って高圧血液水流や羽根を射出したり、火炎を放ったりするものの、圧倒的機動性を持つ最強のチャリオッツは容易く全てを回避してしまう。
「確かに攻撃は効いているが、徐々に回復されては焼け石に水だ!」
アルフレッドがそう言った時、ケイから通信が入った。
『皆さん、聞こえますか? イーライです』
「どうしたんですかシュナイダー?」
『今君達が乗っているグレイルズには更なる形態があります。その形態を開放すればカーマイラを再生すら許さず一網打尽にする一撃を放てます』
イーライから齎された情報に、三人の目が見開かれる。
『隠しレバーを引けば形態が解放されます。それでは頼みましたよ』
三人はイーライの指示通りレバーを探すと、確かにそれは存在した。
「やるよ!」
「おう!」
「ああ!」
三人同時にレバーを引くと、それぞれの機体から魔導チェーンが伸びて三機を連結し、何とそのまま合体して一つのチャリオッツになってしまった。
「合体! 合体したぞ‼」
「これが真の最強チャリオッツか」
「なんか私まで力が湧いてきた! みんな飛ばすよ!」
ついに勝負も大詰め、グレイルズは悪魔の如き形相を浮かべるカーマイラ目掛けて突っ込んでいった。
「ゼファッ!」
「ジェヤァーッ!」
モンスターと星の戦士達との戦いも、決着がつこうとしていた。
「オトハ! コレドゥルスがこちらに突っ込んでくるぞ!」
「だったらこれね!」
バレットレイルのチップを装填し、モンスターの力をその身に宿す。
シエロはアストラルハルバードを構えると、その場で旋回しながらこちらへ向かって来るコレドゥルスへ猛スピードで突進し、真正面から打ち破って切り裂き、粉微塵にして爆散させてしまった。
「シヤッ!」
そしてリヒトとソルティアの方もマナランとの戦いを終えようとしていた。
「毛皮が厚かったから大変だったぜ」
「だがもういいだろう、決めるぞリヒト」
エトワールレットにラディアンスジェムを装填し、ジェムの力を胸のあたりに集中させる。
「シンボルフラッシュ!」
ラクスは腕を回して胸の前で交差させると、メテオシンボルから強烈な光を放って満身創痍のマナランを完全に焼き尽くしてしまった。
「オトハ、ゼフェル、三人のサポートに行くぞ」
「合点!」
グレイルズと一進一退の攻防を繰り広げていたカーマイラだったが、そこにラクスとシエロが駆け付けた事で恐怖の相を浮かべた。
「奴を縛り付ける!」
「だったらこれね!」
エーテルバーストジェムとラバノギチップの力を発動したラクスとゼフェルは、光の環と縄でカーマイラの四肢を縛り付け、身動きを取れなくしてしまった。
「ゼッ!」
「ジェアッ!」
「ラクスとシエロがお膳立てしてくれた!」
「俺達も行くぞ!」
グレイルズが最終攻撃の準備を整えている最中、バーンズも最後の攻撃に備えていた。
「俺もやるぞ……ベースキャメロットを滅茶苦茶にし、俺の部下を危険に晒した礼をしてやろう」
バーンズはカバーがついたレバーを押し上げ、アルトリウスの最終兵器を起動する。
「アアッ! ウウラッ! ガアアッ!」
最早喚き続けるだけの獣になったかつての母親を見て、アルフレッドは操縦桿を握り込みながら冷静に照準を定めた。
「お前の野望は叶わない、俺が……俺達がここでお前を止める!」
「エネルギー充填完了! いつでも行けるぜ!」
「最終突撃解禁……ロンギヌスインパクト!」
グレイルズの機体表面に魔術シールドが張られると同時に、表面を三機の魔術炉心の連結から生み出されるエネルギーが覆い尽くし、機体自体が一本の槍の如く軌跡を伸ばしていく。
「「「行けぇぇぇええええっ!」」」
ロンギヌスインパクトがカーマイラの体に風穴を開けた直後、すかさずバーンズが畳み掛ける。
「エクスカリバーキャノン! 発射ァッ‼」
アルトリウスの主砲から青銀色の光条が迸り、カーマイラの全身を焼き尽くす。
「グヌァッ……ギャアアアアアアアアアアアッ!」
醜い断末魔を残し、ハイポリアの征服を目論んだ女吸血鬼は遂にこの世から完全に消え失せたのだった。
戦い終わって白み始めた空を背に、アルフレッドは銀のサーベルを抜いて刀身を眺めた。
「フン……」
アルフレッドは一息ついてから長く伸びた金髪を左手でひとまとめにして掴むと、サーベルでざく切りにしてしまった。
「なんか勿体ないな、あんたの髪綺麗だったのに」
「カーミラに斬られた所を揃えたかったのさ。それに全部終わったら急に雰囲気を変えたくなってきた」
「まあイメチェンも悪くないんじゃないの? 心機一転! って感じでさ」
「それもそっか、ずっと心残りだったことは解消できたんだもんね」
心無しかアルフレッドの顔はいつもより柔和で、晴れやかなものになったいた。
「ミラ、マティアス」
「うん?」
「何?」
「俺の出自の事で迷惑をかけてすまなかった。こんな俺の事を最後まで仲間だと信じてくれて……そして最後まで一緒に戦ってくれて感謝してる。本当にありがとう」
しおらしい様子のアルフレッドを見て笑い出したミラは、彼の肩を拳で叩いてさも当然と言った風に返した。
「最後まで一緒に戦うのは当たり前じゃん!」
「だって俺達、仲間だろ?」
過去からやって来たかつてない脅威を乗り越え、再びその絆の強さを再認識した三人を見て、バーンズとアイリスが微笑む。
「本当に良い部下を持ちました」
「ええ、彼らなら我々も安心して背中を任せることが出来ます。これからもあなた方の〝目〟として、共に戦って行きましょう」
皆が無事に事態が収束した事を喜ぶ中、リヒトは停泊しているアルトリウスを見上げていた。
「こんなもの造ってたとはね」
『運用に慎重になるのも頷けるな』
「危ない事にならないと良いけど……まあ皆なら安心か」
『そうだな、皆を信じて見守ろう』
この時、まだ皆は知らなかった。アルトリウスの登場により、ハイポリアで繰り広げられているモンスターとの戦いに大きな動きがある事を。
それを語るには、まだまだたくさんの物語が必要になるだろう。
To Be Continued.
第三章、ラウンドナイツの隊員達にスポットを当てた章でございましたが、いかがでしたでしょうか?
次章からエクスレイドに変化が起こります、アルトリウスも活躍しますよ!
感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。
ではまた第四章でお会いしましょう、また来週!




