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ハイポリアの勇者 ~超空想綺譚~  作者: 南乃太陽
ラウンドナイツ

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23/32

戦いの意義

神獣メルギの復活や、第二のルミナスのシエロの登場でアーブはお祭り騒ぎに。

しかしその最中トリスタン小隊所属のカリスタは、なぜ自分達が戦うのか、その意義を見失いかけていた。

そしてシエロとなったオトハも、やる気のあまり少々空回り気味。

果たして二人はなんのために戦うのかを見出すことが出来るのか?

 再び動き出した炎の道の案件を片付けた後も、アーブは大騒ぎである。


「あれから五日経つけど……すごい熱だね」


 ベースアヴァロンの探査隊でも、アーブを包み込む熱狂の事は話題になっていた。

 

「まあそうなるでしょう、僕でもびっくりですよ」


 まず海の神獣メルギが目醒めた事、その上不意を突かれるまでアークグリアンゲロを容易く蹴散らしていたというのだから、その強さにも沸き立っていた。


「漁師や船乗りは仕事もそこそこ毎日酒場にやって来ては、メルギ様覚醒記念パーティーっつって毎日飲んだくれてるぜ。たっく、敬虔に神獣を崇めてたわけでもあるめぇし、調子いい奴らだぜ」

「まあでも海に出る職業の人ってだいたいゲン担ぐ人多いから、そこら辺の人達よりよっぽど敬虔かもしれませんよ?」

「確かに、そりゃ言えてるかもな。だったらあのバカ騒ぎぶりも納得だわ」


 勿論メルギが復活しただけではこうならない、アーブ王国民を熱狂させているのはもう一つの存在も関わってきている。


「バカ騒ぎと言えば、シエロもだな」

「第三のルミナス・ギガント……ゼフェルと同一存在であるという指摘もありますが、実際どうなんでしょうかねぇ?」


 皆の視線がリヒトに集まる。


「なんで皆して僕を見るのさ」

「だってルミナスこと星の戦士に一番詳しいのってリヒトじゃん?」

「星の戦士が蘇る事ってあるのか?」


 アイリスに聞かれ、リヒトはどこまで話していいものか大いに悩む。

 ハイポリアへ来る以前に現実世界で戦っていた時二度ほど死の淵から蘇った事があるが、これを言えば辺にぼろを出す可能性が高い。


「まあその……僕ら以上の科学力と能力を持つ種族なので……なんかしらはありそうですね」

「そうか、まあ追々我々で調べていくしかないな」

「それより隊長、シエロの融合者って誰だと思います?」

「ああ、そこも調べないとな……最優先事項にはしないが、気になった事は随時報告するように」


 また秘密が増えてしまったと、リヒトは腹が痛むのであった。




 そしてシエロ登場の影響は、エクスレイド攻撃隊ことラウンドナイツにも波及していた。


「うーん……」


 ベースキャメロット指揮所にてトリスタン小隊がその一人、カリスタが自分のデスクの上で頬杖をついて浮かない顔をしていた。


「あれ、カリスタ先輩……どうかしたんですか?」


 浮かない様子のカリスタにミラが声をかけ、アルフレッドがハーブティーを淹れて持ってくる。


「ああごめん、良くない所見せちゃったね」

「いえ、これどうぞ」

 

 アルフレッドから受け取ったハーブティーを啜ってからカリスタは息をついて続けた。


「なんかさぁ、ラクスに続いてシエロが出てきたじゃない?」

「はいはい」

「ここ何ヶ月か私達で大型モンスターを処理できたことは殆どなくて……ずっとラクスに頼り切りだったじゃない?」


 直接話を聞いていたミラとアルフレッドだけではなく、マルヴィナをはじめ同じ隊員達も表情が曇る。


「別にもうラクスには悪い感情無いんだけどさ、でもなんだろう……なんで私達戦ってるんだろうって思っちゃってさ」


 一部のラウンドナイツの隊員が無意識下で感じ取り、思っていた事がこうして言語化されたことで、どんよりした空気が周囲を滞留する。


「おいおいおい」


 そんなどんよりした雰囲気を吹き飛ばすように、ガウェイン小隊のリーダーであるクリフが割り込んで来た。


「辛気臭い事話してると思ったらそんな事言ってたのか」

「辛気臭いってぇ……」


 カリスタが頬を膨らませ、クリフが腕を組んで首を振る。


「そんな事言ってないで、俺達は任務をこなしていけばいーの」

「そう言う先輩は現状に満足してるんですか?」


 そう問われたクリフは頬に手を当てて考えた後、大きく息を吐いて呟いた。


「満足しようがしまいが、俺達はやる事をやるのみさ」


 それだけ言ってクリフは去って行き、カリスタはハーブティーに映る波紋で歪んだ自分の顔を見る。


「そう割り切れたら……苦労はしないっての」




 モヤモヤした気持ちを抱えながら昼を迎え、食堂で日替わりランチを受け取って食べていると、隣にマルヴィナが座って来た。


「あれ、今日は日替わりじゃないの?」

「うん、ポラ丼にしてみた」


 ヒーフの肉を使ったステーキを頬張りながら、カリスタは小さく溜息を吐く。


「ねぇ、朝の事だけどさ、まだ気にしてる?」

「まだって言うか、ここんとこずーっとそう……シエロが出て来てからは特にね」


 振り返ってみると、バレットテイルの件で共闘するまではカリスタはラクスに対抗意識を抱いていた。


「ラクスもシエロも私達だけじゃどうにも出来なかった所を助けてくれたから、前みたいに嫌な印象はないんだけどさ、なんていうかこう……私達いる? って思っちゃって」


 とうとうエクスレイドの存在意義すら疑うまでになってしまったカリスタに、マルヴィナは同じ小隊の仲間であり、馴染みの親友としてなんと声をかけるべきかわからない。

 なんと声をかけるべきか迷っていると、二人の間に頭が割り込んで来た。


「フフフッ、相変わらず悩んでるようだね」

「チャーリー隊長!」


 後ろの席でチャーリーは二人の話を聞いていたのだ。


「聞いてたんですか隊長……隊長はどう思ってるんですか?」

「うーん、まあそれを言ってもいいけど、聞いたところで納得はしないと思うな」

「納得しない……」

「時間はかかるとは思うけど自分自身の頭で考えて、自分だけの答えを見つけるんだ。どんどん悩むんだ!」


 ただし、と間延びした調子で付け加え、チャーリーは自分のランチを後ろの机に移動させて付け加えた。


「任務に支障を来たさない程度にな」



 

 場所は移ってベースアヴァロンのテラス、リヒトとオトハが二人きりで調理パンを食べていた。


「これ結構行けるね」

「だろ? モンスター肉も結構行けるんだよ」

「まあちょっと抵抗あったけど、突き詰めればモンスターも動物だしね」

「この黄色い野菜も甘味あっておいしいね」


 もうすっかりオトハもハイポリアでの生活に馴染んだようだ。


「それで? どうしても聞きたい事ってなんだい?」


 机をリズミカルに叩きながらリヒトはオトハに水を向け、パンを呑み込んでからオトハは咳払いし、声を潜めてリヒトに言った。


「あのさ……星の戦士になるにあたって、心構えってある?」


 リヒトは周囲を確認し、椅子ごとオトハに近付けて声を潜めて言った。


「まず一つ言えるのは……力を使うタイミングは慎重になる事」

「して理由は?」

「まあ色々あるけど、上位次元の魂を持つ存在との融合は危険が伴う、メテオシンボルがある理由はそれだよ」


 オトハは胸のあたりに手を乗せ、青く輝くメテオシンボルに思いを馳せる。


「自分に取っても危険なんだね」

「まあそんな事は重要じゃない……まあ重要だけど頭の片隅に入れておくだけでいい」

「それよりも重要な事があるの?」

「ああ、ここから先は力に対する責任の話だ」


 いつになく真剣な調子のリヒトに、オトハもすこし緊張気味になる。


「僕達は借り物とはいえ強大な力を振う事が出来るんだ」

「大いなる力には、大いなる責任が……って話?」

「ちょっと違う、今からするのは力を振った結果についてさ」


 リヒトが一体何の話をしようとしているのか分からず、オトハは眉を顰めて首を傾げる。


「大いなる力を持つ者は、他者の責任を奪ってはならない。僕は常々そう思って戦ってる」

「他者の責任……うーん、ちょっとよく分からないかも」

「親父の教えでね『強い力は腐敗を生む』って耳タコになるぐらい言われ育ったんだ。だから心を鍛えろって意味かと思ってたんだけど、色々見てるとそれだけじゃない事が分かった」

「う、うん」


 リヒトは一息おいて更に続ける。


「強い力は周囲にも腐敗を呼ぶ、強い者に頼り切って、周囲はどんどん何もできず腐っていく。だから力を使う時は慎重にならないといけない」

「頼り切りになるのか……でもさ、ハイポリアの現状って人の力じゃどうにもできない事になってるじゃない? 一刻も早く出て行って戦うべきじゃないの?」

 

 リヒトは目を瞑って首を振り、オトハへ諭すように告げた。


「ラクスもシエロも少し誰かよりできることが多いってだけで、完全無欠な存在じゃない。危険を少しでも取り除こうっていうその意気込みはいいけど、そう何でもかんでも背負ってしまえば、そのうち立てなくなるぞ」

「うーん……経験者の弁とはいえ全部は賛同できないかも、とりあえずゼフェルとも話し合ってみるね」


 トレーを返却しに行ったオトハを見送っていたリヒトの右目がエメラルドグリーンに輝く。


『とは言うものの、リヒトだって沢山背負い込んでるだろう?』

「まあねぇ、偉そうに説教みたいな事したけど、ちゃんと自分が出来てるかは怪しいね」

『ゼフェルも責任感が強い余り背負い込みすぎるきらいがあるからな』

「それに力を得たばかりでハイになってるオトハ……ちゃんと見守っておかないとだな」



 

 それから数時間後、緊急出動を告げるサイレンが鳴り響いた。


「緊急か」

「俺ら探査隊なのに最近全然探査してねぇよな」


 ヴェルクがぼやきながら、皆と共に送られてきた映像を眺める。


「……何コレ、ロボット?」


 映像の中では五十メートル大の機械で出来た無機質な人型が大暴れしている。

 

「まあ大きな括りに入れればそうですが、見た所ゴーレムの技術が使われています。すでに個体名としてキルゴレムと呼ばれています」

「それにしてもこんな大きなゴーレム居るか?」

「知識と素材があれば可能ですよ、問題はどんな素材が使われているかですが」

「それはさておき、我々エクスレイドの使命は撃破に加え、操作元の特定の為に中枢部を持ち帰る事だ」


 無茶を言うなと言わんばかりにヒオは溜息を吐いて長い耳の先を撫で、それを見たアイリスは小さく微笑んで付け加える。


「まあ中枢部の獲得は必須ではなく任意だから安心しろ、では出動!」


 全員が一斉に立ち上がり、各々武器を取ってケイへと向かうのであった。



 

 それから数分後、暴走しているケブゴレムの元へ向かっていると、ベースキャメロットの方から三機のチャリオッツがやってくるのが見えた。


『こちらトリスタン、今回は我々がモンスターを迎え撃ちます』

「今日はトリスタン小隊か、よろしく頼む。まずは牽制してこちらに引き付け、住民が居ない場所へ誘導するぞ!」

『了解! 特殊魔術砲準備!』


 トリスタン小隊各機と、ケイの魔術砲から電撃が迸り、キルゴレムの装甲表面を焼く。


「食いついたな! 飛ばすから掴まれェッ!」


 ヴェルクが操縦桿を切って大きく旋回し、後ろ向きに飛びながらキルゴレムへ攻撃を加えていく。


「うおおおっ! どこで覚えたんですかそんな操縦!」

「自前よ! お前はこいつの設計者かもしれねぇけど、俺はこいつの整備担当なんだぜ!」


 バック飛行しながら射撃を続けていると、苛立ったキルゴレムが腕から多連装砲を出現させ、ケイやトリスタンを狙って掃射を始めた。


「武器持ちかよ!」


 流石にバック飛行を止めてヴェルクは誘導に専念し、無事撃ち落とされる事なくポイントに到着した。


「トリスタン、誘導は完了した。これより各自攻撃へ移る!」

『了解!』


 トリスタンと二機のイゾルテが機体を翻してフェイルノートレーザーによる本格的な攻撃を始め、その隙にケイからアイリス、ヒオ、リヒトが降りる。


「そちらは頼んだぞ」

「任せてください!」


 アイリスがクレイモアを抜きながらリヒトとヒオに三方向での地上攻撃を指示し、三人は任意の咆哮へ散らばった。


「よぉし、まずは強めの一発行ってみようか」


 リヒトはクォーツシーバーに登録した特殊弾をワンドライフルに読み込ませると、キルゴレムの足関節を狙って引き金を引き、半透明の弾丸を食らったキルゴレムが大きくよろめく。


「なんだ? よろめくだけか」


 生物相手なら表皮を容易く抉り抜く大ダメージを与えることが出来る衝撃発散魔術弾でも、金属装甲に包まれたゴーレム相手ではあまり効果が無いようだ。


「それにしても硬いなこいつ」


 アイリスのエンチャントされた斬撃もヒオの矢も受け付けておらず、フェイルノートレーザーやケイの大型魔術砲による攻撃でやっと表面が焦げる程度である。


『行くかリヒト?』

「まだやれる事はある、表面の分析をしてみよう」


 走査モードに切り替えたワンドライフルを向けるも、ブロックされていてスキャンが出来ない。


「用意周到だな! まあスキャン出来てたらイーライがとっくにやってるか……こちらリヒト、イーライ聞こえる?」

『はい、どうかしましたか?』

「奴の装甲に何が使われてるか知りたいんだけど、今ブロックされてるんだよな?」

『ええ、走査魔術は受け付けていないようですね……』


 多連装砲を掃射したキルゴレムの攻撃を回避しながら、リヒトは更に続ける。

 

「提案なんだけどさ、表面装甲を抉れないかな?」

『装甲を抉る……トリスタンモデルなら可能かもしれませんね』

「行けそうなら頼むぞ!」


 早速トリスタン小隊に共有され、新しい作戦が始まった。


『ヤツの装甲の一部のサンプル獲得の為、レーザーを収束して高出力で撃ち出すぞ!』

『了解!』

『フェイルノートレーザー、収束モードオン!』


 トリスタン、Gイゾルテ、Wイゾルテの三方から収束強化されたレーザーがキルゴレムを狙うも、キルゴレムは腕を合わせて魔術障壁を展開してレーザーを完全に防いでしまった。


『なっ!』

「用意周到……極まりないな」




 その頃オトハはアーブトピアの商業施設の屋上で、ケイが発った方角を眺めていた。


「力を使う時は慎重になれって言われたけど、やっぱり私……心配だよ」

『オトハはどうしたいんだ?』


 頭の中でゼフェルの声がし、オトハは口を尖らせながら呟いた。


「リヒトと……その仲間と、全部の命を守りたい。私とゼフェルなら、それが出来る筈だから」

『どうしてもという時は、自分の心に従うべきだ。行きたいなら行けばいい、私欲に動かない限り、俺はオトハに応えるぞ』

「わかった……ゼフェル、力を貸して!」

『そうか、リアライズだ!』


 オトハの手の中にアストラルリアライザーが出現し、装飾を九十度傾けて秘められた力を開放する。


「シエロォォォオオオオッ!」


 オトハの身体がセレストブルーの一筋の光となって天へ上り、キルゴレムへと向かって行った。




 キルゴレムの披露する能力に手を焼いていた所に、空から一筋の光が降りてきて、キルゴレムの前に立ち塞がる。


『ラクス……いや、シエロだ』


 シエロは着地した体勢のままリヒトを一瞥すると立ち上がり、キルゴレムへ向かって構えた。


「シェアッ!」


 向かってきたキルゴレムに蹴りを食らわせ、シエロは続けざまに左ストレートを叩き込むも、あまりの硬さに腕を振って痛みを逃がす。


「ルミナスの突きですら崩せないとは」


 キルゴレムは腕の多連装砲をシエロに向けて乱射し、シエロはバク転で回避してアストラルアックスを二振り取り出して盾の代わりに防御する。


「ジュィワッ……ムウンッ!」



「バカスカ撃って来て……こっちも叩き返すよ!」


 オトハはドンペイジチップを取り出してアストラルリアライザーに装填し、オトハの身体に強大な力が宿る。


「砕けろッ!」



 シエロの両腕とアストラルアックスにドンペイジのパワーが宿り、多連装砲の弾丸を跳ね返しながら跳躍し、上空からキルゴレムへ斬りかかる。


「ジェアッ! ムゥッ⁉」


 しかしアックスが命中する寸前にキルゴレムが魔術障壁を展開し、刃が届く事は無かった。


「ジオオオッ‼」


 がら空きの胴体に強烈な打撃を喰らい、シエロは大きく吹き飛ばされる。


「シエロッ!」


 リヒトが手折れたシエロへ駆け寄ろうとするも、シエロは首を振って再び立ち上がる。

 

『シエロを援護するぞ!』


 小隊長であるチャーリーの声を通信機越しに聞こえる。

 だが不思議な事に、カリスタの耳にはまるでそれが背景音のように不明瞭になる。


(結局いつも最後はルミナスがモンスターを倒す……)


 なぜ自分は戦っているのか、自分の戦いに意味はあるのだろうか。

 周囲の景色から色と形が急激に抜け落ち、暗闇にただ一人取り残されたかのような感覚に陥る。


『Gイゾルテ? 聞こえるかGイゾルテ!』

『カリスタ! 聞こえてる⁉』


 仲間と友の声も届かず、泥の中に沈んでいくかのような感覚がカリスタを襲う。

 そのとき、キャノピーの前を青い塊が通り抜けた事で、急速に世界に形が戻って来た。


「ジャアッ……」


 アストラルハルバードを杖代わりにしたシエロが見え、同時にクリフの言葉が蘇ってくる。


『そんな事言ってないで、俺達は任務をこなしていけばいーの』

『満足しようがしまいが、俺達はやる事をやるのみさ』


 もしかして同じなのではないか?


「ルミナスだって……完璧じゃない」


 その巨体と強大な力が見えにくくしているだけで、実際の所はラクスもシエロも自分達人間と同じなのではないか。


「完璧じゃない、全部は出来ない。でも私達が一緒なら……完璧に近付ける!」


 カリスタは操縦桿を握り込み、Gイゾルテが急速上昇を始める。

 

『カリスタ⁉』

『……なるほど、答えが見つかったみたいだ』


 Gイゾルテは上空で旋回しながらフェイルノートレーザーを乱射し、キルゴレムの注意を引き付ける。


『マルヴィナ、奴の注意を複数から逸らす、私達は高速で動きながら撹乱だ!』

『分かりました!』


 トリスタンとWイゾルテは急降下と急上昇を繰り返しながらキルゴレムの周囲を飛び回り、フェイルノートレーザーで攻撃を加える。



 急激に攻撃の手を強めたトリスタン小隊に、オトハはモヤモヤした気分になっ。


「これじゃ危ないよ……撃ち落とされる!」



 起き上がったシエロはアストラルハルバードにゾギガの力を宿してチェーンソー状の光の刃を形成して、トリスタン小隊に気を取られているキルゴレムへ刃を叩きつけた。


「ムウンッ! シェイヤッ!」


 撹乱の影響でキルゴレムにバリアを張る余裕はなく、アストラルハルバードの刃は装甲表面に食い込んで赤熱するも、即座にキルゴレムはハルバードを跳ね上げてシエロを武装解除してしまった。


「ジュオッ! ヌゥッ!」


 武装解除されたことでズオーギランの力を両腕に宿したシエロは、右手をキルゴレムの胴に押し付けて凍り付かせ、左手の高熱を帯びた手を叩き付けようとした所、キルゴレムは危機を察知してシエロの腕を掴んで遠方へ投げ飛ばした。


「ヌアアアッ! ジュオオ……」



 腕を抑えながら痛みに耐え、オトハは譫言のように呟く。


「なんで……なんで上手く行かないの? 私が……私が皆を守らないといけないのに!」


 シエロの目を通してキルゴレムがゆっくりとこちらに近付き、腕を変形させてまだ見ぬ強烈な攻撃を放とうとするのを見たオトハは、更に焦りを増す。


「オトハ! 落ち着け! らしくないぞ!」

「私が……私が!」



 キルゴレムが手折れたシエロに向けて赤い光球を放った直後、空から優しげな光が降り注ぎ、エメラルドグリーンの光を纏った人型がシエロの前に現れて光球を吹き飛ばしてしまった。


「ジュワッ?」


 エメラルドグリーンの人型はシエロの方を振り返ると、徐々にラクスの姿に変わっていく。


「ゼッ」



 驚くオトハの脳裡にリヒトによるテレパシーが届く。


『大丈夫か?』

「リヒト……」

『大方焦って大ピンチ、そんな所じゃないかな?』


 自分の事を細部まで見透かされた気がして、なんだか気恥ずかしい気分になる。


『ほら』


 こちらに手を差し伸べるラクスに、リヒトの姿が重なって見える。


『僕を助ける為に来てくれたんだろ?』

「気付いて……たんだ」

『ああ、だったら今助けてくれ。共に戦おう、肩を並べて』

「……うん!」



 ラクスが差し伸べた手をシエロが掴んで起き上がり、両者とも構えてキルゴレムに向かい合う。


「シェアッ!」

「ゼヤッ!」


 シエロは落としたアストラルハルバードを引き寄せて跳躍し、ラクスはキルゴレムへアストロイドボムを投擲するも、バリアを張って防御する。


「フッ!」


 しかしラクスはヴァルネラアイを発動してバリアを砕き、キルゴレムにアストロイドボムとハルバードの一閃が直撃する。


「ジェヤッ! ムゥォォォォオオオオオッ‼」


 シエロはそこからアストラルハルバードにドンペイジのパワーとゾギガのチェーンソーの力を重ね掛けし、ついに表面装甲を抉ってしまった。


「フッ! ゼヤッ!」


 そこへグランサンダーとなったラクスがすかさず畳み掛け、シエロが開けた穴に指を突っ込んで力任せにこじ開けようと試みる。


「オオオオッ! ゼェイヤァァッ!」


 内部機構が露出しそうになると危機を察知したキルゴレムは、顔面から強烈なエネルギー放射を行ってラクスとシエロを吹き飛ばしてしまった。


「ギヨワッ!」

「グォオッ!」



 ラクスとシエロの精神空間で、リヒトとオトハは胸を押さえて膝をつく。


「こいつ無茶苦茶な奴だな!」

「ヤバい……そろそろ赤くなる」


 魂の融合によって高次元空間から呼び出される無敵の戦闘用肉体(アバター)ラクスとシエロは、三次元上では数分間のみしか顕界する事が出来ず、更にシエロはラクスよりも活動限界時間が短いのだ。

 果たして限られた時間で勝つことが出来るのか?


「やむを得ないな、オトハ! 合図したらありったけ光線を撃て!」

「わかった!」

「よし……行くぞソルティア!」



 起き上がったラクスはエーテルバーストに姿を変え、エーテルブランチで分身してキルゴレムを取り囲む。


「ゼッ!」


 分身したラクスのうち一体がトリスタンの方を向き、キルゴレムの方を指差す。


『撃てと言ってるのか?』

『何か作戦があるみたい』


 ラクスは頷くと全員構え、一斉にスクリューバーンを放って周囲を高速で動き回りながら、次々と攻撃を加えて翻弄した。


「フッ!」

「ゼッ!」

「トォワッ!」


 完全にキルゴレムは翻弄され、ラクスは時機を見て一斉に手を翳し、キルゴレムをドーム状のバリアに包み込む。


「今だッ!(ゼヤッ!)」


 ラクスの指示でシエロがブライトスラッシュを、トリスタン小隊が収束フェイルノートレーザーをバリアの隙間に撃ち、バリア内で乱反射する光線を全て浴びてしまう。


『おお!』

『これならバリアも張れないから行けるかも!』

 

 それでもしぶとく耐えていたキルゴレムだったが、抉れた装甲部分にブライトスラッシュが入り込み、全身がスパークして一時機能停止してしまった。



「今だリヒト! エトワールだ!」


 リヒトはエトワールジェムを掲げてスパークルトランサーに装填し、詠唱を開始する。


「宇宙の闇、星の光、それらを繋ぐは願いの力! 星を我が手に! エトワァァァァアアアルッ‼」



 分身を解いて腕を天に掲げたラクスは、宇宙を思わせる美しい輝きと共にエトワールギアを纏い、エトワールアイギスを取り出して構える。


 

「今回も変則的に行くぞ!」


 リヒトはエーテルバースト、エトワール、コメット、デルゴラスのジェムを装填し、ジェム同士を共鳴させた。


「マジックストリームッ!」



 ラクスのメテオシンボルから放たれた四つの光がエトワールアイギスに宿り、盾の表面に光エネルギーが収束していく。


「ジュアッ……」


 シエロとトリスタン小隊も最終攻撃をすべく、それぞれエネルギーをチャージする。


「ゾアアアアアアアッ‼」

「シェィアアアアアッ‼」

『『『クルテナッ! ボンバァァァァアアアッ‼』』』


 マジックストリーム、アストラルバリオン、クルテナボンバーがキルゴレムに直撃し、キルゴレムは跡形も残らず爆散してしまった。


『やったぞ!』

『やった……けど、中枢部は持ち帰れませんでしたね』


 イーライが残念がっていると、爆炎の一部がまるで映像の逆再生のように戻り、中枢部のみが復活して地面へ落ちた。


「これは……」

「ラクスって何が出来ないの?」


 こちらを見上げるヒオとアイリスを見て頷いたラクスは、シエロと共に飛び去って行くのだった。


「ゼワッチ!」

「ジュワッ!」



 

 その日の夕刻、ベースアヴァロンのテラスでリヒトとオトハは夕日を眺めながら一服していた。


「結局……経験者の言う事が正しかったみたい」

「だろぉ? まあ色々言ったけど僕もちゃんと出来てるかは正直怪しいところ」


 茶を飲んで一拍置いてから、オトハはリヒトの方を向く。


「結局どんな力を持とうが、あれこれ考えて背負い込むよりも目の前の事を……そして自分の性に合ってる事を少しずつでもこなしていかないと、潰れちゃうんだね」

「ああ、その目の前の事をやって行った先に、平穏な日々があるんだ」


 しんみりした空気の中でどこか心地よい沈黙が流れ、しばらくしてオトハが切り出した。


「私さ、リヒトと一緒にエクスレイドで戦おうと思ってたけど、やっぱりやめるよ」

「探査隊に入ろうとしてたの?」

「うん、でもやめた。だからさ……ピーター先生から打診された話を受けようと思う」


 オトハは数日前、ピーターからエクスレイドが運営している児童養護施設の子供達の教師になってくれないかと打診されていたのである。


「おお、そうか! いいじゃんいいじゃん!」

「これもある意味……平和のための戦いかなって思うし。まあ安心してよ、リヒトがピンチの時はいつでも駆けつけるからさ!」


 オトハの笑顔が眩しいのは、きっと夕日に照らされているだけではないのだろう。


「場所と立場は違うけど、向いてる先(みらい)は同じだな」

「うん、これからもお互い得意な分野で一緒に戦って行こう!」


 夕日を眺めながら、リヒトとオトハは互いの額を重ね合わせて微笑むのだった。



 

To Be Continued.

これは自分を再発見するお話です。

何事においても自分を知る事は大切ですから、自分を知った者は誰にも負けることが無い、そう思って今回の話を書きました。

それにしても強いですねエトワールギア、まだまだ底は見えません。

感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。

ではまた来週お会いいたしましょう!

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