共同作戦開始
ゼフェルとの誤解が解け、和解に成功したリヒトはエクスレイドにオトハ(ゼフェル)を連れて共同作戦を立てる。
ゾヴガリンを倒す秘策を、打ち立てることが出来るのか?
「ゼィヤアアアアアアァァァァッ‼」
「ドゥオワアアアアアアァァァッ‼」
ゾヴガリンの白濁した紫色の光線を、ラクスはハニカムシャッターで、ゼフェルはアストラルハルバードを旋回させることで防御するも、すぐさまハニカムシャッターに無数のヒビが入る。
「ウゥ……アァ……」
ゼフェルはアストラルハルバードが凍り付いたのを確認すると、即座に離脱して腕を交差してエネルギーをチャージし、アストラルバリオンを放って光線の軌跡を捻じ曲げる。
「ムウッ⁉」
「フッ⁉」
軌跡がねじ曲がったゾヴガリンの光線は空中で拡散し、ラクスとゼフェルの周囲に光弾となって降り注いだ。
「ギヨワアアアアアアァァァァッ‼」
「グォワアアアアアアアアアアッ‼」
着弾した場所は凍り付き、ラクスとゼフェルの周囲に凍土が発生した。
「アァ……」
「クォ……アア……」
限界が近い中で大ダメージを受けた事が後押しとなり、ラクスとゼフェルの身体は星雲状に分解して消失してしまった。
「ラクスが!」
凍り付いた大地の上に立つゾヴガリンは、体の各部の発光器官を光らせながら奇怪な電子音を周囲に響かせながら、自分の周囲をぐるりと見回す。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
深淵の底から響いてくるような謎の言語を発し、ゾヴガリンは街の方へ一歩を踏み出した。
「まずい! 止めないと!」
「どうやって!」
「うぅ……とにかくこっちに意識を!」
「……マギル・ゾノ・ハ」
その時、ゾヴガリンの動きが停止し、体の各部がスパークする。
「……マギル……マギル……マギルマギルマギルマギギギギギギギギギギギギギギ……ゾノゾノゾノゾゾゾゾゾ……ハロハロハロハロハロロロロロロロロ……」
体をくねらせながらゾヴガリンは、まるで不具合を起こしたかのような挙動をする。
「ベドウ・キーシュ……」
新たな謎の言語を発したかと思うと、ゾヴガリンは黒い光球となって何処かへ飛び去ってしまった。
「助かった……のか?」
「……いや、きっとまた戻ってくるぞ」
エクスレイドがゾヴガリンの挙動に疑問を抱いている時、戦いの舞台となった凍り付いた地で、痛む体を引きずって何処かへ去ろうとするゼフェルを、リヒトが必死になって追いかけていた。
「おい……待て! 待てよッ!」
「着いて来るな、あいつはまた来る、今度こそ俺が仕留める!」
「まだ自分だけの戦いだなんて言うんじゃないだろうな⁉」
「ああそうさ! これは俺だけの戦い! 他の誰でもない! 俺だけの戦いだ!」
リヒトはゼフェルの黒いローブの襟首を掴み、ぐっと引き寄せる。
「なんだ? この姿でもやり合うか?」
最愛の人物の顔と声でそんな事を言われてリヒトは不快感を露わにしながら、感情の限り怒鳴りつけた。
「お前が融合した人間は! 僕の婚約者のシノザキ・オトハだ! もうこの時点でお前だけの戦いじゃないんだよ! 既に僕も巻き込まれてる!」
それを聞いたゼフェルの反応は予想外のもので、驚いたかのように目を丸くし、リヒトの事をまじまじと見る。
「なんだよ……」
「まさか……お前がタツガミ・リヒトなのか⁉」
「は?」
これは予想外だった、ゼフェルはそれを知らず今までリヒトと接していたのか。
「知らなかったのか?」
「いや、名前とオトハの婚約者である事は知っていたが、顔は知らなかった。彼女と融合する時、心の中には立ち入らないと約束したからな」
「……待って、ちょっと待ってくれ」
頭が混乱してきた、てっきりリヒトはゼフェルが無理矢理オトハと融合して体を乗っ取ったと思っていたが、ゼフェルの言う事が正しければオトハとゼフェルは双方の了承の上で融合したことになる。
「じゃあ君とオトハは……了承の上で今こうしてるって事?」
「そうだ。話すと長くなるが、互いに利のある話という事で合意してこうなっている」
反応から見て嘘を吐いているとは思えないし、こんな嘘を吐いたところで利にはならないだろう、リヒトはとりあえずこの話を信じる事にしたが、だがまだゼフェルについては謎が多すぎて信じ切る事が出来ない。
「どうやら俺一人の戦いという訳にもいかなくなったな……仕方ない、場所を変えよう」
リヒトとゼフェルは凍結していな場所へ向かい、手ごろな石の上に隣り合って腰かけた。
「ソルティアも聞いてくれ、居るんだろ?」
リヒトの左目がエメラルドグリーンに輝いたのを見たゼフェルは、一呼吸置いて語り始める。
「始まりはバルガスⅦでの任務を終えて帰還した直後の事……」
侵略行為とそれに伴って異常発生した危険生物を駆除する任務を終えたゼフェルを待っていたのは、大隊への参戦命令だった。
「休暇を取る間もなくメルジュ大隊長に呼ばれた俺は、気が付けば大隊の一人として参戦していた」
「あの人は相変らずだな」
「ああ、大隊長は君も呼びたがっていた、運が良かったな」
メルジュの大隊はビロー星系周辺から発せられる異常なエネルギーの調査の任務を帯びていた。
「それって星の戦士が大隊を率いて行くような任務だったの?」
「調査任務と聞くとそう思うかもしれないが、ビロー星系はエリシア大戦争初期にあったオーフィルの虐殺の舞台となった所でな。それはそれは凄惨な戦いで、その禍根が様々な形で今でも残っている危険な場所なんだ」
そう聞くと大隊を引き連れるのも納得がいく、果たしてそこで一体何があったのか。
「俺達は早速調査を始めた。次元の境が曖昧になった異常空間を抜け、無数の魔獣が潜むポケットネビュラの向こう側へ行った先に……奴が居た」
「……ゾヴガリンか」
話を聞く限りだと、想像もできない程の過去の虐殺行為に使われた生物兵器が、あのゾヴガリンだという事になる。
つまり今回の相手は、そんな途方もない時代と距離を超えてやって来た過去の亡霊なのだ。
「半ば御伽噺のように伝えられていたとはいえ、俺達は奴がエリシア大戦争最悪の落とし子のひとつのゾヴガリンだという事に気付き、即座に攻撃へ移った」
宇宙を守護する星の戦士として、全員がこいつを絶対に外へ出すまいと決意して挑んだ。
「それで……どうなったんだ?」
「……何故あいつが最終段階に至れたかわかるか?」
「それは……光線を一度の大量摂取したから?」
「違う、喰らったんだ……星の戦士をな」
「⁉」
リヒトの心にソルティアの驚愕が流れ込んでくる。
「喰らっただと⁉ 直接ということか⁉」
「ああ、奴は強烈な攻撃を浴びせ、エネルギー体となって分解しかけた体を取り込み、その身体機能を第二段階から最終段階にまで引き上げた」
「じゃあ……」
「みんな死んだ、俺以外みんな」
ずっとゼフェルが「俺だけの戦い」と言っていた理由が分かった。
これは敵討ちであると同時に、最後まで任務を遂行しようというゼフェルの固い意志の表れなのだ。
「メルジュ隊長も⁉ イーヴも⁉ カラシスも⁉」
「ああ、皆死んだ……エクリは最初に喰い殺された」
知らぬ間に共に様々な困難を乗り越えた友や可愛がられた先輩や師が戦死していた事を知ったソルティアは、ショックのあまり言葉が出ない様子である。
「だから俺は星の戦士を名乗る資格も、仲間を得る資格もないんだ……」
「それは違うぞゼフェル」
自嘲気味のゼフェルをリヒトが鋭く否定する。
「星の戦士の大隊ですら敵わなかった相手だ。敵討ちに燃える気持ちは分かるが、一人で何が出来るんだ? こういう時こそ誰かを頼るんだよ」
「しかし……」
「考えてもみろよ、ここには僕が居て、ソルティアが居る! これは運命なんだよ、共に手を取って、ゾヴガリンを倒せっていう事なんだよ」
馬鹿馬鹿しい話と一蹴する事も出来たが、ゼフェルは何か思う事があったようで、オトハの顔に優しく触れながら考え込む。
「ああ、ゼフェル? そろそろオトハと融合した経緯をだな……」
ソルティアに促されゼフェルは頷くと、大きく息を吐いて口を開いた。
「そうだったな、本題はむしろこっちか」
ゼフェルとオトハが出会ったのは、約三ヶ月前だという。
「彼女は横断歩道で転んだ子供を庇い、交通事故に遭った」
「なっ⁉」
自分が居ぬ間に最愛の人物が命の危機に遭っていたとは、今度はリヒトが絶句する。
「彼女のような人物が死ぬとは惜しいと思い、俺は咄嗟に彼女と融合する事で傷を癒した」
「……じゃあオトハの命の恩人って事⁉」
「まあ、そういう事になるな。心の方までは癒せなかったが」
「心?」
オトハはリヒトの心の中を見透かすかのように、青く光る目を向けた。
「彼女は心に深い傷を負っていた、君が失踪した事でな」
「そんな……そう……だったのか」
そういった可能性もあると覚悟していたが、いざそれが現実となると動揺してしまう。
「俺は他人の縁の繋がりを見る力を持っていてな、彼女と強い繋がりを持つ者がこの地球という星の夢界に続いているのが見えた。ゾヴガリンがそこに潜伏している事を掴んでいた俺は、彼女に提案したんだ」
ゼフェルはオトハと事故で負った傷を癒し、リヒトが居る場所に連れて行く代わりに、地球や夢界で円滑に活動する為にその身体を借りるという契約を結んだ。
「彼女の意思が表に出てこないのは、外傷と精神の回復の為」
「なるほど、それでリヒトと私は勘違いしていたのか」
とりあえずゼフェルが無理矢理オトハの身体を奪ったわけではなく、むしろ命の恩人である事を知って一安心したものの、ここに留まると決意したことが最愛の人物の心を傷つけてしまった事にリヒトの胸に苦いものが広がる。
「これで良いだろうか? あとは言った通り、俺は彼女の心や記憶の中に立ち入らない約束をしたから……」
「いいよ、何も知らずに掴みかかかって悪かった」
「いや、こちらが何も言わなかったせいさ」
とりあえず蟠りはこれで解消された。
だがそれだけでは解決しない、大切なのはゾヴガリンをどうするかである。
「なぁ、一緒に来てくれないか?」
「エクスレイドとかいう組織にか」
「ああ、ゾヴガリンは強い、星の戦士の力でなきゃ倒せない。けど星の戦士だけでもダメだ、エクスレイドと星の戦士の協力が無いと、きっとまた犠牲者が出るだろう」
もうゼフェルには差し出された手を払う理由などない、立ち上がってゾヴガリンによって作られた凍土を見回しながらリヒトの方を向いて頷いた。
「いいだろう、差し出がましい願いかもしれないが、悪いようにはしないでくれ」
「もちろんだ、その体はオトハのものだからね」
「というわけで、彼女……もとい彼は敵ではなく、我々とは見解の相違から敵対してしまったという事なんです」
神妙な面持ちでリヒトの話を聞いていた探査隊の面々は暫く黙ってオトハを観察する。
「大丈夫だよ。彼はやり方を誤ったけど、宇宙の平和を守る星の戦士さ。敵意はない」
「俺が言うのもなんだが、君達と敵対するつもりはないし、これからできる範囲で協力していきたいと思ってる」
「だから……その……」
「違うんですよリヒト君……」
イーライとウェンディを皮切りに、全員が立ち上がってゼフェルの周りに集まってくる。
「なんというか……その……ルミナス・ギガントになる人間が目の前にいるってだけで……そのぉ」
「すげーもん見ちゃってる感覚がしてよぉ」
「なんとリアクションしたらいいか……」
「これはすごい発見だぞ……」
奇異な視線に耐えられず顔をしかめたゼフェルを助けるべく、リヒトは間に割って入って一度皆を座らせた。
「まあまあ質問やら諸々は後でね、とりあえず今はゾヴガリンの対策を考えよう。丁度ここに専門家もいることだし」
「わかった、あのモンスターを外宇宙生物とカテゴライズし、呼称をゾヴガリンと設定する」
アイリスがこの情報を各部門に共有し、作戦会議が始まる。
「まずゾヴガリンについて教えてくれますか?」
「分かった、クォーツモニターを借りるぞ」
ゼフェルが手を翳すとクォーツモニターにゾヴガリンの姿が浮かび、表示された宇宙言語がハイポリア語に翻訳されていく。
「ゾヴガリンは途方もない程の時を遡ったエリシア大戦争時代に、エリシア人によって作り出された最悪の虐殺兵器のひとつだ」
「生物兵器って事ですか?」
「そうだ、奴の性質は貪欲そのもの、ありとあらゆるものを取り込んで自己の能力を高めていき、一定値までそのエネルギーを溜めると次の段階へと進化する」
「ちなみにこのゾヴガリンは……」
「最終段階だ」
全員の嘆息が部屋の中にこだまし、空気がほんの少しだけ淀む。
「最終段階に至ったゾヴガリンは凄まじい怪力とスピードに加え、テレポート能力や星の戦士のものと同等の威力の光線を放つ力、あらゆる攻撃を弾く上何層にも重ねることが出来るバリア、拡大した吸収能力。そして最も脅威なのが……」
ゼフェルが手を翳すとゾヴガリンが顔から紫色の光線を放つ様子が映し出される。
「このマイナス一兆度に迫る冷凍光線だ」
「ま……まままま?」
「マイナス……いっちょう?」
皆が呆然とする中、アイリスが一兆という数字がどれほどのものかと、指折り数えて眉を顰める。
「いやいや、ちょっと待ってください、おかしいですよそれは」
数字の大きさに気を取られてぽかんとしていたが、イーライはすぐにこの数字の変な点に気付いて指摘する。
「絶対零度は約二百七十三度でしょう? 一兆なんて行きませんよ」
「三次元宇宙ではそうかもしれないな」
「えっ?」
「ゾヴガリンは地球の法則に縛られない――まあここは俺やラクスもそうだが――よって絶対零度など容易く突き抜ける事が出来るんだ」
それを聞いたイーライの頭から煙が立ち上り、気を付けの姿勢を取って真後ろへ倒れそうになったところを、リヒトが咄嗟に支えて椅子に座らせる。
「なんでもありかよ……じゃあどうしろって言うんだよ……」
「まあまあ、八方塞がりってワケじゃあるまいし」
「ゾヴガリンについてはこれぐらいか。どうだろうか? 何か対策は考えつくか?」
氷嚢を頭に乗せたイーライが起き上がり、クォーツモニターに映るゾヴガリンを穴が開く程見つめ出す。
「そうだ、聞こう聞こうと思っていたのですが」
「ああ、どうした?」
「ゾヴガリン対策でモンスターの怨念を集めていたのは何故ですか?」
「ああ、確かに!」
言われてみれば怨念集めの目的を聞いていなかった。
「これのことか」
ゼフェルは懐から正四面体の箱を取り出して見せ、そこから発せられる異様な雰囲気にピースが唸り始める。
「おおよしよし、大丈夫大丈夫」
唸るピースの角の間を撫でて落ち着かせ、リヒトはゼフェルに仕舞う様に促した。
「こいつはゾヴガリンを誘き出す為に用意したものだ。結局光線の撃ち合いで誘い出されたから、俺も持て余しているのだが」
「……じゃあそれを使えばゾヴガリンを誘き出すことが出来るんですね?」
「そうだな」
「確率は?」
「百パーセントだ」
それを聞いたイーライの目が天井を向き、腕を組んで貧乏ゆすりを始める。
「おお、なんか思いついたみたいだぜ」
「イーライがこうなったらいい結果が確定したようなもんね」
正確には七十三秒間、貧乏ゆすりによって靴と床がこすれる微かな音が基地内部に響いた後、イーライが再び上体を起こした。
「奴を倒す事はできませんが、封じ込める方法なら思いつきました」
「封じ込める?」
「ええ、封印は魔法使いの十八番ですよ」
イーライはクォーツパッドを操作し、データを入力してモニターに投影する。
「まず大規模戦闘があっても人的被害が少ない地点にあらかじめ結界を張っておきます」
「なるほどぉ、たしかに結界と言えば魔術師っぽいかも」
「そう、それでこの結界内部に術式とトラップを仕込む!」
クォーツモニターに映ったドーム状の結界が赤く染まり、その内側に正四面体の物体が配置される。
「トラップがこの怨念の箱というわけか?」
「ええ、見た所ゾヴガリンは黒い球体になっても移動できるようなので、結界内部でその箱を解放して食らいついたゾヴガリンをその中に封じ込めます」
「仕込む術式はどんなものにしますか?」
「時空魔術の応用でワープ能力を封じる術式を仕込むつもりだ……まあ無数にあるただ一つの能力を封じたに過ぎませんが、機動力を封じる事が出来れば戦闘において幾分か有利に働くでしょう」
ゼフェルが腕を組んでまじまじとモニターを見ながらイーライに問うた。
「ここに俺達が入ってゾヴガリンを倒すと」
「ええ、本来なら国民を守る者として我々のみで倒す方法も考えなくてはいけませんが、ゾヴガリンはあなたの因縁の相手という事で我々は封じ込めに専念する事にしました。どうでしょう?」
ゼフェルは一瞬だけリヒトの方をちらりと見ると、イーライの方を向いて小さく笑って言った。
「ありがとう、俺は意固地にならず、もっと早く君達を頼るべきだったかもしれない」
その言葉は彼にとっての精一杯の賞賛だったのであろう、それを聞いたイーライは嬉しそうに振り返り、アイリスを始めとした仲間達も共に喜び合う。
「早速作戦の詳細を定めていきます!」
「この作戦を共有して他の隊に協力を仰ごう!」
ゼフェルは動き始めた探査隊にリヒトを借りると一言断りを入れると、リヒトと二人で部屋を出るのであった。
ベースアヴァロンの屋上のテラスで、リヒトとゼフェルは二人きりになる。
「いい仲間だ、全員が全員自分の使命に対して責任感を持っている」
「そうだね。だからこそ安心して戦える」
「ふと思ったんだが、どうしてお前はソルティアの事を明かさないんだ?」
「これには僕の考えがあってね。強すぎる力はあらゆる人を腐らせるからさ」
力を振う者には慢心を、その力に庇護される者には自立心の欠如と依存を生む。
自分に対しては鍛錬などを通して自戒する事で慢心を押し留めているが、他者に対してはそうはいかないため、あえて明かさないという選択を取っている。
幸いなことにエクスレイドや以前所属していたブライトの面々は、ラクスに頼り切りという事は無く、自分の責任感を持って事に臨んでいる。
「強すぎる力が誰かの使命や責務を奪ってはいけない。僕はそう考えているんだ」
「なるほど、真に仲間を思っての事だという訳だ」
「な~んて偉そうに言ってるけど、格闘技やってた親父の受け売りなんだよね」
照れ臭そうに頭を掻くリヒトを見て、ゼフェルは手摺に寄りかかって周辺の景色を眺めた。
「良い所だ、星の原風景を残しつつ、発展した技術が調和している。それにこんな規模の夢界は初めて見た……面白い所だな、地球は」
「ソルティアもそんな事言ってたっけ……確かにここはいい所だけど、いつかは戻らないと」
「そういえば、夢界へ来た時に何故すぐ現実世界へ戻らなかったんだ?」
「ああ……それは……」
「決して責めてる訳じゃない、少し気になっただけだ」
何から話そうか整理をつけ、リヒトは一から話すことにした。
「僕とソルティアは現実世界の月の裏側で、死徒の因子を持つ魔獣セリオンと戦った、セリオンは倒したけど、別次元に引きずり込まれてね。必死に抵抗しているうちに、何かの拍子に夢の帳を抜けてここに来たんだ」
「……なるほど、よくデッドゾーンから逃れられたな」
「ソルティアも傷を負って、手にした最強の力も使えなくなってね、しばらくの間滞在を余儀なくされた」
始めは仕方なくだった、だが生活に馴染むうち、良くしてくれた人々が直面しているモンスター災害の現状に対し、リヒトは放っておくことが出来なかった。
「何かできることは無いかと考えた結果が……これさ」
ポケットに仕舞ったエクスレイドのライセンス証を見せ、ゼフェルは小さく笑った。
「な、なんだよ? 何か変だったか?」
「ソルティアがお前を選んだ理由が分かった」
「……そう、一応認めてくれたみたいだね」
「ああ……まあ世間話はここいらにしてだ、どうやって奴を倒す?」
どうやらゼフェルの目的は、結界内部でどうやってゾヴガリンを倒すか作戦を立てることだったらしい。
「今こうして頭を冷やしてみて分かった、テレポートを封じたとて奴は俺達二人がかりでも倒すのは困難だ」
「倒す方法……あるにはある」
「あるのか?」
リヒトは腰に提げたジェムホルダーから、一つのスパークルジェムを取り出して見せた。
「これは! 綺羅星の欠片か!」
「欠片じゃない、心臓だ」
ゼフェルが驚くのも無理はない、綺羅星は宇宙で最も珍しい種族の一つであり、意志を持つ流星である。
言い伝えによると運命に干渉する力を持っており、宇宙を渡り歩きながらその力で心清き者の願いを叶えて回っているという。
「そんなもの……よく手に入れたな」
「彼がまだ生きていた時に譲り受ける約束をしてね、彼の心臓は僕とソルティアに最強の力を与えてくれた」
「確かにその力があれば……待てよ、さっきその力は失われたと言わなかったか?」
「ああ、心臓にしちゃ輝いてないのがその証拠さ。でもこの微かな輝きで何かできるかもしれない」
それを聞いたゼフェルは顎に手を当てて何かを考え始める。
「そのジェムに秘められた力を解き放つには?」
「分からない、インテリジェンススターと同じぐらいのエネルギーをこいつにぶつけるか、誰かの心からの願いが叶うとあるいは……」
「そうか……希望的観測は捨てよう、なんとか知恵を絞って奴を倒す方法を考えるんだ」
「ああ、やっぱりテレポートが使えなくなるから、そこから攻めれば……」
こうして三日が過ぎ、ついに作戦決行日が訪れた。
『結界の魔的杭の打ち込みは完了しましたか?』
『おう!』
『問題なし!』
『完了した』
皆の声をクォーツシーバー越しに聞きながら、リヒトは杭を蹴って強度を確かめる。
「こっちも大丈夫、始めて良いよ」
『了解です。ゼフェルさん、怨念を解放してください。怨念解放後、結界が張られますので全員速やかに杭から離れてください』
数秒後、数キロ先から何かオーラのようなものが発生すると同時に杭に刻まれた模様が光って結界が形成され始め、リヒトは素早く結界内部へ潜り込む。
『結界の形成は成功です、ゾヴガリンが出るまで待機、非常時はラウンドナイツへの連絡をお願いします』
ここ三日の間でソルティアとゼフェルの三人で練った作戦を思い返しつつ、リヒトは右腕のスパークルトランサーとラディアンスジェムを眺めながら自分の中に居るソルティアへ語り掛けた。
「準備良いか?」
「聞くまでも無いだろう」
「そうだな、あとは……全身全霊でぶつかっていくだけ」
「無茶するなよ……なんて言っても聞かないか」
「頭には入れとくよ」
いたずらっぽくリヒトが微笑むと、周囲の空気がぐんと変わる。
「……来たか」
空間が歪んで黒い光球が発生し、怨念に引き寄せられるようにふわりふわりと浮遊しながらゾヴガリンへと姿を変え、それを見たゼフェルがアストラルリアライザーを取り出してリヒトにテレパシーを飛ばした。
「行くぞ!」
「ああ!」
ラディアンスジェムを装填し、リヒトは大きく息を吐く。
「「おおおおっ! ハァッ‼」」
リヒトはレバーを押し込み、ゼフェルは本体を九十度傾けてアバターを呼び出し、眩い光と共に二体の星の戦士がゾヴガリンの前に現れた。
「ホォォォ……」
「シィィィ……」
着地したラクスとゼフェルに気付いたゾヴガリンは、全身を震わせながら奇怪な電子音を発生させる。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
「ゼヤッ!」
「トワァーッ!」
アーブを、ハイポリアを、そして地球を救う戦いが始まった。
To Be Continued.
オトハは何故ゼフェルと融合したのか、全てリヒトにもう一度会う為だったんですね。
そしてついに始まる共同作戦、強大な敵を打ち倒すことが出来るでしょうか?
いよいよ次回はクライマックス、楽しみにしていてください。
感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。
ではまた来週!




