新たなミッション
ハイポリアの五国の首脳が集って会議が行われ、モンスター災害が激化している事が明かされる。
そしてアーブ代表であるケンドリック王は他国の代表へある提案をする。
それはエクスレイドの新たな冒険の幕開けであった。
夢境に存在する大陸ハイポリア。その国の一つであるアーブではベースキャメロットが占拠された一件を切っ掛けに、新たな対モンスター兵器であるフォートレスチャリオッツ・アルトリウスを導入する事となりました。
このアルトリウスの登場によって、ハイポリアにおける巨大モンスターとの戦いは新たな局面へ向かう事になります。
ここからはアルトリウスを得たエクスレイドの、新しい戦いの物語です。
これからあなたの心はその体を離れ、この空想と幻想が入り混じる世界へ入っていくのです……。
アーブトピアの王宮にて、国王ケンドリック四世は応接間の灯りを落としてからデバイスのスイッチを押し、その時が来るのを待った。
「始まったようだな」
まるで円卓を囲むような形で様々な者達の立体映像が投影され、すぐに定例時刻がやってきた。
「揃ったようですわね」
「始めましょうか」
ここに居る者の人数は丁度ハイポリアに存在する国の数と一致する。
そう、今ここで行われているのは国の指導者間で行われる会議なのだ。
「まずは自国の現状について一国一国述べていただきましょう。ではベトゥリア代表として私から」
ベトゥリア王国の代表は、第一王女のナジェズダ・ゴルジェーエヴナ・トゥルビナことナージャ。
弱冠二十三歳という最年少ながらも立派に国事をこなしている様子に、ケンドリックは敬意すら覚える。
(凶獣の夜であんな事があったというのに……)
凶獣の夜とは、九年前にハイポリアで起こった史上最悪のモンスター災害の事である。
なぜこの一件が史上最悪と呼ばれているのか、それは純粋な被害以上に、その犠牲者がハイポリア全土に影響を与えるものだったからである。
凶獣の夜が起こったのはベトゥリア王国の首都パンセーリ、当時そこにはベトゥリア王とその妃だけではなく国賓としてハイポリアの全ての国の最高指導者と、ホワイト・アールヴの代表たる「アルディバの使者」が招かれ、会議の前のパーティーが開かれていた。
そこへ当時最大級だった四十メートル級のモンスターが突如襲撃、会場に居た者は全員命を落とした。
一夜にして国の最高指導者を全員失ったハイポリアは大打撃を受け、アーブを含めて立て直すのに相当な時間を要した。
こうして立体映像越しに会議を行うのも凶獣の夜のような事態を避けるためだ。
そしてこの一件で父を失ったケンドリックは、以前から父と話し合っていた国営の対モンスター災害組織を結成する事を決意し、事件から四年が経った日にエクスレイドが設立されたのである。
(それに彼女は確か……)
ナージャは両親を失い、本来なら王位に就く筈であった。
だが先王ゴルジェイは遺言で弟の末子ミハイルを指名しており、彼女は王になることが出来なかったばかりか、十四歳で妹のラウラとミハイルと共に子供達だけで生きていく羽目になったのだ。
そんな逆境にめげず、彼女は貴族や議会の助けを借りて勉学の傍ら政治や国事にも関わり始め、今では立派に国家代表を務め上げている。
その凛とした美貌や高い知能も相俟って、国内外で彼女を慕う者は多い。
「ありがとうございます。ではアーブ代表、ケンドリック王」
自分の名が呼ばれたことで意識が現在に戻り、ケンドリックは立ち上がって始めた。
「実は最近、エクスレイドの基地の一つが襲撃されましてね」
この衝撃的な切り出しに、全員驚いた様子で議会の場はざわつき、それが収まりつつあるのを確認してからカーミラの一件を語って聞かせた。
「カーミラが! まさか生きていたとは……」
カーミラの拠点が存在していたギルモアスの代表である国王の表情は他の代表以上に驚きに満ちていた。
「かつてはハイポリア全土で暴れていた危険人物ですから、選りすぐりの精鋭たるエクスレイドでも大変苦戦したそうでしてね。ですが、封じられていた魔術兵器を用いて見事カーミラを撃破したそうです」
やはり対モンスター対策においてはアーブが頭一つ抜けている事を認めざるを得ないと、各国の代表は内心唸った。
「というのが、最近あった出来事でして……これを機に私から一つ提案したいことがあります」
その一言で自分の方へ一斉に注目が集まるも、それを意に介さずケンドリックは続けた。
「皆様方のご報告にもあった通り、近年はモンスター災害の激化だけでなく、モンスターを利用したテロ行為が各地で行われている事が確認されています。これには事態が起こる度に対応していては後手後手に回り続け、根絶の道は遠く、組織の増長が懸念されます」
事実として炎の道はアーブで危険組織扱いとなり実質的な禁教に指定された後、アーブ以外でも暗躍や御使を差し向けるといった行為を続けている。
「これ以上ハイポリアを荒らされないために、どうでしょう? ここで一つ国家を超えた協力関係を結ぶというのは」
国家を超えた協力関係と聞いて、代表たちに小さなざわめきが起こる。
「ケンドリック王、協力関係とは具体的に何をなさるのですか?」
ケンドリックはスイッチを押し、会場にフォートレスチャリオッツ・アルトリウスの立体映像を投影してから言った。
「エクスレイドを派遣いたします。あなた方の国にね」
「という事らしい」
ベースアヴァロン探査隊指揮所で、アイリスはここ数日出回っていた噂の出典を話した。
「つまりこれ、国外出張って事ですか?」
「まだ私の所には話は回って来てはいないが、結局はそうなるだろうな」
エクスレイドが他国に派遣されるかもしれないという噂は、定例会議の後から徐々に広がり始めていた。
前々からケンドリック王は先王の悲願であったハイポリア全土における対モンスター災害組織を設立するべく動いていたと聞いている。
そこにアルトリウスが登場した事で、多くの戦力をローコストで遠距離に届ける事が可能になった。
「ケンドリック王としては、今がエクスレイドを売り込むチャンスだと考えたみたいだな」
「そうだなァ、まあ俺らとしても本格的に胡散臭い連中を叩けるチャンスかもしれないからな」
カーミラの戦いの後、イーライがぽつりと漏らしたことがある。炎の道以外に、モンスターを繰って暗躍している組織が居ると。
「森の居住権を叫んだファビアンの組織にバックアップを行った者やカーミラに超能力を授けた者、そしてルイス・ゲーナーを〝処理〟した存在……これらがどうも僕には同一の存在が動いているように思えるんですよね」
「それも炎の道と忘れ去られた神々以外の?」
「ええ、それが何なのかは僕自身まだ分かりませんが」
もしかしたらそういった存在について、この国外での任務をこなすうちに実態が掴めてくるかもしれない。
「そういえば現実世界に居たリヒトはともかく、ここに居る者は殆どアーブ以外の出身だったな」
ヴェルクはトゥルム、ヒオはアールヴの森、そしてアイリスはギルモアスの出身である。
「出身地とアーブ以外で国外に行った事が無い者はどれぐらい居る?」
リヒト、ヒオ、ウェンディ、そしてアイリスが挙手をした。
「そうか、もしこの任務が正式に下されたとしたら、きっと勝手がわからない事だらけになると思う。しかし国を超えてもモンスター災害に苦しむ人々や、それに抵抗する人々の思いは同じだ。色々不安もあるだろうが、支え合って乗り越えていこう」
アイリスの鼓舞に、皆の心に熱いものが込み上げてくる。
「了解です!」
「外国だろうとドンと来いだぜ!」
「言われてみればちょっとだけ楽しみになって来たかも」
笑顔の裏で、リヒトはぼんやりと未来の事を考えていた。
昼休み、リヒトはテラスの手摺に体を預けてドリンクを飲みながら、自分の中に居る〝相棒〟に語り掛けた。
『いよいよエクスレイドも外国に進出か』
『どうする? そこでも戦うのか?』
『まあ……戦う事にはなるだろうね』
当然リヒトを含めた探査隊は国外任務へついて行く事になるだろう。
この場合、オトハを残して任務へ行く事になる。
『まあオトハなら大丈夫だと思うけどさ』
なんだか心配な気持ちが拭えない。ただナーバスになっているだけだろうが。
『そういや僕らが他国に行ってる間にアーブはどうするんだろう』
チャリオッツはどうするのだろうか、アルトリウスはチャリオッツを全機収納する事が出来るらしいが、全部持って行くのだろうか。
『さすがにアルトリウスは小隊ひとつ連れて、あとは残して行くのかな』
どんな感じになるのだろうとあれこれ考えていると、クォーツシーバーにメッセージが入った。
「なになに……え⁉ 王宮に招集⁉」
なんと探査隊全員が王宮に呼び出され、全員正装で向かった所、意外な事にケンドリック王だけでなく、その妃のマリエットも待ち構えていた。
「ケンドリック王、マリエット王妃、お久しぶりです」
「ああ、楽にしてかけてくれ」
しっかり人数分、そしてその体躯と合った椅子に腰かけたのを見て、ケンドリックは切り出した。
「エクスレイドの国外派遣については聞いているな?」
「ええ、ですが正式にはまだ」
「そうか。まあ国外任務はほぼ確定で話が動いている、近いうち正式な勅令が出るだろう……それに伴ってマリエットから頼みがあるそうだ」
今回探査隊を呼んだのはケンドリックではなくマリエットらしい。
「集まってくれて感謝するわ。あなた達はエクスレイドのあらゆる活動において先行して動く役割を持っているが故に、屈指の実力者が集う精鋭集団と聞いているわ」
「いえ、そんな事は」
謙遜してみるが、事実たった六人だけでチャリオッツの力を借りずに三十メートル級モンスターを撃退できる者達は、探査隊の他には居ない。
「そんなあなた達の力を見込んでの頼みたい事があります」
マリエットからの頼みと聞いて、ほんの少しだけ緊張が走る。
「ハイポリア各地に居る神獣を目醒めさせてほしいの」
その無茶振りとも取れる頼みに、六人は思わず面食らってしまった。
「そんな……」
「俺達の手で……ですか」
「私が元々どんな人間だったか知っているでしょう?」
確かマリエットはハイポリアの神獣を信奉する一族の長女だった筈だ。
「確か、神獣の巫女でしたか」
「ええ、そうよ。私の〝実家〟と連絡を取ったのだけど、この現状を打破するには神獣の力が必要よ」
「それには同意する部分はありますが……神獣の覚醒の手伝いなんて僕達に出来るでしょうか?」
リヒトの問いにマリエットは優しく微笑んでから答える。
「バリードとメルギを味方につけ、怒るデルゴラスを宥めたのはあなた達じゃない」
「いやでもデルゴラスに関してはラクスが居たからで……」
「でもラクスだけではどうにもならなかった、私はそう思っているわ」
確かにそれもそうだ。
それに炎の道がメルギの生命エネルギーを吸い取っていたように、他の神獣にも同じような事をしているかもしれない。
「分かりましたマリエット王妃、完全覚醒の確約は出来ませんが、現地に行った際には神獣とのコンタクトを取ってみます」
王宮から戻り、任務も終えたその日の夕方。
「そんな感じでやる事増えちゃったのよ」
「あらららら、すっごい大変そう」
マギ横の個室のステーキハウスで、リヒトは国外任務とマリエット直々の頼みをオトハに話した。
「エクスレイドとしての任務と、王妃様のお願いと、星の戦士としての戦い……想像しただけで身震いするよ」
「いやいや、オトハの方も大変だよ? 僕が居ない間、君は一人で戦わないといけないんだから」
「まあ大丈夫でしょ、エクスレイドも居るし」
「そう言って磔にされたのは誰かな?」
「ウッ……気を付けます」
これからは二人に取って試練と挑戦の連続になるだろう事は容易に想像できた。
「でも本当に大丈夫だよ、こう見えて毎日ゼフェルと一緒に鍛えてるんだよね」
「そうか……でも不安だなぁ」
「ぶぅ……それってリヒトが国外任務に不安抱いてるだけなんじゃないの?」
「核心突いて来るなぁ……そうだよ、不安だよ、色々とね」
「まあそうだよね、アーブ以外の所行くの初めてだもんね」
力なさげに笑うリヒトの鉄板に、オトハが切り分けた肉を置く。
「らしくないぞ~」
「そうだね、自覚してる」
「半年前と違って、リヒトは生きてるって分かってるからさ、離れてても心は繋がってるでしょ。それが分かってるから私は大丈夫だよ」
フォークに刺した肉をひらひらとさせながら、オトハは歯を見せて笑って見せ、リヒトの心の内の靄が晴れていく。
「わかった、それじゃあ僕の居ない間のアーブを頼むよ」
オトハがガッツポーズをして見せ、リヒトがサムズアップを返すのであった。
エクスレイドの国外派遣が正式に決まった翌日の事、国民の間で賛否の声が飛び交う中、アイリスが皆に告げた。
「喜べ皆、早速国外任務が始まるぞ」
沸き立つ皆のクォーツシーバーに、アイリスは情報を共有する。
「正式な発表をしたところ、真っ先に派遣を依頼したのがここだった」
「ここは……」
「俺の故郷じゃねぇか!」
トゥルム、大火山グレートブルカを背に抱く、多くの巨人族が住まう雪国である。
「いよいよ国外任務の本番だ、各々分からない事だらけだろうが、気を引き締めて事に当たるように」
いよいよ正式な国外任務が始まる。この先に何があるのか、それはまだ分からない。
しかしどこへ行ってもエクスレイドの使命は変わらない、モンスターと戦い、そして命を守るのだ。
「さて……何が起こるのかな」
エクスレイドとラクスの新しい戦いが幕を開けた。
To Be Continued.
第四章、いきなり波乱の展開です。
エクスレイドは国外へ飛び出します、最初はヴェルクの生まれた国トゥルム。
果たして何が起こるのか、トゥルムに居る神獣とは?
第四章始まったばかりです、お楽しみに。
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ではまた来週お目にかかりましょう。




