愛しい君へ
キャプテンバーンズの様子がおかしい⁉
なんと義理の娘エルーシアの学校の芸術祭へ向かうべく準備をしていたのだ。
最近ぎこちない親子間、そんな中、芸術祭をモンスターが襲う!
親子の絆が試される!
ある日のベースキャメロット、この日かなり珍しい事が起こっていた。
「ねえ」
「どうした」
ミラがアルフレッドに顔を寄せ、この珍事について問いかける。
「なんでバーンズ隊長余所行きの格好なの?」
「……さあ?」
バーンズは余所行き格好をしているだけでなく、なんだかそわそわしている。
「どうも挙動不審だな、まるで何かを待ち遠しくしているような……」
「もしかして……デート?」
「デートかぁ……あり得そうだな。キャプテンにも遂に春が」
バーンズは独身と聞いていたが、近頃良き出会いでもあったのであろうか。
二人して首をひねっていると、後ろをランスロット小隊のコレットが通りかかった。
「ああ、コレット先輩」
「んん? どうしたの?」
「ホラ……アレ」
ミラがバーンズを小さく指差し、コレットも察して小さく頷く。
「アレどうしてなんですか?」
「さあ……なんでだろうね」
ラウンドナイツでもそこそこの古参であるコレットでも理由は知らないようだ。
「デートに行くのかな、とうとう独身脱出?」
「違うわよ」
後ろからパロミデス小隊のサーリヤがやって来て、首を振りながら否定する。
「え、サーリヤさん何か知ってるんですか?」
「ええ、今日は娘さんの学校の芸術祭でね、演劇クラブで創作劇を披露するのよ」
「ああ、演劇クラブの……っては⁉」
「むすっ……娘ェ⁉」
エクスレイド攻撃隊『ラウンドナイツ』隊長、キラヴ・バーンズのまさかの情報に一同激震が走る。
「むす……娘さん⁉」
「娘……居たんだ」
「そもそも結婚してたんだ……」
「いいえ、あの人は独身よ」
こんがらがって来た、婚外子ということだろうか?
「一体どういう事なんですか」
「まあキャプテンとエルーシアちゃんの事は知ってても損はない話だから、話してあげるわ」
それはエクスレイドが今の形になる前の事。
国営になる前のエクスレイドは、ハイポリア中を旅して回って遺跡やダンジョンを探索してさまざまな学問分野に貢献したり、モンスターを倒して日銭を稼ぐ一介の冒険者パーティーであった。
「えっ⁉ そうだったんですか!」
「そう、多くの人々が参加しては抜けて行ったけど、一度正式に解散するまで結成メンバーだけは変わらなかった」
「もしかしてバーンズ隊長って……」
「そうよ、今の形のエクスレイドに残っている唯一のオリジナルメンバー。それがバーンズ隊長よ」
そんな経歴があったとは驚きである。
「どうして解散したんですか?」
「……エクスレイドを悲劇が襲ったの」
リーダーのルッツと副リーダーのディアナの夫婦が、モンスター災害に巻き込まれて死亡したのだ。
これを受けリーダー代行となったバーンズはエクスレイドを一旦解散して故郷のエフェル・スタンドに帰郷するも、国営の対モンスター災害組織を作る事を決意した現国王ケンドリック四世直々の来訪を受けてその熱意に打たれ、友の死を無駄にさせないという決意からエクスレイドの設立に関わったという。
「キャプテンにそんな過去があったとは……」
「全然知らなかった」
「最初エクスレイド設立にあたってのアドバイザーとして来たっていうのは知ってたけど、そういう経緯があったなんて」
「それに給料のいい仕事も必要だったのよ……友人の忘れ形見を育てる為に」
そういう事だったのか、バーンズは旧エクスレイド時代の仲間にして友人でもあったルッツとディアナの娘であるエルーシアを養子として引き取って育てていたのだ。
「でもキャプテンって結構忙しい人ですよね? 今までよくやってこれましたね」
「旧エクスレイドの仲間が手伝ってくれてるみたいね。まあ私とかクリフとかラファエロみたいな古株は、何回かエルーシアちゃんのお世話手伝った事あるけどね」
支えてくれる仲間が居るのもきっとバーンズの人徳なのだろう。
「まあでも思春期に入ってから、コミュニケーションが上手く行かない事も増えたみたいね」
「娘さんの種族って……」
「クオータブリードね、三対一で人間と妖精の」
バーンズは虎の獣人である、まるっきり種族が違う子供を育てるのはさぞ大変だろう。
「それにエクスレイドの花形の隊長の養娘っていうのも……プレッシャーすごそうだしな」
「ああ、確かに。思春期の女の子だったら遠慮とかしちゃうかもね」
常にどのような事態に遭っても動じず、大胆かつ的確な指示を与え皆を引っ張ってくれるバーンズに、娘との関係に悩む父親としての一面があるとは思いもしなかった。
「そろそろか……クリフ、ラファエロ、サーリヤ」
バーンズが三人を呼びつけ、小声で短く告げる。
「ウェニュス座に行って来る……何かあればお前たち三人が頼りだからな」
「任せてくださいよ」
「留守は預かります」
「偶には娘さんと親睦を深めてゆっくり羽を伸ばしてくださいな」
端に居たサーリヤとラファエロの肩を掴んで信任を現すと、その場から立ち上がって言った。
「み、みんな! すまないが所用でこのあと一日外す。何かあればクリフとラファエロ、そしてサーリヤを頼るように。よろしく頼むぞ!」
ラウンドナイツ指揮所に「了解」の声が響き、全員温かい目でバーンズを見送るのだった。
「ふぅ……」
自分の魔導車のハンドルを握り、バーンズは大きく息を吐き出す。
「記録水晶は……あるな、魔力量も十分。よし、行くか」
ベースキャメロットからアーブ第二都市ヴァングリ・ラへ向かい、想定より少し早くウェニュス座に到着したため、美術クラブが作った絵画や彫刻が展示されている劇場内のギャラリーを適当に見て回ろうと思い立った。
「綺麗になったな」
数ヶ月のリニューアル工事を終えたウェニュス座はすっかりぴかぴかである。
新しいウェニュス座の様子を見ていると、前から歩いてきた少女達とぶつかりそうになる。
「あっ! ごめんなさ……」
「おっとっと……大丈……ん?」
「えっ? あっ」
なんという偶然、ぶつかりそうになった相手は娘のエルーシアとその友人達であった。
「エルじゃないか」
「お……お父さん、来てくれたんだね」
「あ、ああ! 当たり前じゃないか、娘の晴れ舞台だからな」
近頃家でエルーシアとは朝と帰りの挨拶に加え、二言三言話すぐらいであったため、少しぎこちなくなってしまった。
「あ……ありがと。たっ、たのしんで……ね」
「あ、ああ。頑張れよ」
娘と別れた後トイレの個室に向かい、頭を扉に押し付ける。
「くぅ……もっと気の利いたマシなことを言えば良かった」
別に見栄を張っている訳ではないが、近くに居る娘の友人達には何と思われただろうか。
今頃娘と一緒に陰口でも言われているのではないかと想像すると悲しい気持ちになってくる。
「いやいやエルに限って……うぅ……」
エルーシアぐらいの年齢の娘を持つ別の隊の者と話した事があるが、相当はねっかえりらしく直接罵倒が飛んで来ることがあるらしい。
「……いや、エルはそんな子じゃない。あの子は誰よりも優しい子だ」
父に似て心優しくて気遣いが上手く、母に似て美人で曲がったことを嫌う、そんな子を誰よりも目の前で見てきたのは他ならぬ自分ではないか。
手を洗って残った水分で顔の毛並みを整え、バーンズは劇場へ戻るのだった。
一方その頃アーブトピア、ベースアヴァロンの探査隊指揮所では。
「それで? そいつが新しいモンスター?」
「いいえ、まだそういう断定はできません。ですが僕の見立てではその可能性が非常に高いと見ています」
クォーツモニターにはハイポリア大陸の地図が表示されており、その真上を赤い点が旋回している。
今朝あたり、突如巨大な反応がハイポリア上空に謎の反応が検出され、空中を旋回しながら徐々にスピードを上げているのだ。
「この調子でスピードを上げていけば、最低でも四時間と三十分後にはアーブ上空に到達、その後数分以内には首都アーブトピアに到達し、その凄まじい余波と衝撃で壊滅的な被害が出るでしょう」
「その前に叩いておきたいな」
「どこかで勢いを殺す為に一発そいつに叩き込んで誘導できないかな」
アイリスは考えた末、万年筆を唇に押し当て、立ち上がって言った。
「その案で行こう。対象を超遠距離から攻撃し、ポイントF3に誘導して駆除。人口密集地で被害を出すわけにはいかない。作戦開始!」
探査隊はケイへと向かい、まだ見ぬ謎の存在へと立ち向かって行くのだった。
探査隊が出動した事は露知らず、バーンズは関係者席に案内され、記録水晶の調子を確認した後でマーカーを引いたプログラム表を確かめる。
「エルの出番は……かなり後の方だな」
芸術祭はエルーシアが所属する演劇クラブだけでも、複数の班に分かれてそれぞれの創作劇を披露するだけでなく、合唱団やバンドグループといった音楽分野での発表も含まれている。
「まあ偶にはこういうのも良いだろう。心を砂漠にしてはいけない」
ベル砂漠の遊牧民から聞いた格言を引用しつつバーンズは開演を待ち、やがて開演ブザー音と共に静まり返った会場に思わず姿勢を正してしまう。
「皆様、今回は我がメーラ高等学校芸術祭にお集まりいただき、ありがとうございます」
これからこの場に起こる大惨事を知らずに、バーンズは我が娘の様子をしっかり収めようと記録水晶を握るのであった。
開演から約一時間半後、ハイポリア大陸中央部の森林地帯とベトゥリア王国の合間の上空にて、ついにケイは飛行する物体を捉えた。
「見えたぞぉ、やっぱあれモンスターだって!」
「そうですね……見た所コウモリとトカゲを合わせたようなモンスターのようです」
「んじゃまたイーライに名前決めてもらうか」
リヒトに肩を叩かれたイーライは口を曲げて数秒考えた後モンスターに名付けた。
「ニュクザウラ、決まりです」
「わかった、ニュクザウラに向け第一射、射撃開始!」
「我が意の儘に!」
ウェンディにより混淆魔術砲が作成され、ヴェルクによってニュクザウラへそれが射出される。
「よっし! ヒットだ!」
「急速旋回! アーブへ誘導!」
こちらに気付いたニュクザウラは、その巨大な翼をはためかせてアーブへ向かうケイを追いかけ始め、ケイも低威力の誘導弾を放ちながら注意を引き付ける。
「アーブに入った! ポイントF3へ向かうぞ!」
こちらへ放たれるソナーによる衝撃波を回避しながら誘導し、誰もが上手く行くと思っていたその時、全く予想外な事が起こった。
「ん? は⁉ オイ!」
「ちょちょちょ! どこ行くのよ!」
突如ニュクザウラが方向転換し、真っ逆さまに急降下し始めたのだ。
「追いかけろ!」
追われていたケイが今度は追う側に変わり、いくら攻撃を浴びせてもニュクザウラは全くこちらを顧みようとしない。
「イーライ、このままだとニュクザウラはどこへ行く?」
「調べます」
クォーツモニターに出た表示を見たイーライは、思わず目を見開いて絶句してしまった。
「……ヴァングリ・ラです!」
「なんだって⁉」
アーブトピアと負けず劣らずの人口密集地である。このまま行けば大きな被害が出るのは想像に難くない。
アイリスは暫く考えた後、新たな作戦を捻り出した。
「誘導は諦める、ヴァングリ・ラで奴を引きつけながら被害を抑える。ヴァングリ・ラへの避難命令とラウンドナイツへの連絡を!」
合唱団によるアレンジ曲の披露が行われている最中、スピーカーから場違いな音声が響いた。
『只今、アーブ上空にモンスターが出現し、エクスレイドからの避難命令が出ています。直ちにプログラムを取り止め、速やかに避難を始めてください』
一瞬の沈黙の後、放送を聞いた観客や舞台袖から徐々に不満やパニックの声が広がり、それらが波及していき会場が騒がしくなっていく。
「皆さん! 落ち着いてください!」
こんな状況に待ったをかけたのは、バーンズだった。
「私はエクスレイド攻撃隊長、キラヴ・バーンズです。娘の演劇を見るためここに来ました。こうなった事は残念に思いますが、命に代えることは出来ません。一刻も早く避難を行う為に、命を守るために誰か手を貸していただけないでしょうか?」
バーンズの一声で集まって来た保護者や学校の卒業生と共に観客の避難誘導を行った後、彼らにその場を任せ、バーンズは舞台袖から控室に向かった。
「バーンズさん! 先程はどうも……」
「良いんです先生方、それよりも避難準備の方は?」
「今大至急やっております、上階にも生徒が居ますが我々だけでは手一杯でして……」
「分かりました、私が行きましょう」
バーンズは上階に向かい、軽く騒ぎを起こしている生徒たちを落ち着かせ、必要なものだけ持ってその場から速やかに避難できるよう誘導を始めた。
「落ち着くんだぞ、こっちの君達はD1の扉から、あっちはD4から……」
生徒を小分けにして避難誘導していると、エルーシアがバーンズに気付いてこちらに向かってきた。
「お父さ……」
「エル……のわっ!」
エルーシアがバーンズに駆け寄ろうとしたその瞬間建物が大きく揺れ、べりべりと音を立てて天井が剥がれてコウモリを思わせる巨大な顔が隙間から覗く。
「もう来たのか!」
バーンズがクォーツシーバーからワンドブラスターを転送しようとした時、ニュクザウラの顔面を複数の光条が叩きつけ、ニュクザウラは横を向いて吠え立てる。
「今のうち逃げろ!」
悲鳴を上げながら生徒たちが逃げ出すと同時にエルーシアがバーンズの元へ駆け寄ろうとしたその時、二人の間をニュクザウラの足が突き抜け、床を崩して巨大な亀裂を作ってしまった。
「うわああっ!」
「エルーシアッ!」
崩れた床のを滑ってエルーシアが亀裂へ吸い込まれかけ、バーンズは全身の筋肉を膨張させて四つん這いになって疾走し、寸での所でエルーシアの腕を掴む。
「フンッ!」
崩れかけた足場では覚束ないと、バーンズはネクタイを手摺に引っ掛けてなんとかこの体勢を維持する。
「エル! 絶対に引き上げるからな! 手を放すなよ!」
しかし崩れかけた床はまるでそれを嘲笑うかのようにゆっくりと傾き、バーンズとエルーシアの体重を支えるネクタイもぎちぎちと音を立てて千切れそうになる。
「うぅ……お父さん!」
「どうした! 俺なら大丈夫だからな、すぐ引っ張り上げて……」
「私を……放して」
その言葉にバーンズは思わず目を見開いて聞き返す。
「何を言ってるんだ! 放すわけないだろう!」
「私はお父さんの負担なんでしょ?」
腕の痛みかはたまた別の要因か、エルーシアは顔を歪ませて目を潤ませ絞り出すように言った。
「私はもう子供じゃない……だかからわかるよ! お父さんがどれだけ大変だったか!」
「何を言って……」
「毎日毎日早く出て行って遅くに帰って……それでもモンスター被害は減らなくて! その合間を縫って私のお世話してくれるの大変でしょ?」
そんな事を思っていたのか、近頃コミュニケーションが上手く取れなくなっていたのは父を疎ましく思っていたのではなく、遠慮していたのかもしれない。
「血の繋がらないただの女の子一人なんかより他の皆の事が大事でしょ……だから早く」
「馬鹿な……馬鹿なことを言うんじゃない!」
気迫あるバーンズの声に、エルーシアの体が震えて目に貯めていた涙を零した。
「ああそうさ、確かエクスレイド攻撃隊長と一児の父の二足の草鞋は大変さ! だがな! そんなの俺は苦じゃなかった! むしろ充足してたと言って良い!」
腕に力に籠め、更にバーンズは続ける。
「それにお前はただの女の子じゃない! ルッツとディアナの……俺の大切な親友の忘れ形見なんだ! そして何より……お前は俺の大切な娘なんだ‼」
バーンズの思いを知ったエルーシアは涙で顔をぐしゃぐしゃにし、バーンズの腕を握り返す。
「ごめん……ごめんお父さん!」
「助けるから……絶対放すなよ!」
しかしそろそろ崩れかけた足場も、引っ掛けたネクタイも限界であり、このままだとバーンズごとエルーシアは落ちてしまうだろう。
「うぅ……おおおおっ!」
何とかエルーシアを引っ張り上げようとしたその時、バーンズの腕を掴んだ者が居た。
「はっ⁉」
「良かった! 間に合いました!」
「アイリス隊長!」
崩れかけたウェニュス座に探査隊が間に合い、こうして駆け付ける事が出来たのだ。
「娘さんを引き上げます! 失礼!」
アイリスはワンドブラスターを切り替え、浮遊魔術を撃ってエルーシアをその場から浮かせ、浮いたエルーシアをバーンズが抱き留める。
「ああ良かったエル! アイリス隊長……助かりました」
「いえ、ニュクザウラがここに来たのは我々探査隊のミス……奴は特殊な音に引き寄せられる性質を持っていまして、そのためにこのウェニュス座に来たのでしょう」
これで納得がいった、とりあえずここから逃げなくてはならない。
「行きましょう、ここもじき崩れる!」
アイリスとバーンズはエルーシアを連れ、ウェニュス座から離れるのであった。
なんとかウェニュス座から脱するとニュクザウラがケイとトリスタン小隊と戦っており、バーンズはクォーツシーバーに向かってトリスタンに呼び掛ける。
「チャーリー聞こえるか、俺だ!」
『キャプテン! 無事だったんですか!』
「ああ、無事に決まってるさ……ちょっと待ってくれ、他の避難は?」
「既に完了しています」
それを聞いたバーンズはホッと一息ついて息を吐くと、ニヤリと笑ってクォーツシーバーに向けて言った。
「今から俺も行く、久々に飛びたい気分になった」
『えっ⁉ どういうことですか?』
困惑するチャーリーをよそにクォーツシーバーの転送機能を起動し、カヴァスを転送して乗り込んだ。
「こいつで行く、手伝ってやる」
アイリスとエルーシアを見て頷くと、カヴァスを飛行形態にしてニュクザウラ目掛けて飛び去って行った。
「よく見ておくといい、お父さんの戦いぶりをな」
「……はい!」
二人が見守る中、バーンズはカヴァスを駆って決して負けられない戦いへと臨むのであった。
ニュクザウラは顔から衝撃波を放ったり、翼を広げてチャリオッツを叩き落とさんと試みていたが、突如乱入した四機目に驚愕する。
「よくもエルを危険に晒したな、これでも喰らえ!」
ルーフに取り付けられた魔術砲が閃光を発し、ニュクザウラの身体に火花が散る。
「おっと!」
ニュクザウラの顔から放たれた衝撃波を寸での所で回避しながら第二陣の翼の攻撃も避け、後ろに回り込みながら誘導弾を放つ。
『これが……キャプテン・バーンズの操縦!』
「俺は全てのチャリオッツのテスターだったんだ! 腕は錆びついてはいない!」
ケイ、トリスタン、Gイゾルテ、Wイゾルテ、そしてカヴァスの四機は抜群の連携でニュクザウラを追い詰めていき、ついに崩れかけたウェニュス座へ落とすことに成功する。
『落ちたぞ!』
「このまま畳みかけて連射だ!」
皆が魔術砲をありったけ叩き込もうとしたその時、完全にチャリオッツを脅威と見做したニュクザウラが翼を広げて思い切り羽撃たき、急上昇してチャリオッツよりも高い所へ上った。
『うわっ!』
地の利ならぬ空の利を得たニュクザウラは、強烈な羽撃たきと共に衝撃波を連射し、それに煽られたチャリオッツは一時制御不能になりかける。
『こんの……舐めるな!』
トリスタンはニュクザウラが作り出す旋風の風域からブースターをかけて無理矢理突破し、真横から攻撃を仕掛けて注意をこちらに向けさせる。
『チャーリー隊長!』
「止せチャーリー! 無謀だ!」
『トリスタンの加速なら! 十分奴から逃げ切る事は可能です!』
『ダメだ! ニュクザウラの加速は際限がないんです! いずれ追い抜かれる!』
しかし誰かが引き付けなくては攻撃の隙が生まれない、チャーリーは忠告を無視してまでその危険を引き受けたのだ。
『持ってくれよ……トリスタンッ!』
ニュクザウラがひたすらに上昇と急降下と旋回を繰り返すトリスタンを追いかけ、衝撃波を連続で放って仕留めようと試みる。
「危ないッ!」
衝撃波がトリスタンに命中する寸前、カヴァスが間に割って入って衝撃波が直撃し、右翼を損傷して煙を噴き出しながら落下を始めた。
『キャプテン・バーンズ!』
「うおおおおっ!」
カヴァスが衝撃波に貫かれて落下するのは、地上からもはっきり見えていた。
「ああまずいまずい!」
リヒトはエトワールジェムを取り出して掲げるとスパークルトランサーに装填し、レバーを押し込んでから左腕にエトワールレットを出現させる。
「宇宙の闇、星の光、それらを繋ぐは願いの力! 星を我が手に! エトワールッ‼」
リヒトの身体が宇宙の光に包まれてエトワールギアを纏い、それと同時に大きく強く変わっていく。
「ゾアッ!」
光を纏いながら現れたラクスは落下するカヴァスをキャッチすると、ゆっくりと地面に降ろした。
「……ラクス!」
ラクスはフロントガラス越しに頷くと、再びウェニュス座に降り立ったニュクザウラへ向けて構える。
「ゼヤッ!」
走り出したラクスは奇声と共に放たれるニュクザウラの衝撃波攻撃に一切怯まず、エトワールアイギスを取り出してニュクザウラの顔を思い切り殴りつけた。
「お前音が好きなんだろ? だったら思う存分食らわせてやる!」
リヒトはエトワールアイギスにデルゴラスとグランサンダージェムを装填し、ジェムの力を共鳴させる。
「ラウドビートスマッシャー!」
メテオシンボルから二つの小さな光が出てきてエトワールアイギスに宿り、ラクスはエトワールアイギスの表面を思い切り殴りつけた。
「うわっ! うるさっ!」
聴力の高いヒオが思わず耳の穴を塞ぐほどの轟音が発生し、それが衝撃波となってニュクザウラの顔面に降りかかる。
「ンンッ! ゼィヤッ!」
怯んで空に逃げたニュクザウラ目掛けてラクスはもう一度エトワールアイギスを叩き、ラウドビートスマッシャーを何度も放って追い打ちをかける。
「リヒト、もういいだろう。トドメだ」
「わかった、今日はこいつだ!」
リヒトはグランサンダージェムをエトワールレットに装填してボタンを押し、体全体に大地と風の力を行き渡らせる。
「フオオオオオッ!」
ラクスの周囲に九つのドリル状の結晶体が発生し、それらより一際大きなものがラクスの前に出現した。
「イイイイオオオオオオッ! ゼィヤアアアアアアッ!」
ビートプレッシャーウェイブの強化技、ドリルプレッシャーウェイブが放たれ、合計十個の電撃を帯びたドリル状の結晶体が、竜巻型の尾を引きながらニュクザウラへと飛んで行く。
「行け! 当たれ!」
バーンズの声援あってか結晶体全てがニュクザウラに命中し、体中を蜂の巣にされた直後に大爆発を起こした。
「おおおおおっ! やったぞ! ラクスがやってくれたぞぉっ!」
ラクスはその様子を確認すると空へと向かって飛び立っていった。
「ゼワッチ!」
分離して元の場所に戻った後、リヒトは注意深く周囲を見回す。
「大丈夫だよな、見られてないよな?」
『大丈夫、誰も居なかった』
そう言いながらウェニュス座前の広場階段へ向かっていると、アイリスの後ろ姿を見かけた。
「ああ、アイリスたいちょ……」
アイリスは振り返って鼻元に指を当ててリヒトに静かにするよう示し、何事かと思っていると無言である方向を指差した。
(キャプテン・バーンズと……誰だ?)
バーンズとエルーシアが少し気まずそうに向き合っているのが見えた。
「その……芸術祭、中止になってしまったな」
「うん……仕方ないよ」
「エルが頑張っている所見たかったな」
「もし振替日程が決まったら……来てくれる?」
上目遣いにこちらを見るエルーシアの頭を撫で、バーンズはまるで無邪気な子供のように微笑む。
「当たり前だろう? 俺はお前の父親だぞ」
それを聞いたリヒトは驚いて目を見開き、微かに笑うアイリスの方を向く。
「居たんですか……」
「ああ、義理の親子だが、私が見る限り本当の父親かそれ以上の存在さ」
バーンズの笑みを見たエルーシアは、久しぶりに屈託なき笑顔で笑い返し、並んで歩き出した。
「今夜は外で食べよう、好きなところ連れて行ってやるぞ」
「いいの⁉ じゃあね……マギ横に行きたい! 気になるお店があるんだ」
「マギ横か……いいだろう! 今から行こうか!」
二人の間にあった遠慮という名の蟠りは、もはやすっかり消えていた。
To Be Continued.
いかがでしたか?
バーンズ回にして、エクスレイド誕生秘話でした。
真心を伝え合う、コミュニケーションは大切なのです!
そんな事を伝えられたと思いました。
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ではまた来週!




